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第五章
お兄様への相談
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「えっ……そっそれは……!?」
私が無理だと答えようとしたのを察したようにコーデリア姫が遮る。
「できないとか、無理とか言う言葉はいっさい聞きたくないわ。
やれるかどうかじゃない、やるのよ!
差し当たっては、エルファンスに相談してみてちょうだい。
こうなったのは、元々二人のせいでもあるんだから」
強く私に言い含めるようにしてから、コーデリア姫は人を呼ぶためにベルを鳴らした。
一時間後、部屋に備えつけのお風呂に入ってすっきりした私は、下着姿でベッドに座り、じっとエルファンス兄様の様子を伺っていた。
お兄様に相談してみろってコーデリア姫は言っていたけど、口に出したとたん怒られそう。
そんなことを考えながらじっと見つめていると、服をたたみ終わったお兄様は、いきなり私に抱きついてベッドに倒れ込んだ。
「きゃっ」
ランプの灯りを受けて銀髪が煌き、深い青の瞳から熱っぽい眼差しが降ってくる。
「そんな可愛い顔でずっと見つめて、俺を誘っていたんだろう?」
「違っ……んっ、んっ……」
否定の言葉を言いかけたとたん、唇を唇で塞がれ、舌をねっとりと絡めた濃厚なキスを受けながら、下着の中に手を入れられる。
これまでの経験によると、こういう状態になったエルファンス兄様と、一度として会話が成り立ったことがない。
私はいったん相談を諦め、目を瞑り、素直に身を任せることにした。
「今夜もたっぷり可愛がってやるからな……」
「んっ……っ……」
幸い激しいキスと愛撫に、あっという間に頭の芯が痺れて来て、憂鬱な役目のこともどこかへと飛んでいった……。
――エルファンス兄様に繰り返し抱かれているうちに、いつの間にか意識を失ってしまったらしい。
ふっと意識を浮かび上がらせると――ランプは消されていて、部屋の中は月明かりで青白く照らされていた。
優しい手つきで髪を撫でられている気配に、エルファンス兄様が起きていることが分かる。
「……お兄……様?」
身じろぎしながら呼んでみると、
「目を覚ましたのか? ……フィー」
いかにも満足そうな穏やかなエルファンス兄様の声が返ってきた。
かなり機嫌が良さそうだ。
ひょっとしてこの様子なら、今なら怒らないで話を聞いてくれるかもしれない。
甘い期待を抱きつつ、話すだけ話して楽になりたかった私は、ゴクリと唾を飲み込み、口を開いた。
「……あのね……リナリー姫の手紙に書いてあったんだけど……、今の彼女は私の遺体を発見して、相当ショックを受けているみたいなの……」
「ああ、ブロリーの姫か……そういえばなぜか現場にいたな」
お兄様の指は会話しながらも絶え間なく私の髪を撫で続けている。
ここから上手く怒らせないように話を繋げていくしかない。
「そ、それでね……コーデリア姫に頼みごとをされてしまって……」
問い返すまでに少し間があった。
「……どんな頼みだ?」
「ガウス帝国に行って、リナリー姫を慰めて来て欲しいって」
思い切って言うと、ぴくりと反応して、髪を撫でるお兄様の手が止まった。
その時、開いていた窓からスーっと夜明けの明かりが差し込んでくる。
「ガウス帝国に?」
「うん……勿論私は断ったんだけど……お兄様に相談だけでもしてみてくれって……コーデリア姫が……!」
「……」
話しているうちに薄闇の中に見えるエルファンス兄様の顔が、みるみる鋭く、険しい表情になっていくのが見え、それに応じて、台詞は途中から言い訳になってしまった。
やっぱり怒らせてしまった!
「ごめんなさい!」
私は恐ろしくなって逃げるように布団の中に潜りこんだ。
私が無理だと答えようとしたのを察したようにコーデリア姫が遮る。
「できないとか、無理とか言う言葉はいっさい聞きたくないわ。
やれるかどうかじゃない、やるのよ!
差し当たっては、エルファンスに相談してみてちょうだい。
こうなったのは、元々二人のせいでもあるんだから」
強く私に言い含めるようにしてから、コーデリア姫は人を呼ぶためにベルを鳴らした。
一時間後、部屋に備えつけのお風呂に入ってすっきりした私は、下着姿でベッドに座り、じっとエルファンス兄様の様子を伺っていた。
お兄様に相談してみろってコーデリア姫は言っていたけど、口に出したとたん怒られそう。
そんなことを考えながらじっと見つめていると、服をたたみ終わったお兄様は、いきなり私に抱きついてベッドに倒れ込んだ。
「きゃっ」
ランプの灯りを受けて銀髪が煌き、深い青の瞳から熱っぽい眼差しが降ってくる。
「そんな可愛い顔でずっと見つめて、俺を誘っていたんだろう?」
「違っ……んっ、んっ……」
否定の言葉を言いかけたとたん、唇を唇で塞がれ、舌をねっとりと絡めた濃厚なキスを受けながら、下着の中に手を入れられる。
これまでの経験によると、こういう状態になったエルファンス兄様と、一度として会話が成り立ったことがない。
私はいったん相談を諦め、目を瞑り、素直に身を任せることにした。
「今夜もたっぷり可愛がってやるからな……」
「んっ……っ……」
幸い激しいキスと愛撫に、あっという間に頭の芯が痺れて来て、憂鬱な役目のこともどこかへと飛んでいった……。
――エルファンス兄様に繰り返し抱かれているうちに、いつの間にか意識を失ってしまったらしい。
ふっと意識を浮かび上がらせると――ランプは消されていて、部屋の中は月明かりで青白く照らされていた。
優しい手つきで髪を撫でられている気配に、エルファンス兄様が起きていることが分かる。
「……お兄……様?」
身じろぎしながら呼んでみると、
「目を覚ましたのか? ……フィー」
いかにも満足そうな穏やかなエルファンス兄様の声が返ってきた。
かなり機嫌が良さそうだ。
ひょっとしてこの様子なら、今なら怒らないで話を聞いてくれるかもしれない。
甘い期待を抱きつつ、話すだけ話して楽になりたかった私は、ゴクリと唾を飲み込み、口を開いた。
「……あのね……リナリー姫の手紙に書いてあったんだけど……、今の彼女は私の遺体を発見して、相当ショックを受けているみたいなの……」
「ああ、ブロリーの姫か……そういえばなぜか現場にいたな」
お兄様の指は会話しながらも絶え間なく私の髪を撫で続けている。
ここから上手く怒らせないように話を繋げていくしかない。
「そ、それでね……コーデリア姫に頼みごとをされてしまって……」
問い返すまでに少し間があった。
「……どんな頼みだ?」
「ガウス帝国に行って、リナリー姫を慰めて来て欲しいって」
思い切って言うと、ぴくりと反応して、髪を撫でるお兄様の手が止まった。
その時、開いていた窓からスーっと夜明けの明かりが差し込んでくる。
「ガウス帝国に?」
「うん……勿論私は断ったんだけど……お兄様に相談だけでもしてみてくれって……コーデリア姫が……!」
「……」
話しているうちに薄闇の中に見えるエルファンス兄様の顔が、みるみる鋭く、険しい表情になっていくのが見え、それに応じて、台詞は途中から言い訳になってしまった。
やっぱり怒らせてしまった!
「ごめんなさい!」
私は恐ろしくなって逃げるように布団の中に潜りこんだ。
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