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第一話「君は人の脳髄や腸を見たいと思うかい?」
Chapter 2、給湯室での情事
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二人っきりになったとたん、保はがばっとわたしに抱きついて顔を近づけてきた。
「晶、お前ってけっこう綺麗な顔してるよな」
保こそ近くで見るとなかなかのイケメンだなとは思いつつ、わたしは迫ってくる唇を四本指で防いで押し返す。
「なんだよっ」
「悪いけど、初対面なのにキスなんてしたくないわ」
「これからキス以上のことするのにか? ずいぶんとサービスが悪いな」
不服そうに言われてもしたくないものはしたくない。
「それより、コンドームは?」
「……ちっ」
しぶしぶ保が内ポケットから出したコンドームを受け取ると、
「保も脱いで」
促しながら、デニムのショートパンツをショーツごと脱ぎ落とす。
それから背後のテーブルの上にお尻を乗せて、誘うように脚を広げてみせた。
「来て」
「お前、なんだか慣れてて怖い」
「ふっ」
鼻で笑ってから、寄せてきた保の腰に両脚を絡めて、敏感な部分同士を擦り合わせる。
「くそっ、久しぶりだからっ……まずいかも……」
入れる前から保は切なげに精悍な顔を歪めた――
3分後。
「本当にさっさと終わらせてくれてありがとう」
「なんかスゲー屈辱的な表現だな」
わたしたちは再び事務所へと戻ってきた。
保が「ちょっとトイレ」と廊下へと引っ込んだとたん、圭が俯けていた顔を上げ、非難がましい目を向けてくる。
「寝たんだ……食べ物のために……」
「そうよ、悪い? ほら、あんたも食べなさいよ」
言いながらわたしは入手したばかりの固形栄養食品を放り投げた。
ところが圭に思い切り手の甲で払い飛ばされ、
「いらないよっ、こんなもの!」
あきらかに怒った顔を向けられた。
しかし恋人でもないのに責められる筋合いはない。
溜め息したわたしは床から固形食品を拾い上げ、ナップザックから雨水の入ったペットボトルを取りだし、給湯室へ戻った。
コーヒーを入れるため、プロパンガスのガスコンロにヤカンを乗せて沸騰するのを待っていると、いきなり背後から身体を抱きしめられる。
「なあ、アキラ、あんな情けないヤツ止めて、俺の女になれよ」
耳元で荒い息使いと保の声がした。
「……離してくれない?」
「お前の身体が気に入ったし、顔と、特に気が強いところが俺の好みなんだよな」
「悪いけどあんたは全然わたしのタイプじゃないわ」
「そう言うなよ」
――そんな、やり取りをしていたときだった――
「保っ! 大変だ、大量のゾンビがこっちに押し寄せてくる!」
見張りの一人が叫びながら階段を転がるように降りてきた。
「晶、お前ってけっこう綺麗な顔してるよな」
保こそ近くで見るとなかなかのイケメンだなとは思いつつ、わたしは迫ってくる唇を四本指で防いで押し返す。
「なんだよっ」
「悪いけど、初対面なのにキスなんてしたくないわ」
「これからキス以上のことするのにか? ずいぶんとサービスが悪いな」
不服そうに言われてもしたくないものはしたくない。
「それより、コンドームは?」
「……ちっ」
しぶしぶ保が内ポケットから出したコンドームを受け取ると、
「保も脱いで」
促しながら、デニムのショートパンツをショーツごと脱ぎ落とす。
それから背後のテーブルの上にお尻を乗せて、誘うように脚を広げてみせた。
「来て」
「お前、なんだか慣れてて怖い」
「ふっ」
鼻で笑ってから、寄せてきた保の腰に両脚を絡めて、敏感な部分同士を擦り合わせる。
「くそっ、久しぶりだからっ……まずいかも……」
入れる前から保は切なげに精悍な顔を歪めた――
3分後。
「本当にさっさと終わらせてくれてありがとう」
「なんかスゲー屈辱的な表現だな」
わたしたちは再び事務所へと戻ってきた。
保が「ちょっとトイレ」と廊下へと引っ込んだとたん、圭が俯けていた顔を上げ、非難がましい目を向けてくる。
「寝たんだ……食べ物のために……」
「そうよ、悪い? ほら、あんたも食べなさいよ」
言いながらわたしは入手したばかりの固形栄養食品を放り投げた。
ところが圭に思い切り手の甲で払い飛ばされ、
「いらないよっ、こんなもの!」
あきらかに怒った顔を向けられた。
しかし恋人でもないのに責められる筋合いはない。
溜め息したわたしは床から固形食品を拾い上げ、ナップザックから雨水の入ったペットボトルを取りだし、給湯室へ戻った。
コーヒーを入れるため、プロパンガスのガスコンロにヤカンを乗せて沸騰するのを待っていると、いきなり背後から身体を抱きしめられる。
「なあ、アキラ、あんな情けないヤツ止めて、俺の女になれよ」
耳元で荒い息使いと保の声がした。
「……離してくれない?」
「お前の身体が気に入ったし、顔と、特に気が強いところが俺の好みなんだよな」
「悪いけどあんたは全然わたしのタイプじゃないわ」
「そう言うなよ」
――そんな、やり取りをしていたときだった――
「保っ! 大変だ、大量のゾンビがこっちに押し寄せてくる!」
見張りの一人が叫びながら階段を転がるように降りてきた。
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