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第四話「こんなゾンビだらけの世界なんてもう沢山だ!」と彼はわたしに銃口を向けた

Chapter 6、翌朝の異変と突きつけられた銃口

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 翌朝、わたしが目覚めたときには、すでに怜は長袖のシャツとジーンズ姿だった。昨日のショックのせいで眠れなかったのか異様に顔色が悪い。

「おはよう、晶」
「早いのね」
「……ああ……」

 怜は何か言いたげな表情でじっとわたしを見つめたあと、「下でコーヒーを入れてくる」とかすれ声で言って、自室を出ていった。

 わたしも着替えを取りに自分の部屋に戻ることにした。

 と、入室してすぐに開きっぱなしの窓から、ざわざわとした音が流れてくる。
 近寄って、窓を閉めるついでに地上を見下ろすと、そこには、かつてないほどの衝撃の光景が広がっていたーー

 ゾンビ、ゾンビ、ゾンビ……(略)、庭から通りまで埋め尽くす大量のゾンビが、この家に群がるようにひしめきあっていたのだ。
 しかも壁のところで団子になったゾンビが、どんどん上へ上へとおり重なってる。
 ゾンビの上にさらにゾンビが乗ってと、そのゾンビの山はどんどん高さを増しーーこのペースだと二階のベランダに到達するのも時間の問題。

「怜! 大変よ」

 叫びながら二階のリビングに駆け込むと、なぜか怜はコーヒーも入れず、キッチンにボーッとつっ立っていた。
 わたしが外を見るように急かすとようやく動きだし、ベランダに出た怜は、うわっと、声をあげる。「なんだ、これは!」

「見ての通りゾンビの群れの襲来みたい。とても銃で撃ち切れる数じゃないし、この先ゾンビの波が引く保証はないから、いったんここから避難したほうがいいかも!」

 一階の窓は全部鉄板で塞いであるが、二階と三階の窓はそのままだった。しかしたとえ窓を全部補強したところで、ゾンビがもっと押し寄せてくれば建物から出るのが不可能になり、餓死は避けられない。

「あははははははは」

 わたしの提案を黙って聞いていた怜が、突如、喉をのけぞらせて狂ったように笑いだす。

「なんだよ、このゾンビの数! 緑が連れてきたのか? 傑作じゃないか、はははははははははははははっ!!」

 ここにきてついに精神が壊れてしまったのだろうか?  
 正気を疑いながら見てると怜は急に笑いをおさめ、キッチンに戻って机上の銃をひっ掴み、わたしを振り返る。 

「ーーなあ、晶、逃げるっていったいどこにだ? この世界はどこまでいってもゾンビだらけじゃないか。……もう詰んでいるし、あがくのも疲れただろう? いっそここで終わりにしたほうが楽なんじゃないか?」 

 怜は血走った目で問いかけながら、ぶるぶると震える銃口をわたしに向ける。

「なっーー!?」

 なに勝手なことを言っちゃってるの!?
 同意を求められても、まったく、そうは思わないし!

 だけど、ここで下手なことを言うと大惨事に繋がる。

 ーー緊迫した空気のなか、わたしはかけるべき言葉を探して、しばし怜と見つめ合ったーー

 しかし、ついに時間切れだというように、怜が逆上の雄叫びをあげる。

「なんの希望もない、こんなゾンビだらけの世界なんてもう沢山だ!!」
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