上 下
4 / 66
第一章 まったくタフな毎日だ

第3話 爺さん一人と美少女二人

しおりを挟む
 メタル・ラプターたちと戦うこと約十五分。奴らを撃破した俺たちは、狩りを中止して、とりあえず謎のヘリエンを街へ持ち帰ることにした。もちろん、中のパイロットも一緒だ。
 それと、戦闘地点から少し離れた場所にあった青いリグも回収した。どうやら謎のヘリエンの母艦らしい。あちこち痛んでるが、ギリで自力走行可能だ。こんなにダメージを受けるなんて、いったい何があったんだ? 事情を聞く必要があるわな。

 そういうわけで、俺と隊長、ダーカーの三人は、こいつに乗り込んでリグの乗員と喋ることにした。えっ、俺たちがいない間、俺たちのリグはどうするのかって? 操縦担当スタッフ、運転手やその他の連中やらがどうにかするだろ。ホバー・リグはたくさんの人が乗れるようになってんだぜ。整備班だっているよ。
 それに、自動操縦システムだってあるしな。運転手がケガしてもひとまず大丈夫ってわけだ。まぁ、細かいことは気にするな、どうとでもなるんだからよ。



 現在、青リグの中の一室。数人の人たちがいて、爺さんだの、若い女の子だの、バラエティ豊かだぜ。それと、先ほどのヘリエンに乗ってたパイロットもいる。こいつも若い女の子だ、黄色人種に見えるけど、髪の色は銀だ。へぇ、サイキックみたいな珍しい色してるじゃん。興味を持った俺は質問してみる。

「おい、そこのあんた」
「うん……?」
「銀髪とは珍しいけど、サイキックなのか?」
「ううん、違う。普通の人」
「へぇ……」
「ねぇ。あなた、私を助けた人?」
「そうだ。名前はクロベー」
「クロベー……。うん! あの時は助かった。ありがと!」

 少女は顔を赤くしながらニコニコ笑う。ふーん、まぁまぁ可愛いじゃん。もうちょっと喋ってみっか。

「で、あんたの名前は?」
「エイミー」
「エイミーか。いい名前だな。ミュージシャンみたいだ」
「……うん!」

 エイミーの野郎、さっきよりもさらに顔を赤くしてやがる。マジで褒めたわけじゃなく、お世辞に過ぎねぇんだけど……。ったく、さっきから映画スターでも見るような目で俺を見てさ。何を考えてんだか。
 まだ十代に見える彼女の顔を見ながら考えこむ俺。そんなことしてるうちに隊長の話が始まる。

「どうも、お邪魔して悪いね。あたしはメイユー、ボトム・ロックの警備隊で働いてんだ。で、こいつらはあたしの部下。あっちの黒人はダーカーで、こっちの東洋人はクロベーだ。よろしく」

 なぜ俺の名前はクロベーなのか。死んじまった親父が言うには、ずーっと昔のアジアにいた天才軍師の名前を参考にしてつけたってことだが、ホントかよ。嘘くせぇ話だぜ。隊長の話はまだ続く。

「それで、なんだってあんなとこにいたんだい? 何があったのさ」

 灰色のツナギを着てる爺さんが答える。

「俺たちは、戦ってた場所から北東にある街にいたんだがね。ある日、ノーリアの連中が攻めてきて、命からがら逃げてきたんだよ」

 ノーリアってのは、ボトム・ロックの北にある街だ。大したもんのない、しょっぱいところだぜ。まぁそんなんどうでもいいやな、とにかく爺さんの話を聞こう。

「俺たちの街は、別にノーリアと仲が悪かったってわけじゃない。ところで、最近は天気がおかしくて、ろくに農業ができんだろう? おまけに、変な病気でジャガイモがやられちまった」

 ダーカーが答える。

「そのせいで食料不足、よく聞く話だ。ボトム・ロックだって、東の港街と取り引きしているから大丈夫なだけで、食料不足であることに変わりはない」
「そうだろう、そうだろう。そういう事情はノーリアも同じらしくてな。ある日、奴らが言ってきた。食料を寄越せ、さもなくば、戦争してでも奪いとる」
「それを拒否して侵略された……ということか?」
「うむ」

 爺さんは軽くため息をつく、ふぅ……。俺は質問する。

「爺さん、名前は?」
「フレデリック・ムーアだ。街じゃあメカニックをやってた。そこのエイミーとは、まぁなんだ、父親と娘みたいな関係だな。血がつながってるわけじゃなくて、養子として引き取ったんだ」
「へぇ……」

