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第二章 森を守れ
第13話-2 勝利はリスクと引き換えに得るものだから
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俺はホワイト・ボードに地図を描きながらエイミー、ダーカーに説明する。
「まず、俺たちの基地がここ。森は西にあって、形は……こんな感じ。それで、ダーカー、敵の拠点は森の西側の端っこだっけ?」
「移動してなければそうだろう」
「よし……」
黒ペンでさっさと描きこんでいく俺。エイミーが声を出す。
「クロベー、字、下手」
「下手じゃなくて、芸術的と言ってもらいたいね」
「うん。芸術的」
「だから言うタイミングが遅ぇよ!」
ダーカーが笑う。
「はっはっは! まぁまぁ、字の話はこれくらいにして、先に行こう」
「ったく……。えぇと、森の北側が平原。俺たちヘリエン部隊とサマナー部隊が戦ったところだな」
「そして森のすぐ南側は山脈だ。山脈の南は海、まぁここに行くことはないと思うが」
「うし……」
さらに描きこみ。出来上がった地図を見ながら俺は考える。
「北から攻め込むのはやっぱ無理だ。かといって、森の部隊でどうこうってのも厳しい」
ダーカー。
「なにか強力な兵器で状況を変えるのはどうだ?」
「そんなもんがあればとっくに使われてるはずだろ」
「うぅむ……」
「最悪は森を焼けばいいが、それだとこっちの被害もやばいしな……」
その時、誰かがドアを叩く音が発生した。コンコン。その誰か……メイユー隊長は、室内に入ってくる。
「なんだ、お前らまだいたのか」
俺が返答する。
「ちょっと話し合いをしてまして。隊長はなんでここに?」
「忘れ物だ、忘れ物。上着を置いてきちまって……」
彼女は例の椅子に行き、上着を手に取る。そしてホワイト・ボードの地図を見ながら喋る。
「こんなもん描いて何やってんだ?」
「まぁその、作戦会議というか……」
「んなことしてねーでさっさと部屋に戻れって。体を休めるのも仕事のうちだぞ」
「でも、少しくらいはいいじゃないッスか」
「お前らが考えたところで何が解決するんだよ……。ちょっとしたことならともかく、これは戦争だぞ?」
「まぁそうかもしれませんけど……」
俺は苦笑いをしながら地図を見る。やっぱダメなのか。うぅむ……。
ふと思いつく。俺は口を開く。
「隊長。森と南の山脈の間に狭い道みたいなものができてますよね?」
「あぁ、ここか?」
「ここを通って相手の拠点に殴りこみってのは無理ですかね?」
「無理だろ。相手だってそれくらい予想してる、間違いなく防御態勢が敷かれてるよ」
「でもガチガチに守ってるわけじゃないでしょう」
「それはそうだろうが……」
「俺が思うに、ここを攻略して拠点を直接叩くしかないですよ」
「だから防御されてるって言ってんだろ」
「そりゃ、正面から突破するのは無理ですよ。だから、山から行くってのはどうです?」
「山ぁ……?」
俺はボードのそばにある赤ペンを取り、山脈のあたりを丸く囲む。
「ここにサマナー部隊を送り込んで山を登り、大急ぎで進撃、敵陣が見えたら召喚生物で叩く……」
「面白い話だが、うちのサマナー部隊じゃ、飛行可能な召喚生物なんて少ししか出せないぞ」
「少しで大丈夫ですよ。拠点そのものの守りは薄いはず、だったら、上空からの奇襲で一気につぶせる」
「でもなぁ、山にはモンスターがうようよしてんだぞ。山に行く部隊はそいつらと戦うことになる。登山だけでもきついのに、その上、モンスターと戦うっていうんじゃ、途中で力尽きるのがオチだよ」
「なら、少数精鋭、選りすぐりのエリートで部隊を作ればいいんです。それに護衛の兵士をつける。サイキックの戦闘力は通常の兵士の三倍、森の部隊から少し回してもらえれば大丈夫です」
「じゃあ、仮にその作戦をするとして、山の部隊が目標地点に行くまでの間はどうする? どう考えても四日はかかるんだぞ」
「どうにかして持ちこたえるしかないですよ」
「無理だ、無理がありすぎる!」
「けど、他に作戦があるんですか? このままじゃ勝てないんです、多少のリスクを背負ってでも逆転を狙わないと……」
「お前の言いたいことは分かるけどな……」
隊長は「ハァ……」とため息をつき、言葉を続ける。
「作戦の成功確率はゼロ……とまでは言わない。でも、相当低いぞ、これは」
「俺だってそう思います。だけど検討してみる価値はあると思います」
「まぁそうかもしれないけどね……」
ダーカーが発言する。
「隊長、午後にもまた会議があると聞いてます。そこでクロベーの話を提案してみてはいかがですか」
「言うだけならタダ、だから言ってみるってことかい?」
「はい」
「ふぅん……」
真面目な顔をしたエイミーが隊長に話しかける。
「私、クロベー、信じてる。このアイデア、大丈夫。きっと成功する。隊長、お願いします」
「……ったく、しょうがないねぇ、あんた達は……。わかった、言うだけは言ってみよう」
「隊長、ありがと!」
「でも期待はするんじゃないよ。ダメでもともと、そういうもんだと思ってくれ」
「うん!」
「うん、じゃなくて、はい!」
「はい!」
「ホント、しょうがないんだから……」
