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第2章 1人だけでは戦えない

冗談キツいぜ/Give me a break

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翌日の日曜は平和に過ぎた。
虎太郎はランニングなどの自主トレ、リンは友達と一緒に買い物、
ジムやスライは映画鑑賞、そんな一日だった。

大きな問題は、その翌日……月曜に起きた。
ここは虎太郎たちの教室、時間は朝のホーム・ルーム。
今、教官ベリーは大きなホワイト・ボードの前に立って話をしている。

「諸君、先日の中間試験はご苦労だった。
 勝った者も負けた者も、この経験を次に活かせるよう、努力するように。
 さて、それでは今日の本題だが……」

彼女は机の上に置いてある紙を手に取って話を続ける。

「静かに聞くように。これから、次の期末試験……
 すなわち、今年度最後の期末試験について説明を行う」

軽い緊張感が室内の空気を支配する。

「今回も、いつも通りの模擬戦闘。実際のヘリエンを使っての戦いだ。
 何度でも言うが、模擬戦闘だからといって油断するな。
 訓練用の武器を使うとはいえ、当たり所が悪ければ死ぬこともある。
 過去にも何回かの死亡事故が起きている。
 繰り返す、絶対に油断するな。危険だと思ったら降参しろ、肝に銘じるんだ」

生徒全員が「はい!」と返答する。ベリーはそれに対してうなずく。

「よし、では次。誰が誰と戦うか、対戦予定を発表する」

教室右側の席に座っている虎太郎、厳しい顔つきになる。
彼はベリーの声をよく聞こうと耳を澄ます。

「いくぞ。アン・マンガノ、お前の相手は……」

虎太郎の左隣の席にいるスライが、小声で虎太郎に話しかける。

「おい、お前の相手は誰だろうな?」
「知るかよ……。でも、リンだけはご免だな」
「あいつか、あいつは最強だ……。やべぇよ」
「いや、最強っていうか、そこは問題じゃなくって……。
 まぁ、こればっかりは運だ。腹をくくるしかない」

どんどん対戦予定が発表されていく。

「クリフ、お前の相手はマイルズだ。次、クレイグ。お前の相手はトラタローだ」

教室の左側にある席、そこに座っているクレイグが思わず苦笑いする。
彼は右横に座っているギルダーに対して喋る。

「ははっ、トラタローだってさ!」
「楽勝じゃねぇか」
「弱い者いじめにならないよう、気をつけないとね」

彼らは嫌味な笑いを顔に浮かべながら虎太郎の方を見る。
視線の先には、グッタリした顔の虎太郎がいる。
スライが必死に話しかけている。

「おいおい、クレイグだって!?」
「……冗談キツいぜ……」
「ま、まぁ、リンよりはいいんじゃねぇか?
 そりゃ、クレイグは強いけどよ。でも、リンには負けたんだ。
 必死に頑張りゃ、勝てるチャンスはある」
「そりゃ、チャンスだけならあるさ。宝くじに当たるチャンスだってある。
 同時に、今みたいに貧乏くじを引いちまうチャンスだってある」
「とにかく落ち着けよ……」

ベリーから注意が飛ぶ。

「トラタロー、スライ! 静かに!」
「はい!」

2人は黙りこむ。そしてホーム・ルーム終了まで、どちらも口を開かなかった。



弱い者が歩む道は、強い者によって行く手を阻まれる。
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