 何やら複雑な事情だな。深入りしないほうが良さそうだ。俺は素早く視線をそらし、爺さんの横にいる若い白人女性に注意を向ける。かなりの美人さんだ、ロングの黒髪がよく似合ってるぜ。

「フレデリックさんの隣の、えぇと、あなたはどういう……」
「私はキャサリン、フレデリックお爺ちゃんの孫です。もしよければ、ケイトと呼んでください」
「了解です」

 ケイトさんはにこりと微笑う。実にいい笑顔だ、やべぇ、ちょっと好みかも。鼻の下が伸びそうになるぜ。そんな俺を軽くにらみながら、隊長が新たな話を切り出す。

「それで、あんた達、これからどうすんだい? フレデリックさん、何か考えでもあるのかい?」
「ひとまずボトム・ロックに落ち着いて、まぁ、そこでゆっくり考えるつもりさ」
「ふーん……」

 隊長は爺さんたちを軽く見回す。うん? 何を考えてんだ?

「ボトム・ロックはさ、いつだって人手不足なんだ。特に、ヘリエン乗りやメカニックはね。どうだい、あんた達。あたしらと一緒に警備隊で働くってのは?」
「悪い考えじゃないと思うが、後で返事させてくれんか。今は疲れているし、とにかく休みたい」
「よし、了解。でも、疲れてるとこ悪いんだけどね。街についたら会議をするから、それに参加してもらうよ」
「会議?」
「ノーリアが攻めてきたって話、あたしらにとっても無関係なことじゃない。あんた達からもっと詳しい話を聞いて、事と次第によっちゃあ、ノーリアと戦争する覚悟をしなくちゃならない」
「なるほどな」
「まったく、三次大戦で世界がぶっ壊れたってのに、人間は相変わらず戦争が好きなんだから……」

 隊長はそう言ってため息をつく。俺も隊長に同感だ、実にクソッタレな話だと思うぜ、戦争なんてよ。でも、攻めてくるっていうなら身を守らないとな。反撃しなくちゃいけない。



 これから忙しくなりそうな予感がするぜ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

願いを叶えるだけの僕と人形

十四年生
SF
人がいいだけのお人よしの僕が、どういうわけか神様に言われて、人形を背中に背負いながら、滅びたという世界で、自分以外の願いを叶えて歩くことになったそんなお話。

AIRIS

フューク
SF
AIが禁止され、代わりに魔法という技術が開発された2084年 天才的な青年により人間と変わらない見た目を持ち、思考し、行動するロボットが作られた その名はアイリス 法を破った青年と完璧なAIアイリスは何処へ向かっていくのか

呆然自失のアンドロイドドール

ショー・ケン
SF
そのアンドロイドは、いかにも人間らしくなく、~人形みたいね~といわれることもあった、それは記憶を取り戻せなかったから。 ある人間の記憶を持つアンドロイドが人間らしさを取り戻そうともがくものがたり。

ラスト・オブ・文豪

相澤愛美(@アイアイ)
SF
技術の進歩により、AIが小説を書く時代になった。芥川、夏目、川端モデルが開発され、電脳文豪(サイバライター)が小説を出版する様になる。小説好きの菊池栄太郎はある男と出会い、AI小説の危険性を聞き、AIとの小説対決をする事になる。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

髑髏戦記

四季人
SF
 遥か未来──。 従うべき帝国は既に滅び、 開拓と増殖を繰り返すだけの機械と、 それに抗う事が唯一の生存目標になった人類の戦争は、今も続いている。

能力が基本となった世界0

SF
これは、ある場所に向かう道すがら、とある男が子供の頃から組織に入るまでのことを仲間に話す。物語 能力が基本となった世界では語りきれなかった物語

星屑ロボット

ながやん
SF
 青年ヴィル・アセンダントの、久しぶりにして最後の里帰り。死んだ父が残した遺産は、古い古いメイドロボットだった!? 再会が呼ぶ数奇な運命が、彼と妹、たった二人の兄妹を波乱へと導く。そして、地球の命運をも揺るがす大事件へと繋がってゆくのだった!?  西暦2131年、地球。  第四次産業革命後のロボットが活躍するようになった近未来。  そんな時代、あなたの大事な人は……ヒトですか?ヒトとは?  ロゴデザイン:村雲唯円さん

処理中です...