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第四話「こんなゾンビだらけの世界なんてもう沢山だ!」と彼はわたしに銃口を向けた
Chapter 2、四人での新生活開始・2週間後
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そうして四人での共同生活が始まって二週間後。
わたしは今日も銃を構え、ゾンビを撃ち殺しまくっていた。
二階のベランダに怜と並んで立ち、二人で住宅街の路地を行き交うゾンビを狙って、ひたすら撃って、撃って、撃ちまくる。
「相変わらず、晶はまったく的を外さないな」
「怜だってそうじゃない」
「俺は元から銃が趣味だったから」
多趣味で手先が器用な怜は、弾も自分で火薬を詰めて作っているほどだった。
材料のストックはまだ大量にあるらしいので、弾切れを心配せず、毎日存分にゾンビを撃ちまくれる。
楽しい~♪
「ねぇ、二人とも、みぃくんは緑色のジャケットと色の薄いジーパン姿だから、撃たないように気をつけてね!」
うしろから巨体を寄せ、緑が必死な声で訴えてくる。
なんでも彼女はここの近くのBarで飲んだ帰りに、ゾンビに襲われて彼氏とはぐれたらしい。
毎日ここか三階の個室で、暇さえあれば家の前の通りを見下ろし「みぃくん」探しをしている。
いったん銃を撃つのを止め、深く溜め息をついた怜は、端正な顔に苦渋を滲ませて告げた。
「緑、何回も言ってるけど、通りかかったら彼氏であっても、ゾンビになっていたら撃つからな?」
「そんなのっ、いくら言われても納得できない、ゾンビになっても、みぃくんはみぃくんだもの!」
「納得できなかろうと、ゾンビになった時点で人格も意志もない。本能のまま人を襲うような存在は、一体残らずこの世界から駆除しなくてはいけない」
すでに怜と緑のこのやり取りも日々の恒例行事と化していた。
「……一体残らずなんて無理だよ……世界中がゾンビで溢れ返っているんだから……」
ベランダ近くのソファに座る圭が、暗い呟きを漏らす。
わたしの一歳下で20歳の圭は中性的な美形で、外見だけなら割と好みなのに、極度に悲観的な残念な性格。この通り口を開いても気が滅入る発言しかしない。
「世界中が無理でも、せめてこの地域だけでもゾンビを一掃して、人間が歩ける状態にしたい」
苛立った声で言うと怜は銃を下ろし、緑を押しのけてわたしの顔を見た。
「――晶、そろそろ疲れただろう? 夕食まで休憩しよう。緑も中に入って」
このRC造の住宅は元々怜の自宅で、一階は玄関と風呂と倉庫とガレージ、二階がキッチンと続きのリビングとトイレ、三階に個室が並んでいる。
わたしは三階にある緑との相部屋に戻ると、乾電池式の充電器を外してスマホを取った。
緑は窓辺の椅子に座り、下の通りを観察しながら爪の手入れをしている。短いわたしの爪と違い、ネイルが施された凶器のように尖った爪だった。
太ってはいても、彼女はかなりお洒落に気を使っている女子なのだ。
「みぃくん今日も通らないなぁ。もう少しゾンビの数が減ったら外に探しにいくんだけど。あっ、その時は護衛してね晶ちゃん」
「うん、いいよ」
わたしは軽い調子で答える。
ベランダからよりも野外でゾンビを撃つほうが楽しいに決まっている。
「わたし、銃を撃つの苦手なんだよね。でも怜さんは、いざって時のために練習しろって言うんだ……。みぃくんなら絶対、緑は俺が守るって言ってくれるのに」
緑の頭の中はつねに彼氏一色で、話題をなんでもみぃくんに繋げる。
「そうだろうね」
わたしは適当に相槌を打つと、さっさと廊下へでた。緑と同じ空間にいる限り、みぃくん話につきあわされるからだ。
わたしは今日も銃を構え、ゾンビを撃ち殺しまくっていた。
二階のベランダに怜と並んで立ち、二人で住宅街の路地を行き交うゾンビを狙って、ひたすら撃って、撃って、撃ちまくる。
「相変わらず、晶はまったく的を外さないな」
「怜だってそうじゃない」
「俺は元から銃が趣味だったから」
多趣味で手先が器用な怜は、弾も自分で火薬を詰めて作っているほどだった。
材料のストックはまだ大量にあるらしいので、弾切れを心配せず、毎日存分にゾンビを撃ちまくれる。
楽しい~♪
「ねぇ、二人とも、みぃくんは緑色のジャケットと色の薄いジーパン姿だから、撃たないように気をつけてね!」
うしろから巨体を寄せ、緑が必死な声で訴えてくる。
なんでも彼女はここの近くのBarで飲んだ帰りに、ゾンビに襲われて彼氏とはぐれたらしい。
毎日ここか三階の個室で、暇さえあれば家の前の通りを見下ろし「みぃくん」探しをしている。
いったん銃を撃つのを止め、深く溜め息をついた怜は、端正な顔に苦渋を滲ませて告げた。
「緑、何回も言ってるけど、通りかかったら彼氏であっても、ゾンビになっていたら撃つからな?」
「そんなのっ、いくら言われても納得できない、ゾンビになっても、みぃくんはみぃくんだもの!」
「納得できなかろうと、ゾンビになった時点で人格も意志もない。本能のまま人を襲うような存在は、一体残らずこの世界から駆除しなくてはいけない」
すでに怜と緑のこのやり取りも日々の恒例行事と化していた。
「……一体残らずなんて無理だよ……世界中がゾンビで溢れ返っているんだから……」
ベランダ近くのソファに座る圭が、暗い呟きを漏らす。
わたしの一歳下で20歳の圭は中性的な美形で、外見だけなら割と好みなのに、極度に悲観的な残念な性格。この通り口を開いても気が滅入る発言しかしない。
「世界中が無理でも、せめてこの地域だけでもゾンビを一掃して、人間が歩ける状態にしたい」
苛立った声で言うと怜は銃を下ろし、緑を押しのけてわたしの顔を見た。
「――晶、そろそろ疲れただろう? 夕食まで休憩しよう。緑も中に入って」
このRC造の住宅は元々怜の自宅で、一階は玄関と風呂と倉庫とガレージ、二階がキッチンと続きのリビングとトイレ、三階に個室が並んでいる。
わたしは三階にある緑との相部屋に戻ると、乾電池式の充電器を外してスマホを取った。
緑は窓辺の椅子に座り、下の通りを観察しながら爪の手入れをしている。短いわたしの爪と違い、ネイルが施された凶器のように尖った爪だった。
太ってはいても、彼女はかなりお洒落に気を使っている女子なのだ。
「みぃくん今日も通らないなぁ。もう少しゾンビの数が減ったら外に探しにいくんだけど。あっ、その時は護衛してね晶ちゃん」
「うん、いいよ」
わたしは軽い調子で答える。
ベランダからよりも野外でゾンビを撃つほうが楽しいに決まっている。
「わたし、銃を撃つの苦手なんだよね。でも怜さんは、いざって時のために練習しろって言うんだ……。みぃくんなら絶対、緑は俺が守るって言ってくれるのに」
緑の頭の中はつねに彼氏一色で、話題をなんでもみぃくんに繋げる。
「そうだろうね」
わたしは適当に相槌を打つと、さっさと廊下へでた。緑と同じ空間にいる限り、みぃくん話につきあわされるからだ。
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