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終章 苦しみを突き抜けた先にあるモノ

勝利者は誰?

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虎太郎とクレイグの試合の勝敗は、教員会議によって判定されることになった。
会議室、ベリーが主張する。

「どちらもよく戦った、私はそう思います。
 しかしながら、トラタローはクレイグよりも上手く戦ったように思われます。
 最後の激突、トラタローは急加速してスピードを変化させ、
 これによってクレイグを惑わし、攻撃の狙いを外させました。
 同時に、加速の勢いを利用した激しい一撃を叩きこみ、
 並外れた強烈なダメージを発生させました。
 彼の一撃はコクピットに当たりこそしませんでしたが、
 もし当たっていれば、コクピットごとクレイグを斬り裂いたでしょう。
 これらの点を総合的に考えると、
 この勝負、私はトラタローの勝ちであるように思います」

別の教員が反論する。

「お言葉ですが、ベリー教官。
 確かにトラタローは深手を与えましたが、
 肝心のコクピットに攻撃が当たっていないのはまぎれもない事実。
 これを有効な一撃と認めるのは、正直なところ、私としては疑問です」

こうして教員たちは言い争いをはじめ、会議の時間はどんどん長引いていった。
やがて、全員がへとへとになった頃。ある中年の男性教員が提案した。

「では、こういう話はどうですか? つまり……」

今、ここは虎太郎たちの教室。
試合を終えた生徒たち全員は、ぐったりした顔で席についている。
そこにベリーが入ってくる、生徒たちは気合を入れて、何とか背筋を伸ばす。
ベリーは話し始める。

「諸君、今日は期末試験、ご苦労だった。まず、もっとも大事なことを伝える。
 トラタロー、クレイグ。君たちの試合について、教員会議で話がまとまった」

虎太郎、クレイグ、両者とも返事をする。「はい」
ベリーは話を続ける。

「率直に言おう。今回の君たちの戦いは、引き分けということにする」

虎太郎が質問する。

「あの、じゃあ、俺の進級はどうなるんですか?」
「話は最後まで聞くものだ、トラタロー。
 会議の結果、君たちにはもう一度、試合を行ってもらうことになった」

教室がざわつく。クレイグが悲鳴をあげる。

「もう一度だって!? 冗談じゃない、僕は死にかけたんだぞ!
 あの一撃がコクピットに当たっていたら、死んでいた!
 なのに、また戦うだって!?」
「クレイグ、これは決定されたことであり、また、命令でもある。
 君とトラタローは、もう一度試合をしなくてはならない」
「先生、勘弁してください!
 僕はもう、あいつと戦いたくない! 絶対にごめんです!」
「命令だ。拒否は許されない」
「でも先生、僕の気持ちも考えてくださいよ! じゃあ、棄権します!
 次の試合、僕は棄権します! トラタローの不戦勝でいい!」
「まぁ、それは別に構わないが……。しかし、いいのか?
 その場合、試合だけでなく試合賭博もトラタローの勝ちになるが」

教室中に生徒たちの怒りの声がぶちまけられる。

「クレイグ、卑怯だぞ!」「ふざけたこと言わないでよ!」
「てめぇにいくら賭けたと思ってやがる!」
「ちょっと、棄権とか身勝手すぎでしょ!」

クレイグは怒鳴る。

「うるさい、うるさい、全員黙れ! 何度でも言ってやる、僕は死にかけた!
 あんな危険な奴とまた試合なんて、絶対にお断りだ!
 だいたい、僕だって僕自身に賭けたんだ! 負けを認めれば大損だ!
 でも、それでもいい! 死ぬよりはマシだ!」

ベリーが大声を出す。

「諸君、黙りなさい! 静かに、静かに!」

少しの時間をかけて、教室が静かになる。
生徒たちがおとなしくなったのを見て、ベリーが喋る。

「トラタロー。クレイグはあぁ言っているが、不戦勝でいいか?」
「はい。大丈夫です」
「……そうか。なら、この言葉を言おう」

ベリーはにっこりと微笑み、喋る。



「おめでとう。これで、君の進級が確定した。君は2年生になる」
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