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第二章 森を守れ

第12話-2 金色のアイツ

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 俺はダーカーに通信を入れる。

「なんだよあの武器!?」
「お前、知らんのか?」
「初めて見たぞ!」
「うむ、俺も初めてだ」

 あのなぁ……。こいつ、冷静なんだかボケてるんだか。そう考えているところにメイユー隊長からの通信が来る。

「ボサッとすんな! あいつを倒しにいくぞ!」
「倒すって、どうやって!」
「遠くから撃ちまくるんだよ! 何の武器だか知らないが、あんなもん接近戦でしか使えないはずだ。間合いの外から叩けば安全だろ」
「えっ、ちょっと!」
「いくぞ! お前ら一緒に来い!」

 ダーカーとエイミーが「了解」と言う声が聞こえる。すぐさまメイユー隊長のヘリエンが走り出し、それを追いかけてダーカー、エイミーのヘリエンも走り出す。クソッタレ、ちょっと急ぎすぎじゃねぇか!? えぇい、とにかく俺も行かねぇと!

 ブルー・デーモンの左側を駆け抜け、あの金色のヘリエンがいるはずの場所を目指す。ほどなくしてそいつの姿が見えてくる、どうやらケルベロスに追い打ちの射撃を浴びせてるらしい。俺はちょっと観察してみる。
 ホント、金ぴか過ぎてすっげぇ目立ってるぜ。こいつのパイロットは何を考えてんだよ、こんなに目立ってたら狙い撃ちされるぞ?

 いや、敵を引きつけるため、あえて金色にしてるのかもしれんな。十分な力を持つエース・パイロットなら、ボンクラがきても対処できる。そうやって雑魚を引きつけて時間を稼ぎ、その間に味方が自由に動く。ひょっとしてそういうことか?
 相手がこっちに気づく。奴は機体をこちらへ向け、左手のアサルト・ライフルを構える。こうなったらもう逃げられねぇ、戦うのみだ!

 メイユー隊長からの通信。

「ミサイルだ、クロベー!」
「了解!」

 左肩のミサイル・ランチャーから分裂ミサイル二発を発射。親ミサイルが鋭く飛び、ある程度進んだところで小さな子ミサイルを大量に放つ。それらは金色野郎を目指して飛んでいく。
 奴の黒い右腕が動く。それについている拳が握られ、そこから緑に光る何発ものマインド・ブラストが撃ちだされる。叩き落とされていく俺のミサイルたち、それと同時に奴は俺たちから見て左へと動き出す。

 ショック・ブラストは武装さえあれば一般人でも撃てるが、マインド・ブラストは武装に加え、パイロット本人の超能力が必要とされる。そのマインド・ブラストを使ったということは、あの金色、サイキック用のヘリエンだ。当然パイロットもサイキックだろう。
 しかし、奴は肩部にフェアリーを積んでいない。銃の撃ち合いではなく、巨大な拳が使える接近戦を重視ってわけか。なら、隊長が言った通り、間合いの外から攻める!

 そう思って俺がバトル・ライフルを構えた時、視界の左前方に、二体の敵ヘリエンと一体の殺りく人形がやって来るのが見えた。召喚生物とその護衛ってわけかい、クソッタレ! 即座に隊長から指示が飛ぶ。

「あいつらはあたしとダーカーでどうにかする! クロベーとエイミーはあの金色を倒せ、最低でも行動不能にしろ!」

 俺とエイミーは同時に「了解!」と答え、金色が逃げていく方向へ機体を走らせ始める。俺の視界の片隅、隊長とダーカーが敵集団に突っこんでいくのが見える。そして金色からの通信が入ってくる。若い男の声だ。

「一人に対して二人がかり。恥ずかしいことだな?」

 ふん、くだらない挑発だ。俺は返答する。

「負けるよりはマシだ!」
「失礼だが、君たちの力では私に勝てない」
「うるせぇクソッタレ!」

 左肩から分裂ミサイル三発を放つ。それらは分裂して十発以上の子ミサイルとなる。敵機はそれらの一部を撃ち落とし、残りを蛇行しながらかわしていく。だがよけきれない、いくつかが命中する。よし、この隙に!

「エイミー、撃ちまくれ!」
「うん」

 彼女のヘリエンの右手から多数のショック・ブラストが乱れ飛ぶ。何発かが命中、だがあまり効いている様子が見えない。やはりショック・ブラストじゃ火力不足か! 超能力系の武器はこれが泣き所、こうなりゃ実弾系の武器に頼るしかねぇ!
 俺はバトル・ライフルを構え、エイミーに連絡を入れる。

「ショック・ブラストで奴をけん制してくれ。その間に俺がライフルで!」
「うん!」

 エイミーが攻撃を始める。よし、俺もいくぜ! 照準を合わせて……シュート!
 バン、バン、バン! バトル・ライフルが火を噴く。だが敵機はディフレクターを展開、俺たちの攻撃すべてが弾かれる。クソッタレ!

 奴は俺たちをあざ笑うかのように、蛇行しつつ後退していく。

「勝てんと言っただろう?」
「黙れよ!」

 ヘリエンを一気に加速。そうしながらエイミーに通信する。

「追いかけるぞ!」
「それって大丈夫?」
「当たり前だ!」
「でも嫌な感じ……」
「隊長からの命令だろ! あいつを倒せって!」
「わかった。追う」

 エイミーのヘリエンも加速を開始する。そのすぐ後、敵機はディフレクターを解除。動き続けながら俺たちへ射撃してくる。

「君たちはまだまだ未熟……」

 大量の弾丸が俺へと殺到する。クソッ、よけられねぇ! ガンガンガンガンガンガンガンと次々に被弾していく俺のヘリエン。エイミーが叫ぶ。

「クロベー!」
「この程度なら問題ねぇ!」
「でも、あいつ、クロベー傷つけた……!」

 彼女と出会ってから初めて聞く怒りの声。それはドライ・アイスのように冷たく、思わず俺の背筋を震わせる。彼女のヘリエンが勢いよく加速され、相手への間合いをグングン詰めていく。

「許さない……!」

 彼女のヘリエンが攻撃を開始する。右手からはショック・ブラスト、左手のハンドガンからは弾丸、それらが大量に撃ちだされる。

「殺す!」

 敵機は当然のようにディフレクターを展開する。ショック・ブラストのすべてが弾かれ、どこかへ飛んでいく。

「殺したいなら接近戦をすることだ」
「なめるな……!」

 エイミーの機体はさらに加速する。やべぇ、それはまずい!

「やめろっエイミー! 近づくな!」

 うかつに近づけばあの巨大な拳の間合いに入る。とにかくエイミーを追いかけて援護しねぇと! 俺は最大速度でヘリエンを飛ばす。足の車輪ども、まだ壊れるんじゃねぇぞ!
 敵機はひたすら逃げていく。必死に追うエイミー、その後ろをどうにかついていく俺。敵からの通信がくる。

「さて、残念だがお別れの時間だ。離脱する」
「待てよクソッタレ!」
「安心したまえ、君たちの相手は用意されている」

 前方に巨大な廃ビルがいくつか見える。敵機はそのビル群の後ろへ回り込む。少し遅れてエイミーもそこへ進んでいく。その直後、俺のところへ彼女からの通信がくる。

「ダメ……! クロベー、来ちゃダメ!」
「んなこと言ったって!」

 急に減速できるわけないだろ! 疾走の勢いに任せ、俺もビル群の後ろへ進む。その場所の光景が見えてくる。そこにいるのは……。



 武器を構えながら停止しているエイミーのヘリエンと、一体の殺りく人形。
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