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第2章 1人だけでは戦えない
しっかり尻に敷かれてる
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最初の特訓終了後、ここはカフェテリアの隅。
虎太郎とリンは、2人きりで軽食をしている。
テーブルの上には紙やペンが転がり、
2人はそれを前にあぁだこうだと話し合っている。
リンのセリフ。
「とにかくね、まず体を鍛えなくちゃダメ! あんたね、あれじゃダメダメよ」
「マジかよ……。俺、かなり鍛えたつもりなんだけど」
「そりゃ、鍛えてあるのは認める。でもね、全体的なバランスが悪い。
それと、柔軟性が足りてない。スタミナも」
「……他には?」
「まぁ、言い出したらキリないけどね。とにかく体力づくり!
それと、食事の内容もちょっと改善しないとね」
「えぇっ……」
「もう忘れたの? あんたはあたしの家来、子分! 黙って言うこと聞く!」
「わかってるよ、それは……」
「なら、ぶつくさ文句言わないの!」
「……了解」
虎太郎は紙に「体力づくり、食事の見直し」と書き込む。
それが終わらないうちにリンが喋る。
「じゃあ次。ヘリエンの操縦、戦い方だけど。あんたの大きな問題点がわかった」
「防御のタイミングか?」
「ぶっちゃけ全般的にダメ」
「おい!」
「最後まで話を聞きなさい。
全般的にダメなのはね、あたしたちの同級生はみんなそう。
こんなこと言ってるあたしだって、まだまだプロのレベルには程遠い。
もっとうまく動けないか、無駄弾を減らせないか、いろいろ悩んでる」
「……それで?」
「みんな同じ課題を抱えてる。そういう中で、うまくやれる人には共通点がある」
「なんだよ?」
「特技よ。いや、特技っていうか、長所……得意とする何か、かな?
うまい人って、”これなら誰にも負けない、自信がある”、
そういう何かを持っているものなのよ」
「それってたとえば、射撃の正確さとか、そういうやつ?」
「まぁ、そんなところ。ねぇあんた、何かそういうのってないの?」
「うーん、そうだな……」
虎太郎、考えこもうとする。
だが、考えだしてからすぐにリンが話しかけ、彼の思考を妨害した。
「今ので分かった。あんた、得意なものがないでしょ」
「ちょっ、まだ……」
「あのね。本当に得意なものがあればね、考えなくたってすぐ言えるはずでしょ。
それができないってことは、つまり、得意なものがないのよ」
「いや、そんなことねーよ! 俺にだって……」
「俺にだって?」
「その……突進だ、突進! 突進するのは得意だぜ」
「あのレベルで?」
「今日は時間もなかったし、見せられなかったけどな。
俺は一気に加速しても耐えられる、意識を失わずに動ける、それが自慢なんだ」
「ホント?」
「嘘じゃねぇよ!
証拠に、こないだの中間試験だって、俺は最後の突撃で思いっきり走っただろ」
「あれか……」
リンの脳内にあの時の映像が思い浮かぶ。確かに、かなりの速度だった。
彼女は小さく息をもらしながら喋る。
「まぁ、確かにね。速度だけならね」
「だろ?」
「なら、それを中心に操縦訓練をしましょ」
虎太郎、紙に「突進中心の訓練」と書き込む。
その時、午後5時を告げるチャイムの音が響き渡った。
リンが手元のジュースを飲みながら言う。
「よし、まずはこの2つから特訓ってことで。
それじゃ、だいぶ疲れたし、あたしもう帰るね」
「それはいいけど、おい、メシの代金……」
「命令! あんたが払いなさい!」
鋭く言い放って、リンはスタスタと早足でカフェテリアから出ていく。
それを見送った後、虎太郎はぼやいた。
「なんだよ、ったく……。もしかして、ヤバい女につかまったのか、俺?」
彼はポリポリと頭をかいた。もっとも、それで何が解決するわけでもなかったが。
女の体重は軽い、女がもたらす問題は重い。
虎太郎とリンは、2人きりで軽食をしている。
テーブルの上には紙やペンが転がり、
2人はそれを前にあぁだこうだと話し合っている。
リンのセリフ。
「とにかくね、まず体を鍛えなくちゃダメ! あんたね、あれじゃダメダメよ」
「マジかよ……。俺、かなり鍛えたつもりなんだけど」
「そりゃ、鍛えてあるのは認める。でもね、全体的なバランスが悪い。
それと、柔軟性が足りてない。スタミナも」
「……他には?」
「まぁ、言い出したらキリないけどね。とにかく体力づくり!
それと、食事の内容もちょっと改善しないとね」
「えぇっ……」
「もう忘れたの? あんたはあたしの家来、子分! 黙って言うこと聞く!」
「わかってるよ、それは……」
「なら、ぶつくさ文句言わないの!」
「……了解」
虎太郎は紙に「体力づくり、食事の見直し」と書き込む。
それが終わらないうちにリンが喋る。
「じゃあ次。ヘリエンの操縦、戦い方だけど。あんたの大きな問題点がわかった」
「防御のタイミングか?」
「ぶっちゃけ全般的にダメ」
「おい!」
「最後まで話を聞きなさい。
全般的にダメなのはね、あたしたちの同級生はみんなそう。
こんなこと言ってるあたしだって、まだまだプロのレベルには程遠い。
もっとうまく動けないか、無駄弾を減らせないか、いろいろ悩んでる」
「……それで?」
「みんな同じ課題を抱えてる。そういう中で、うまくやれる人には共通点がある」
「なんだよ?」
「特技よ。いや、特技っていうか、長所……得意とする何か、かな?
うまい人って、”これなら誰にも負けない、自信がある”、
そういう何かを持っているものなのよ」
「それってたとえば、射撃の正確さとか、そういうやつ?」
「まぁ、そんなところ。ねぇあんた、何かそういうのってないの?」
「うーん、そうだな……」
虎太郎、考えこもうとする。
だが、考えだしてからすぐにリンが話しかけ、彼の思考を妨害した。
「今ので分かった。あんた、得意なものがないでしょ」
「ちょっ、まだ……」
「あのね。本当に得意なものがあればね、考えなくたってすぐ言えるはずでしょ。
それができないってことは、つまり、得意なものがないのよ」
「いや、そんなことねーよ! 俺にだって……」
「俺にだって?」
「その……突進だ、突進! 突進するのは得意だぜ」
「あのレベルで?」
「今日は時間もなかったし、見せられなかったけどな。
俺は一気に加速しても耐えられる、意識を失わずに動ける、それが自慢なんだ」
「ホント?」
「嘘じゃねぇよ!
証拠に、こないだの中間試験だって、俺は最後の突撃で思いっきり走っただろ」
「あれか……」
リンの脳内にあの時の映像が思い浮かぶ。確かに、かなりの速度だった。
彼女は小さく息をもらしながら喋る。
「まぁ、確かにね。速度だけならね」
「だろ?」
「なら、それを中心に操縦訓練をしましょ」
虎太郎、紙に「突進中心の訓練」と書き込む。
その時、午後5時を告げるチャイムの音が響き渡った。
リンが手元のジュースを飲みながら言う。
「よし、まずはこの2つから特訓ってことで。
それじゃ、だいぶ疲れたし、あたしもう帰るね」
「それはいいけど、おい、メシの代金……」
「命令! あんたが払いなさい!」
鋭く言い放って、リンはスタスタと早足でカフェテリアから出ていく。
それを見送った後、虎太郎はぼやいた。
「なんだよ、ったく……。もしかして、ヤバい女につかまったのか、俺?」
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