上 下
10 / 36
第三話「ゾンビゲームを姫プレイするだなんて邪道過ぎる!」

Chapter3、身体での支払いと翌朝の食堂

しおりを挟む
「保は、姫の逆ハーレムメンバーに加わらないの?」

 二階にあるダブルルームに入ると、保と並んでベッドに腰かけながら尋ねる。
 他の四人は三階の同室を利用しているらしい。
 保は鼻を鳴らした。

「俺はオタサーのメンバーじゃないし、姫って服装は可愛いけど、よく見ると顔はブスなんだよな」
「……手厳しいのね」
「前にも言ったけど晶は俺の好みだ――ってことで、ベッドの上で再会を祝おうぜ、もちろん裸で」
 
「そうね」わたしはいったん言葉を受けてから尋ねる。「あんたショットガンとマグナムの弾持ってる?」
 


 翌朝、一晩かけて身体で支払いを終えたわたしは、全裸のまま受け取った弾薬の整理をしていた。
 これで当座は弾切れしなくて済みそうだ。
 傍らのベッドに同じく全裸で横たわる保が、長い溜め息をついて言った。
 
「なぁっ晶、頼むから俺以外とこういう取引するなよ」
「なにそれ?」

 冷笑しながら弾をナップザックに仕舞っていると、部屋の扉がいきなり開く。

「保くぅ~ん、朝食できたよっ」

 甘ったるい声をあげて顔をだした姫は、直後、全裸のわたし達を見て口を両手で押さえて固まる。

「ああ、今行く」

 保が平然と答えると、姫は逃げるようにドアを閉めて去っていった。
 


 数分後、着衣して三階の食堂に向かうと、なにやら男性陣に相談している姫の声が聞こえた。

「やっぱり姫みたいな子供っぽい女より、晶さんみたいな落ち着いた人のほうが魅力的なのかなぁ?」

「そんなことないよ、姫のほうが断然、魅力的だし可愛いって」
「うん、うん、勝負にもならない」
「あっちを選ぶなんて相当趣味が悪いよ」

 思い切り聞こえているちゅーの。

 保と並んで食堂へ入っていくと、すでにわたし達以外全員着席していて、空いている席は姫の隣か男二人の間のみ。 
 姫が席を立って手招きする。
 
「保くぅん、ここの席空いてるよっ」

「いや、俺、こっちでいいわ」

 保はあえて男二人に挟まれた席を選択した。

「そうっ……」

 姫はわざとらしくしょんぼり顔をしたあと、すぐに気を取り直したように笑顔になる。

「ねぇっ、みんなっ、今日はなにして過ごそっか?」
「姫に任せるよ」
「うんうん」
「姫のしたいことをみんなでしよう」
「きゃうんっ、みんな優しい」

 きゃうんっ、とかいう人間本当にいるんだ。
 妙な感心をしつつ、わたしは炊きたてのご飯に梅干し乗せ、高野豆腐入りのみそ汁をすすった。

 ちやほやされている姫を見ながら簡素なメニューを食べていると、最初に食事を終えたらしい眼鏡くんが席を立った。

「見回りに行くよ」

 わたしも長居は無用とばかりに、食後さっさと客室へ戻ることにした。
 保となぜか姫もあとからついてくる。

「ねぇっ、保くぅん、ちょっと相談したいことがあるんだけど……」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

政府主催100%運任せのデスゲーム

蓮實長治
ホラー
大丈夫、法的には「死」でも、生物学的にはビミョ〜で、もし「負け」ても国の役に立つ事が出来ますので。 「なろう」「カクヨム」「アルファポリス」「pixiv」「Novel Days」「ノベリズム」「GALLERIA」「ノベルアップ+」に同じモノを投稿しています。

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

401号室

ツヨシ
ホラー
その部屋は人が死ぬ

木の下闇(全9話・20,000字)

源公子
ホラー
神代から続く、ケヤキを御神木と仰ぐ大槻家の長男冬樹が死んだ。「樹の影に喰われた」と珠子の祖母で当主の栄は言う。影が人を喰うとは何なのか。取り残された妹の珠子は戸惑い恐れた……。

妊娠条令

あらら
ホラー
少子高齢化社会の中で政治家達は妊娠条令執行を強行する。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

飢餓

すなみ やかり
ホラー
幼い頃、少年はすべてを耐えた。両親は借金の重圧に耐え切れず命をとうとしたが、医師に絶命された少年にはその後苦難が待っていた。盗みに手を染めてもなお、生きることの代償は重すぎた。 追い詰められた彼が選んだ最後の手段とは――「食べること」。 飢えと孤独がもたらした行為の果てに、少年は何を見出すのか___…

処理中です...