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第二章 森を守れ

第11話 人間相手の殺し合いが始まるぜ

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 翌日の早朝。俺がベッドの中でウトウトしていると、緊急事態を告げるサイレンが鳴った。

「ウゥゥウゥゥゥウゥゥゥ!」

 うるせぇ! ったく、何事だ? 慌てて起きる俺。直後、通信担当と思われる若い女性の声がスピーカーから流れ出す。

「エマージェンシー、エマージェンシー。ヘリエン部隊の隊員およびサマナー部隊の隊員は、すぐにブリーフィング・ルームに集まってください。繰り返します、ヘリエン部隊の隊員および……」

 何やら戦闘の予感がするぜ。クソッタレ、まさかケニスのヘリエン部隊が攻めてきたのか?



 結論から言えばその通りだった。ヘリエン部隊とサマナー部隊は緊急出撃することになり、もちろん俺も出ることになった。

 ホバー・リグに乗り、第二部隊の仲間たちと共に戦場へ。もちろん他のリグにも今回の出撃部隊が乗っている。で、俺はというと、いつでも出撃できるようにするため、ずーっとヘリエンに搭乗し続けている。
 音声通信を通じてメイユー隊長が話しかけてくる。

「作戦はいつも通りでいくぞ。お前は後ろから援護射撃に集中しろ」
「了解です」
「召喚生物を優先的に狙えよ。どうせデカブツぞろい、射撃の的としちゃあ最高だ。ガンガンぶっ放していけ」
「任せてください。蹴散らしてやります」
「気負うのはいいが、油断するなよ。それと、念のために言っておくが、戦場ではあたしよりアンバー隊長の命令を優先するように。今回は彼女が大将なんだからな」
「ラジャー」
「気合い入れてけよ!」

 ブツッ、通信が切れる。やべぇ、武者震いしてきた……。訓練じゃなく、戦場でヘリエン同士の戦いをする。それってつまり、人間相手に殺し合いをするのと一緒だろ? しくじれば死ぬ……マジにならねぇと本当にヤバいぜ。クソッタレ。
 なにせ俺のヘリエンは動きが鈍い、大型のバトル・ライフルに加えて大量のミサイルやロケット弾を装備してるからな。そのせいで接近戦が苦手だ、懐に飛び込まれて斬り合いになったら死神が見えるぜ。そうなったら護衛のエイミーだけが頼りだ……。

 戦場に着くまでもう少し……。心臓がバクバクいってやがる。とにかく心を落ち着けねぇと……。



 そしてついに戦場。赤茶けた土が広がるこの平原は、障害物になるものが小さな岩山くらいしかない。明らかに射撃有利だ、弾幕を張り続ければ相手の接近を止められるはず。後はどんな召喚生物が出てくるかだ…。

 ホバー・リグからヘリエンを発進させ、まずはメイユー隊長の後ろにつく。俺の両脇にはダーカーとエイミーだ。この陣形で進むのが第二部隊のいつものやり方、でも、これが今回も通じるかはわからん。
 コクピット内のレーダーを見ると、第三部隊のヘリエンたちは既に発進しているらしい。あとはサマナー部隊が召喚生物を出すだけだ。

 アンバー隊長が命令を出す。

「第一サマナー部隊はケルベロスを召喚! 第二部隊はブルー・デーモン、第三部隊はフレイム・ジャイアント!」

 あたりに召喚生物たちが現れていく。どれも小さなビルぐらいの高さや大きさがある連中だ。具体的に言えば十メートルぐらいか? 特にブルー・デーモンはでかい、青い肌をした人型の悪魔だが、どうても十二メートルはある。ヘリエンなんてせいぜい七とか八メートルだぞ?
 もちろん相手の召喚生物だってこれくらいはデカいはずだ。事によっちゃ、さらにデカい可能性もある。この巨大さだけでもヤバいのに、火球を撃つだの吹雪を起こすだの、召喚生物にはそういう能力まであるんだからな。クソッタレめ、そんな連中と戦わなくちゃならんとは。

 そうやって俺があぁだこうだ考えていると、音声通信システムからアンバー隊長の声が流れてきた。

「各部隊、前進を開始してください!」

 ここまで来たら戦って生き延びるのみだ! いくぜ、ガンホー!



 出撃してから五分ほど経った頃だろうか。俺たちの部隊の前に敵部隊が見えてきた。第二部隊のリグから通信が入る。

「敵ヘリエンは有人が四の無人二。召喚生物は、ナーガとクレイジー・パペットが多数」

 ナーガか。こいつは、下半身が大きなヘビで上半身が人間になっている化け物だ。口から吐き出す火球が実にうざったい。また、手に持っている剣の切れ味もなかなかだ。やわな金属ならあっさり断ち切る。

 そしてクレイジー・パペット……別名を「殺りく人形」というが、こいつは実に気持ち悪いクソッタレだ。ホラー映画に出てくるような不気味な人形がデカくなった奴で、右手に持った肉切り包丁と左手から発射するマインド・ブラスト(mind blast, 精神衝撃波)を武器にしてる。
 マインド・ブラストをくらうと、たとえヘリエンの中にいても精神異常になるから厄介だ。その種類は様々、パニック、極度の恐怖、多幸感、幻覚に幻聴。最悪は発狂だ。接近せず、なるべく遠くから攻撃して倒さないとやばい。

 ふん、ご託はいい、とにかく生き残ることだ。俺はヘリエンの動きをいったん遅くし、こいつが持ってるバトル・ライフルを構える。そのすぐ後、音声通信用のスピーカーからアンバー隊長の大声が響く。



「戦闘開始です! 敵部隊をせん滅せよ! 突撃!」
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