未来に向かって突き進め！

第１章 あの日の君を取り戻せ

最後の中間試験

今、ここは、虎太郎が在籍しているパイロット養成校のシミュレーター・ルーム。
ヘリエンの操縦技術などを学ぶために使われるこの部屋には、
現在、たくさんの生徒たちと数人の教官たちがいる。
教室中央にあるシミュレーターの席に座っているのは、虎太郎。
その近くには教官であるベリー（女性）がいて、虎太郎に話をしている。

「いいか、トラタロー。念のためにもう一度、説明しておくぞ。
　２年生に上がるための条件の１つは、
　中間試験でシミュレーターを相手に２回勝利すること。
　お前は既に１回、勝利している。だから、ここで勝てば２回勝利、
　晴れて進級確定だ。だが、もし負ければ……」
「完全に後がなくなる……」
「そうだ。これが最後の中間試験、もしここで勝てなければ、
　お前は別の条件を満たすことで進級するしかない」
「期末試験の模擬戦闘、実際のヘリエンを使う戦いで勝利する……」
「はっきり言おう、お前の実力では無理だ。お前自身、よく知っているはず。
　お前が模擬戦闘で勝ったことは一度もない。この中間試験が最後の希望だぞ」
「はい」
「……準備はいいな？」

虎太郎はゴクリと唾を飲み込む。深呼吸、意識を鎮める。返答。

「……大丈夫です。行けます。」
「よし。それでは、これより試験を開始する。トラタロー、全力を尽くせ。
　他の生徒諸君は中継ディスプレイを見て、彼の戦いの長所・短所を学べ」

ベリーがシミュレーターのそばから離れる。
虎太郎は席のそばにある簡易ヘルメットを頭に装着し、
視界や聴覚その他を、シミュレーターが作る疑似現実とシンクロさせる。
席の周辺に設けられた操縦桿を握り、フット・ペダルの感触を確かめる。
座席が作動し、ヘリエンの振動や被弾時のショックを伝える機能を立ち上げる。
シート・ベルトが虎太郎の体を少しだけ締め付ける。
虎太郎は、実際のヘリエンに搭乗しているのと同じような状態になる。

虎太郎の準備が完全に整ったのを見て、
ベリーがシミュレーターの最終プログラムを起動させる。
敵として設定されたヘリエンが、シミュレーターの疑似現実内に出現する。
急速に静かになる室内、ベリーが鋭く言い放つ。

「戦闘開始！」



幸運の女神は虎太郎に微笑むだろうか？