11 / 27
第2章 1人だけでは戦えない
冗談キツいぜ/Give me a break
しおりを挟む
翌日の日曜は平和に過ぎた。
虎太郎はランニングなどの自主トレ、リンは友達と一緒に買い物、
ジムやスライは映画鑑賞、そんな一日だった。
大きな問題は、その翌日……月曜に起きた。
ここは虎太郎たちの教室、時間は朝のホーム・ルーム。
今、教官ベリーは大きなホワイト・ボードの前に立って話をしている。
「諸君、先日の中間試験はご苦労だった。
勝った者も負けた者も、この経験を次に活かせるよう、努力するように。
さて、それでは今日の本題だが……」
彼女は机の上に置いてある紙を手に取って話を続ける。
「静かに聞くように。これから、次の期末試験……
すなわち、今年度最後の期末試験について説明を行う」
軽い緊張感が室内の空気を支配する。
「今回も、いつも通りの模擬戦闘。実際のヘリエンを使っての戦いだ。
何度でも言うが、模擬戦闘だからといって油断するな。
訓練用の武器を使うとはいえ、当たり所が悪ければ死ぬこともある。
過去にも何回かの死亡事故が起きている。
繰り返す、絶対に油断するな。危険だと思ったら降参しろ、肝に銘じるんだ」
生徒全員が「はい!」と返答する。ベリーはそれに対してうなずく。
「よし、では次。誰が誰と戦うか、対戦予定を発表する」
教室右側の席に座っている虎太郎、厳しい顔つきになる。
彼はベリーの声をよく聞こうと耳を澄ます。
「いくぞ。アン・マンガノ、お前の相手は……」
虎太郎の左隣の席にいるスライが、小声で虎太郎に話しかける。
「おい、お前の相手は誰だろうな?」
「知るかよ……。でも、リンだけはご免だな」
「あいつか、あいつは最強だ……。やべぇよ」
「いや、最強っていうか、そこは問題じゃなくって……。
まぁ、こればっかりは運だ。腹をくくるしかない」
どんどん対戦予定が発表されていく。
「クリフ、お前の相手はマイルズだ。次、クレイグ。お前の相手はトラタローだ」
教室の左側にある席、そこに座っているクレイグが思わず苦笑いする。
彼は右横に座っているギルダーに対して喋る。
「ははっ、トラタローだってさ!」
「楽勝じゃねぇか」
「弱い者いじめにならないよう、気をつけないとね」
彼らは嫌味な笑いを顔に浮かべながら虎太郎の方を見る。
視線の先には、グッタリした顔の虎太郎がいる。
スライが必死に話しかけている。
「おいおい、クレイグだって!?」
「……冗談キツいぜ……」
「ま、まぁ、リンよりはいいんじゃねぇか?
そりゃ、クレイグは強いけどよ。でも、リンには負けたんだ。
必死に頑張りゃ、勝てるチャンスはある」
「そりゃ、チャンスだけならあるさ。宝くじに当たるチャンスだってある。
同時に、今みたいに貧乏くじを引いちまうチャンスだってある」
「とにかく落ち着けよ……」
ベリーから注意が飛ぶ。
「トラタロー、スライ! 静かに!」
「はい!」
2人は黙りこむ。そしてホーム・ルーム終了まで、どちらも口を開かなかった。
弱い者が歩む道は、強い者によって行く手を阻まれる。
虎太郎はランニングなどの自主トレ、リンは友達と一緒に買い物、
ジムやスライは映画鑑賞、そんな一日だった。
大きな問題は、その翌日……月曜に起きた。
ここは虎太郎たちの教室、時間は朝のホーム・ルーム。
今、教官ベリーは大きなホワイト・ボードの前に立って話をしている。
「諸君、先日の中間試験はご苦労だった。
勝った者も負けた者も、この経験を次に活かせるよう、努力するように。
さて、それでは今日の本題だが……」
彼女は机の上に置いてある紙を手に取って話を続ける。
「静かに聞くように。これから、次の期末試験……
すなわち、今年度最後の期末試験について説明を行う」
軽い緊張感が室内の空気を支配する。
「今回も、いつも通りの模擬戦闘。実際のヘリエンを使っての戦いだ。
何度でも言うが、模擬戦闘だからといって油断するな。
訓練用の武器を使うとはいえ、当たり所が悪ければ死ぬこともある。
