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第五章

パジャマ・パーティー(後)

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「カークが嫌がっても挙式を挙げてしまうの」

「逃げたりしないかしら?」

「そこは軟禁状態して監視をつけて……」

「ううーん。自分がもしカークの立場だとしたら、無理矢理だなんて絶対に嫌かも……」

 強引にアーウィンと挙式をあげさせられそうになって逃げてきた身としては、心情的に賛成出来そうにない。

「そうね、挙式後ずっと見張っているわけにはいかないし、間違いなく夫婦生活は地獄のようになるわよね。
 はぁ……するともう、婚約を白紙に戻すしかないじゃない……キルアス攻略に変えた方がいいかしら?」

 両手で頭を抱えだした姫に向かい、私は自分の考えを言った。

「キルアスに関しては、今のコーデリア姫のままでばっちりだと思う。
 キルアス編は一緒に馬を並べて戦うシーンもあるし、彼はリナリーの勇気に惹かれたという部分があるから、勇ましいコーデリア姫にはぴったりの相手かも」

「なるほどねー、今の話をまとめると、カークには『骨があるところを見せる』、キルアスには『勇気を示す』が攻略の鍵ってことね。
 そういえばリナリーから聞いたんだけど、隠し解放キャラであるキルアス編のストーリーって独特みたいね。
 今のキルアスを見ていると想像もつかないけれど……最後は平原を統一して国家を打ち立てるんでしょう?
 新しい帝国が誕生し、五カ国同盟になって、ガウス帝国とのバランスで勝るようになるって聞いたわ。
 実現したらかなり帝国の脅威が減らせるけど、平原統一ストーリーはリナリーが発端で起こるらしいから、今のままだと実現しないのね。
 歴史は複雑な糸が絡み合って出来るものだから、一つの選択の違いで全てが変わってしまう……戦争回避に挑むか、バランスを整えて恒常的な平和を考えるか……難しいところよね」

 複雑な糸が絡み合うか……因果関係を考えるだけで頭が痛くなりそうだ。

「……うーん、たしかに……」

「とにかく、本国に戻ったら、一度カークとの婚約を白紙に戻すことを検討するわ。
 ロイズ城にはリナリーからの手紙も届いているはずだから、それを確認して、内容次第ではリナリーの恋に協力するために、ガウス帝国に直行しましょう。
 もしもリナリーの恋愛が順調で協力が必要なさそうなら、キルアスとともに平原統一ストーリーに挑むのがいいかもしれないわね。
 その前にリナリーを交えて今後の方針をじっくり相談したい気もするので、一度ガウス帝国に寄って、三人でパジャマ・パーティー出来るといいんだけど、あなたは出来るなら帰りたくないみたいだし……」

 ものすごーく帝国に行くのは気が進まないけれど、三人でパジャマ・パーティーというのは楽しそう。

 ふとそこで気になった。

「リナリー姫ってどんな人なの?」

 コーデリア姫は唇に指をあて、うーんと唸る。

「どんなと訊かれても、リナリーの性格はやや複雑で、一言では言い表せないのよね……。
 特徴としては芝居がかった話し方が多く、物の考え方は悲観的。
 少し行動パターンが読めないところがあって、思いこみが激しいタイプかしら」

 説明を聞いても漠然としていていまいちイメージが沸かない。

「仲良くなれるといいなぁ……」

「アーウィン狙いの誤解さえ解ければ大丈夫なんじゃないの?
 ――ガウス帝国に行く前のリナリーは、自国の攻略キャラが二人が格好良すぎて困ると……日々、苦悩していたわ。
 もしもアーウィンとうまくいったら、その苦しみからも解放されるだろうし、協力すれば確実にあなたに感謝するはずよ」

 感謝か……リナリーと仲良くなりたいし、帝国に行くことがあったら頑張ろう。


 ――そんな調子で、コーデリア姫と私の相談は延々と続き、夢中で話し込んでいる間に、気がつくと朝方近くになっていた。
 そろそろ会話疲れと眠気が限界になり、もう寝ようかな、という雰囲気になってきた頃――

 突然、どんどんと扉を叩く音がして、「フィー!」と、廊下から名前を激しく呼ばれた。
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