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第4章 心に炎は燃えているか
博打はお好き?/Heavy bet
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それから数日後。
パイロット学校の宿舎、クレイグの部屋。
クレイグ、ギルダー、ローゼンの3人が、試合表を手に話をしている。
薄ら笑いしながら試合表を見ているクレイグが言う。
「まったく、1.2倍とは……。馬鹿らしいね。最低レートじゃないか」
ギルダーが返す。
「相手がトラタローじゃあ、そうなって当然だろ」
「はは、まったくその通り。それで、賭けはどうしたんだい?」
「俺もローゼンも、遊んでる金はぜんぶ突っ込んできた」
「もちろん、僕にだよね?」
「当たり前だろ。誰がトラタローなんかに賭けるかよ」
ローゼン。
「たぶん、あいつの仲間たちは、賭ける」
その言葉を聞いたとたん、クレイグが大きく笑う。
「あはは! いやぁ、ちょっと冗談キツいぜ、ローゼン!
奴らには、大穴を信じて賭けるなんて度胸はない。何もしないで終わりさ」
ギルダーがローゼンに言う。
「奴らの賭けなんかどうでもいいだろ?
仮に、奴らが賭けたとして、だ。どうせそれは負ける金、無駄な金だ。
学校に没収されて、俺たちの懐に入ってくる金。そうだろう?」
「イエス(Yes)」
「俺たちはゆっくり勝負を見物して、クレイグが勝つのを待ってりゃいいんだ。
それより、クレイグ。お前、自分自身には賭けたのか?」
「当然だろ?」
「(口笛を吹く)ヒュウ! そう来なくっちゃな!」
「大した収入にはならないだろうけど、お小遣いは重要だからね。
しっかり稼いで、靴下を買うお金にでもするさ」
クレイグはそう言って、「あはは!」と笑う。
場面は変わって、カフェテリアの隅にあるテーブル。
そこに集まっている虎太郎たちも、賭けの話をしている。
手に持った試合表をテーブルに放り出して、リンが真っ先に喋りだす。
「あんたたち、どうするつもり? 試合賭博……」
スライ。
「どうって、おい、ジム。お前は?」
「……タイガーがまず話をすべきじゃないか?」
「俺かよ」
全員の視線が虎太郎に集まる。思わず、彼はツバを飲みこむ。
少しの間があって、それから、彼は喋り始める。
「みんな。とりあえず、俺に賭けるのは無しにしようぜ」
リンの顔が険しくなる。彼女は虎太郎を問い詰める。
「なんで? なんでそんなこと言うの?」
「なんで、って……。だって、俺が勝つと決まってるわけじゃないだろ。
確かに、いろいろ特訓したよ。それでも、まだまだ厳しい勝負だ。
みんなが俺に賭けて、それで俺が負けたら……大損だ。
いいよ、そこまでは。試合を見守ってくれれば、それで……」
「このッ……馬鹿タイガー!」
怒鳴ると同時に、リンは強くテーブルを叩いた。ドン! 落雷のような音。
彼女はその勢いに乗ったまま、虎太郎に食ってかかる。
「あんた、ここまで頑張ってきたでしょ!
それなのにそんなこと言うって、なに考えてんのよ!」
「何って、リスクが高いからやめようって…」
「うっさい、黙んなさい!
あんたねぇ、ここまで来たら、自分の勝ちを信じなさい!
”俺は勝つ、絶対に勝つ”、そう思いなさいよ!」
「そう言ってくれるのは嬉しいけどさ、でも……」
「ここまで来て、どうして臆病風に吹かれるの!?
あんたねぇ、勝負の前からねぇ、
”もしかしたら自分は負けるかも”
そんなこと思ってたらねぇ……! 勝てる勝負も勝てないのよ!」
「じゃあ、お前は賭けるのかよ! 俺を信じて賭けるのかよ!」
「賭ける!」
「はぁ!?」
「というかね、もう賭けてあるのよ! ほら!」
リンは制服のポケットからチケットを取り出し、虎太郎に見せつける。
チケットに書かれてある数字をみた虎太郎の顔が、思わず引きつる。
彼は声を震わせながら喋る。
「こんなにたくさん……。本気かよ?」
「本気だからやったんでしょ!」
「お前……ムチャクチャすぎるよ……」
ジムとスライも身を乗り出してチケットを見る。ジムの感想。
「オー、クレイジー……。信じられないな」
「さぁ、あんたたちはどうするの? 虎太郎に賭けるか、賭けないか?
あたしは、強制はしないよ。お金って大事だもの、慎重に使わないと。
ただ、これだけは言っときたいの。あたしは賭けた。
だって、トラタローを信じてるから。こいつが勝つって信じてるから」
スライが口を開く。
「なぁ、ジム。たまには大穴を狙うのもいいと思わねぇか?」
「スライ、お前……」
「よし、決めた。俺はやるぜ。タイガー、お前に賭ける」
虎太郎は困惑の表情で返事をする。
「おい、いいのかよ、そんな簡単に!」
「うるせぇ、もう決めた! 俺もお前を信じるぜ!」
ジムが苦笑いしながら喋りだす。
「そうだな、たまには一発、デカい勝負も悪くない。よし、俺もやるか!」
「ちょっとちょっとちょっと、みんな!」
リンが笑いながら言う。
「トラタロー、いい加減、腹をくくりなさい。ねっ、自信をもって!