過去にも何回かの死亡事故が起きている。
繰り返す、絶対に油断するな。危険だと思ったら降参しろ、肝に銘じるんだ」
生徒全員が「はい!」と返答する。ベリーはそれに対してうなずく。
「よし、では次。誰が誰と戦うか、対戦予定を発表する」
教室右側の席に座っている虎太郎、厳しい顔つきになる。
彼はベリーの声をよく聞こうと耳を澄ます。
「いくぞ。アン・マンガノ、お前の相手は……」
虎太郎の左隣の席にいるスライが、小声で虎太郎に話しかける。
「おい、お前の相手は誰だろうな?」
「知るかよ……。でも、リンだけはご免だな」
「あいつか、あいつは最強だ……。やべぇよ」
「いや、最強っていうか、そこは問題じゃなくって……。
まぁ、こればっかりは運だ。腹をくくるしかない」
どんどん対戦予定が発表されていく。
「クリフ、お前の相手はマイルズだ。次、クレイグ。お前の相手はトラタローだ」
教室の左側にある席、そこに座っているクレイグが思わず苦笑いする。
彼は右横に座っているギルダーに対して喋る。
「ははっ、トラタローだってさ!」
「楽勝じゃねぇか」
「弱い者いじめにならないよう、気をつけないとね」
彼らは嫌味な笑いを顔に浮かべながら虎太郎の方を見る。
視線の先には、グッタリした顔の虎太郎がいる。
スライが必死に話しかけている。
「おいおい、クレイグだって!?」
「……冗談キツいぜ……」
「ま、まぁ、リンよりはいいんじゃねぇか?
そりゃ、クレイグは強いけどよ。でも、リンには負けたんだ。
必死に頑張りゃ、勝てるチャンスはある」
「そりゃ、チャンスだけならあるさ。宝くじに当たるチャンスだってある。
同時に、今みたいに貧乏くじを引いちまうチャンスだってある」
「とにかく落ち着けよ……」
ベリーから注意が飛ぶ。
「トラタロー、スライ! 静かに!」
「はい!」
2人は黙りこむ。そしてホーム・ルーム終了まで、どちらも口を開かなかった。
弱い者が歩む道は、強い者によって行く手を阻まれる。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
おてんばプロレスの女神たち ~男子で、女子大生で、女子プロレスラーのジュリーという生き方~
ちひろ
青春
おてんば女子大学初の“男子の女子大生”ジュリー。憧れの大学生活では想定外のジレンマを抱えながらも、涼子先輩が立ち上げた女子プロレスごっこ団体・おてんばプロレスで開花し、地元のプロレスファン(特にオッさん連中!)をとりこに。青春派プロレスノベル「おてんばプロレスの女神たち」のアナザーストーリー。
ユキ・almighty
綾羽 ミカ
青春
新宿区の高校に通う益田ユキは、どこから見てもただの優等生だった。
黒髪を綺麗にまとめ、制服の襟元を正し、図書館ではいつも詩集や古典文学を読んでいる。
クラスメートからは「おしとやかで物静かな子」と評され、教師たちからも模範的な生徒として目をかけられていた。
しかし、それは彼女の一面でしかない。
碧春
風まかせ三十郎
青春
碧色(へきいろ)。それは表面は澄んでいながら最奥までは見通すことのできない深い碧。毎日のように級友たちと顔を合わせているにも拘わらず、気心の知れた友達ですら、その心の奥底までは見透かすことができない。でも一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、それは深海の底から沸き上がる気泡のように目視できることがある。主人公わたしは電車内で不意に唇を奪われた。それも同じ学校の女生徒に。彼女の名前は瀬名舞子。今日転校してきたばかりの同級生。それ以後、わたしの受験生としての日常は彼女に翻弄されることになる。碧春(へきしゅん)。それはきらめく青春の断片。碧春。それは誰もが抱く永遠の思い出の欠片。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる