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2、第二王子ジェレミーの想い

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 そこに購買に飲み物を買い足しに行っていた第二王子のジェレミーが走って戻ってくる。

「アデルお姉様、牛乳まだこんなにありましたよ! あっ、兄さん達。またお姉様に絡んでいるのですか!」

 ジェレミーは年こそ二歳下だが、長身の兄のレイモンよりさらに頭一つぶん背が高い学園一の高身長。
 白金ブロンドに青灰色の瞳と、特徴はレイモンに似ているものの、より精悍な顔立ちをしていた。
 その制服の上からでもわかる筋骨隆々の肉体は、叶わぬ兄の婚約者への恋慕を身体を鍛える事で紛らわしてきた結果。
 アデルの想いの分だけ筋肉を育ててきた悲しき大男なのだ。

「ふん、相変わらずお前らは出来ているようだな……この尻軽女がっ!」

 自分の事は棚あげし、仲の良い二人に嫉妬して、言いがかりをつけた上に罵倒せずにはいられないレイモンなのだ。
 そこもアデルは冷静に否定する。

「私とジェレミー殿下は実の姉弟のような仲。何もやましいことはありませんわ」

 はっきり言い切られたジェレミーは内心傷つきつつも、威圧的に兄を見下ろした。

「アデルお姉様への侮辱は、たとえ兄さんでも許しませんよ? 父さんからも、お姉様に無礼な態度を取らないように再三言われているでしょうに」

 言い返せないレイモンは舌打ちして「ふん、行くぞ、エリーザ、ロイド」と仲間を引き連れて去って行った。

「全く、アデルお姉様のような完璧な婚約者をないがしろにするなんて!」

 ジェレミーは憤然とする。
 本気で全てを兼ね揃えた理想の女性であるアデルに文句をつける兄が信じられなかった。
 けぶる金髪、サファイア色の瞳、白鳥のような首とスラリとした肢体、祖母譲りの罪なほどの美貌。
 名門公爵家の娘で王族の血を引く高貴な家柄と血統。
 この貴族の子女が13~18歳まで通う王立学園において、座学も武芸も5年間トップの成績という飛び抜けた優秀さ。
 勤勉にして穏やかな性格で周囲の信任も集め、昨年から生徒会長も勤めている。

 反面、高慢で高飛車などの評判もあるが、それはレイモン達が流した悪口と女子のやっかみのせい。
 声のでかい人間の意見がある程度通るのは世の常。
 それとたとえ性格に難があっても、レイモンとロイド、ついでにジェレミーは、ルックスだけは学園トップ3を争う美形。どうしても女子に敵を作ってしまうのだ。

「いいえ、少しも完璧なんかじゃないわ。私は努力だけが取り柄の凡庸な女なのよ。
 でもありがとうジェレミー。あなたには学園生活の後半の三年間、とても世話になったわね」
「もうお姉様が卒業だなんて、寂しいです」

 ジェレミーは切なく青灰色の瞳を細めた。

 アデルは卒業式の三ヶ月後にレイモンと挙式予定。
 その後は学園生活より憂鬱な夫婦生活の始まりだった。  

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