きっと大丈夫、うまくいくから。そうでしょ?」
彼女はさわやかにウィンクする。
それを見た虎太郎は、何も言えなくなる。
リンは高らかに叫ぶ。
「トラタローは勝つ、あたしたち大儲けよ! 間違いないんだから!」
虎太郎はブルブルッと震える。まだ誰も、彼の様子に気づいていない。
パイロット学校の宿舎、クレイグの部屋。
クレイグ、ギルダー、ローゼンの3人が、試合表を手に話をしている。
薄ら笑いしながら試合表を見ているクレイグが言う。
「まったく、1.2倍とは……。馬鹿らしいね。最低レートじゃないか」
ギルダーが返す。
「相手がトラタローじゃあ、そうなって当然だろ」
「はは、まったくその通り。それで、賭けはどうしたんだい?」
「俺もローゼンも、遊んでる金はぜんぶ突っ込んできた」
「もちろん、僕にだよね?」
「当たり前だろ。誰がトラタローなんかに賭けるかよ」
ローゼン。
「たぶん、あいつの仲間たちは、賭ける」
その言葉を聞いたとたん、クレイグが大きく笑う。
「あはは! いやぁ、ちょっと冗談キツいぜ、ローゼン!
奴らには、大穴を信じて賭けるなんて度胸はない。何もしないで終わりさ」
ギルダーがローゼンに言う。
「奴らの賭けなんかどうでもいいだろ?
仮に、奴らが賭けたとして、だ。どうせそれは負ける金、無駄な金だ。
学校に没収されて、俺たちの懐に入ってくる金。そうだろう?」
「イエス(Yes)」
「俺たちはゆっくり勝負を見物して、クレイグが勝つのを待ってりゃいいんだ。
それより、クレイグ。お前、自分自身には賭けたのか?」
「当然だろ?」
「(口笛を吹く)ヒュウ! そう来なくっちゃな!」
「大した収入にはならないだろうけど、お小遣いは重要だからね。
しっかり稼いで、靴下を買うお金にでもするさ」
クレイグはそう言って、「あはは!」と笑う。
場面は変わって、カフェテリアの隅にあるテーブル。
そこに集まっている虎太郎たちも、賭けの話をしている。
手に持った試合表をテーブルに放り出して、リンが真っ先に喋りだす。
「あんたたち、どうするつもり? 試合賭博……」
スライ。
「どうって、おい、ジム。お前は?」
「……タイガーがまず話をすべきじゃないか?」
「俺かよ」
全員の視線が虎太郎に集まる。思わず、彼はツバを飲みこむ。
少しの間があって、それから、彼は喋り始める。
「みんな。とりあえず、俺に賭けるのは無しにしようぜ」
リンの顔が険しくなる。彼女は虎太郎を問い詰める。
「なんで? なんでそんなこと言うの?」
「なんで、って……。だって、俺が勝つと決まってるわけじゃないだろ。
確かに、いろいろ特訓したよ。それでも、まだまだ厳しい勝負だ。
みんなが俺に賭けて、それで俺が負けたら……大損だ。
いいよ、そこまでは。試合を見守ってくれれば、それで……」
「このッ……馬鹿タイガー!」
怒鳴ると同時に、リンは強くテーブルを叩いた。ドン! 落雷のような音。
彼女はその勢いに乗ったまま、虎太郎に食ってかかる。
「あんた、ここまで頑張ってきたでしょ!
それなのにそんなこと言うって、なに考えてんのよ!」
「何って、リスクが高いからやめようって…」
「うっさい、黙んなさい!
あんたねぇ、ここまで来たら、自分の勝ちを信じなさい!
”俺は勝つ、絶対に勝つ”、そう思いなさいよ!」
「そう言ってくれるのは嬉しいけどさ、でも……」
「ここまで来て、どうして臆病風に吹かれるの!?
あんたねぇ、勝負の前からねぇ、
”もしかしたら自分は負けるかも”
そんなこと思ってたらねぇ……! 勝てる勝負も勝てないのよ!」
「じゃあ、お前は賭けるのかよ! 俺を信じて賭けるのかよ!」
「賭ける!」
「はぁ!?」
「というかね、もう賭けてあるのよ! ほら!」
リンは制服のポケットからチケットを取り出し、虎太郎に見せつける。
チケットに書かれてある数字をみた虎太郎の顔が、思わず引きつる。
彼は声を震わせながら喋る。
「こんなにたくさん……。本気かよ?」
「本気だからやったんでしょ!」
「お前……ムチャクチャすぎるよ……」
ジムとスライも身を乗り出してチケットを見る。ジムの感想。
「オー、クレイジー……。信じられないな」
「さぁ、あんたたちはどうするの? 虎太郎に賭けるか、賭けないか?
あたしは、強制はしないよ。お金って大事だもの、慎重に使わないと。
ただ、これだけは言っときたいの。あたしは賭けた。
だって、トラタローを信じてるから。こいつが勝つって信じてるから」
スライが口を開く。
「なぁ、ジム。たまには大穴を狙うのもいいと思わねぇか?」
「スライ、お前……」
「よし、決めた。俺はやるぜ。タイガー、お前に賭ける」
虎太郎は困惑の表情で返事をする。
「おい、いいのかよ、そんな簡単に!」
「うるせぇ、もう決めた! 俺もお前を信じるぜ!」
ジムが苦笑いしながら喋りだす。
「そうだな、たまには一発、デカい勝負も悪くない。よし、俺もやるか!」
「ちょっとちょっとちょっと、みんな!」
リンが笑いながら言う。
「トラタロー、いい加減、腹をくくりなさい。ねっ、自信をもって!
きっと大丈夫、うまくいくから。そうでしょ?」
彼女はさわやかにウィンクする。
それを見た虎太郎は、何も言えなくなる。
リンは高らかに叫ぶ。
「トラタローは勝つ、あたしたち大儲けよ! 間違いないんだから!」
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