隊長は苦笑いしている。まぁ全面的なYesってわけじゃない、でも、話を引き受けてくれたんだ。ありがとうございます。作戦の提案、どうかよろしくお願いします。
後は話が自然に流れていくままに任せよう……。
「まず、俺たちの基地がここ。森は西にあって、形は……こんな感じ。それで、ダーカー、敵の拠点は森の西側の端っこだっけ?」
「移動してなければそうだろう」
「よし……」
黒ペンでさっさと描きこんでいく俺。エイミーが声を出す。
「クロベー、字、下手」
「下手じゃなくて、芸術的と言ってもらいたいね」
「うん。芸術的」
「だから言うタイミングが遅ぇよ!」
ダーカーが笑う。
「はっはっは! まぁまぁ、字の話はこれくらいにして、先に行こう」
「ったく……。えぇと、森の北側が平原。俺たちヘリエン部隊とサマナー部隊が戦ったところだな」
「そして森のすぐ南側は山脈だ。山脈の南は海、まぁここに行くことはないと思うが」
「うし……」
さらに描きこみ。出来上がった地図を見ながら俺は考える。
「北から攻め込むのはやっぱ無理だ。かといって、森の部隊でどうこうってのも厳しい」
ダーカー。
「なにか強力な兵器で状況を変えるのはどうだ?」
「そんなもんがあればとっくに使われてるはずだろ」
「うぅむ……」
「最悪は森を焼けばいいが、それだとこっちの被害もやばいしな……」
その時、誰かがドアを叩く音が発生した。コンコン。その誰か……メイユー隊長は、室内に入ってくる。
「なんだ、お前らまだいたのか」
俺が返答する。
「ちょっと話し合いをしてまして。隊長はなんでここに?」
「忘れ物だ、忘れ物。上着を置いてきちまって……」
彼女は例の椅子に行き、上着を手に取る。そしてホワイト・ボードの地図を見ながら喋る。
「こんなもん描いて何やってんだ?」
「まぁその、作戦会議というか……」
「んなことしてねーでさっさと部屋に戻れって。体を休めるのも仕事のうちだぞ」
「でも、少しくらいはいいじゃないッスか」
「お前らが考えたところで何が解決するんだよ……。ちょっとしたことならともかく、これは戦争だぞ?」
「まぁそうかもしれませんけど……」
俺は苦笑いをしながら地図を見る。やっぱダメなのか。うぅむ……。
ふと思いつく。俺は口を開く。
「隊長。森と南の山脈の間に狭い道みたいなものができてますよね?」
「あぁ、ここか?」
「ここを通って相手の拠点に殴りこみってのは無理ですかね?」
「無理だろ。相手だってそれくらい予想してる、間違いなく防御態勢が敷かれてるよ」
「でもガチガチに守ってるわけじゃないでしょう」
「それはそうだろうが……」
「俺が思うに、ここを攻略して拠点を直接叩くしかないですよ」
「だから防御されてるって言ってんだろ」
「そりゃ、正面から突破するのは無理ですよ。だから、山から行くってのはどうです?」
「山ぁ……?」
俺はボードのそばにある赤ペンを取り、山脈のあたりを丸く囲む。
「ここにサマナー部隊を送り込んで山を登り、大急ぎで進撃、敵陣が見えたら召喚生物で叩く……」
「面白い話だが、うちのサマナー部隊じゃ、飛行可能な召喚生物なんて少ししか出せないぞ」
「少しで大丈夫ですよ。拠点そのものの守りは薄いはず、だったら、上空からの奇襲で一気につぶせる」
「でもなぁ、山にはモンスターがうようよしてんだぞ。山に行く部隊はそいつらと戦うことになる。登山だけでもきついのに、その上、モンスターと戦うっていうんじゃ、途中で力尽きるのがオチだよ」
「なら、少数精鋭、選りすぐりのエリートで部隊を作ればいいんです。それに護衛の兵士をつける。サイキックの戦闘力は通常の兵士の三倍、森の部隊から少し回してもらえれば大丈夫です」
「じゃあ、仮にその作戦をするとして、山の部隊が目標地点に行くまでの間はどうする? どう考えても四日はかかるんだぞ」
「どうにかして持ちこたえるしかないですよ」
「無理だ、無理がありすぎる!」
「けど、他に作戦があるんですか? このままじゃ勝てないんです、多少のリスクを背負ってでも逆転を狙わないと……」
「お前の言いたいことは分かるけどな……」
隊長は「ハァ……」とため息をつき、言葉を続ける。
「作戦の成功確率はゼロ……とまでは言わない。でも、相当低いぞ、これは」
「俺だってそう思います。だけど検討してみる価値はあると思います」
「まぁそうかもしれないけどね……」
ダーカーが発言する。
「隊長、午後にもまた会議があると聞いてます。そこでクロベーの話を提案してみてはいかがですか」
「言うだけならタダ、だから言ってみるってことかい?」
「はい」
「ふぅん……」
真面目な顔をしたエイミーが隊長に話しかける。
「私、クロベー、信じてる。このアイデア、大丈夫。きっと成功する。隊長、お願いします」
「……ったく、しょうがないねぇ、あんた達は……。わかった、言うだけは言ってみよう」
「隊長、ありがと!」
「でも期待はするんじゃないよ。ダメでもともと、そういうもんだと思ってくれ」
「うん!」
「うん、じゃなくて、はい!」
「はい!」
「ホント、しょうがないんだから……」
隊長は苦笑いしている。まぁ全面的なYesってわけじゃない、でも、話を引き受けてくれたんだ。ありがとうございます。作戦の提案、どうかよろしくお願いします。
後は話が自然に流れていくままに任せよう……。
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