【完結】君に捧げる異世界ゾンビゲーム

黒塔真実

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第五話「現実はクソだ」と少女は思っていた

Chapter 5、ベッド上での駄目押し実験

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 保はいったんわたしをベッドに下ろし、上着を脱ぎ捨て、ヘッドライトを外して明かりを消した。
 そうして真っ暗になった部屋で、手探りするようにお互いの服を脱がせあう。

「各階の防火扉はちゃんと閉めた?」
「ああ、閉めた……」
「……じゃあ地下の駐車場の……」
「しっ……もう黙れよ……」

 しゃべりかけた唇を唇で塞がれたあと、濃厚な口づけを受けながら、むしり取るように下着を脱がされる――


 数時間後。わたしは「頼むから、いったん休憩させて」と、保の身体の下で懇願するハメになっていた。

「しようがないな」

 保は大きく溜め息をつくとわたしの上からどけ、ごろっとベッドに横になった。
 汗ばんだ肌同士がくっついて気持ち悪かったが、全身が痺れたようになってダルく、保のなすがままに腕枕されて頭を抱き寄せられる。

「……なあ、晶。俺たちって物凄く相性いいよな?」

 保が満足げな深い溜め息をついて言った。

「……」
「こんなに身体も性格もしっくりくる相手は、他にいないと思わないか?」
 
 わたしは正直に答える。

「……まだ、数日しか一緒にいないのに、そんなの分からない……」

 最初に会ったときは一日で別れ、再会してからもまだ四日目だ。

「そうか? こうして抱き合ってるだけで、まさにお前は俺のために作られた女だと感じられるけどな。こんなに一緒にいて退屈しない女は始めてだ……」

 今のところわたしも保といるのは楽しい。
 とりわけ今日のショッピングセンターで味わった高揚感なんかは最高だった。

 それでも一応釘を刺しておく。
 
「あらかじめ言っておくけど、わたし病的に飽きっぽいから」

「それは単に、今まで自分に合う相手と出会わなかっただけじゃないか?」

 たしかにこれまでの彼氏選びは完全にルックス重視だった。

 その結果運悪く異常に独占欲と執着が強い男に当たり、別れたあともストーカーされ、ナイフで襲われた拍子に車に轢かれちゃったわけだが――

 今思えばあの男は別れ際に『いつか、刺されるぞ、晶』と親切にも忠告してくれていた。
 それを『大丈夫、返り討ちにするから』なんて笑って受けたわたしがいけなかったのかも。
 
 とにかく、切れ長の目にきりっとした眉、通った鼻筋と、保はイケメンそのものだが、黒髪や浅黒い肌は、わたしが彼氏に選ぶ基準からは大きく外れている。
 わたしの歴代の彼氏はもっと色素の薄い、ハーフみたいな顔の男ばかりなのだ――そう、青みたいな――

 とはいえ、現在はほぼ選択肢がないし、青を恋人にすると好きなゾンビ狩りができない……。
 
 飽きるまでは保といよう。

「俺が思うに、自分にぴったり合う相手なら、飽きるどころか、だんだんお互いに馴染んで良くなっていくはずだ。現に、初めて俺と寝たときより、二回目、三回目のほうが快感が深かっただろう?」

 それは単に相手の身体の「いい部分」が分かるようになっただけでは?
 そう思ったが、急に襲ってきた睡魔に頭がぼーっとして、無意識に別の言葉が口から出ていた。

「……相手を好きになるのに、そんなの関係ない……」

 むしろ自分と違い過ぎるから、わたしはより映に惹かれていった気がする。

「って、おい! 晶、なにお前、目をつぶってんだ? まだ寝るのは早いぞ!」
「ごめん、もう眠くて無理。続きは好きにやって」
「ちょっと、待てよ」

 呼び止める保の声を遠くに聞きながら、わたしは四年前の、映との出会いを思い出していた――
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