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第四章
星の瞬き
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街道を走っている間に正午になり、農村部で馬を停めて食事休憩することになった。
敷物の上に皆で座って、宿屋に用意して貰った昼食を頂く。
視界に広がる一面黄金色の麦畑では、多くの農民達が腰をかがめて刈り取り作業をしていた。
大きな子供達は親を手伝い、小さな子供達は走り回っている。
そんなのどかな光景をサファイア色の瞳で眺めつつ、輝く金色の巻き髪を風に揺らしながらコーデリア姫が呟く。
「この平和を守りたいものね」
水色のドレスを纏ったその優雅な座り姿は、男性なら誰もが魅了されそう美しさだった。
「そうですね、コーデリア姫」
少しまぶしそうに瞳を細め、キルアスも頷く。
「平和とか大げさだな。ありふれた景色じゃないか」
カークはチーズを乗せパンを頬張りながら捻くれた口をきいた。
「カーク、それは違うわ。何気ない風景や日常こそ平和や人の幸せがあるのよ。そしてそれは当たり前に与えられて続いていくものじゃない。守らないと脆くも崩れさっていくものなのよ」
コーデリア姫の言葉には重みがあった。
もしかしたら前世で色々苦労したのかもしれない。
その後のカークはむすっとして、食事中終始無言だった。
なぜ彼はいつも、コーデリア姫の前では態度が悪いのだろう?
朝と同様にお兄様に口に食べ物をつっこまれながら、私はふと疑問に思った。
昼食を終え再出発した馬上で、揺られているうちに私は眠気におぼえる。
しかしうたた寝しかけるたびに、エルファンス兄様に声をかけられ、キスを要求されてしまう。
何度も何度もお兄様に口づけしたけど、キルアスやクラウスはもちろん、カークでさえ最早コメントして来なかった。
バルモア砦に到着したのは、日がすっかり落ちて暗くなった頃。
詰めていた騎士達に出迎えられ、内部へと通された私達は、遅い夕食後、それぞれの部屋へと案内される。
私とエルファンス兄様も案内役の兵士に先導され、長い階段を上った先の石造りの部屋へと通された。
子供の頃から高い所が大好きな私は、部屋に入るなり窓辺へと向かう。
木戸を押し開くと高い視界から、星空の下に鬱蒼とした森と草原が広がってる景色が見えた。
思わず見上げた降るような満天の星に、懐かしくも愛しい人の面影が映り、胸が切なく痛む――
「フィー」
ぼんやり眺めていると、いつの間にか隣に並んでいたエルファンス兄様に肩を抱き寄せられた。
「お兄様……」
「外を見ているのか?」
「うん、見て、星が綺麗」
「ああ……そうだな……綺麗だな」
思いを込めるようにそう呟いたお兄様は、しかし星空なんか見ていなかった。
あの日のセイレム様のように、やはり私の瞳を覗き込んでいたのだ。
愛情が滲むその瞳を見返したとたん、胸が熱くなって震え、目頭が熱くなる。
そんな私を見下ろし、エルファンス兄様が不思議そうに問う。
「なぜ泣いている?」
私は泣き笑いで答える。
「幸せ過ぎて……お兄様とこうしていられるのが……」
「そうか……そうだな……幸せだな」
さらに肩を抱く手に力を込めながらエルファンス兄様も深く頷く。
私は昼間のコーデリア姫の言葉を思い出しながら、この幸せな時間を守りたいと心から思った。
二人で身を寄せ、しばらく無言で夜空を眺めたあと、おもむろにエルファンス兄様が移動を促す。
「身体が冷えてきた……ベッドへ入ろう」
「うん」
ベッドに横になると、夜風に当たって冷えた身体を温めるようにエルファンス兄様の身体が重なってきた。
「フィー……愛している……」
「……うん……」
自然に唇を重ね合い、お互いの舌を絡め合いながら、今夜もお兄様に抱かれるんだ……と、思うと、胸がどきどきしてきて息苦しくなった。
敷物の上に皆で座って、宿屋に用意して貰った昼食を頂く。
視界に広がる一面黄金色の麦畑では、多くの農民達が腰をかがめて刈り取り作業をしていた。
大きな子供達は親を手伝い、小さな子供達は走り回っている。
そんなのどかな光景をサファイア色の瞳で眺めつつ、輝く金色の巻き髪を風に揺らしながらコーデリア姫が呟く。
「この平和を守りたいものね」
水色のドレスを纏ったその優雅な座り姿は、男性なら誰もが魅了されそう美しさだった。
「そうですね、コーデリア姫」
少しまぶしそうに瞳を細め、キルアスも頷く。
「平和とか大げさだな。ありふれた景色じゃないか」
カークはチーズを乗せパンを頬張りながら捻くれた口をきいた。
「カーク、それは違うわ。何気ない風景や日常こそ平和や人の幸せがあるのよ。そしてそれは当たり前に与えられて続いていくものじゃない。守らないと脆くも崩れさっていくものなのよ」
コーデリア姫の言葉には重みがあった。
もしかしたら前世で色々苦労したのかもしれない。
その後のカークはむすっとして、食事中終始無言だった。
なぜ彼はいつも、コーデリア姫の前では態度が悪いのだろう?
朝と同様にお兄様に口に食べ物をつっこまれながら、私はふと疑問に思った。
昼食を終え再出発した馬上で、揺られているうちに私は眠気におぼえる。
しかしうたた寝しかけるたびに、エルファンス兄様に声をかけられ、キスを要求されてしまう。
何度も何度もお兄様に口づけしたけど、キルアスやクラウスはもちろん、カークでさえ最早コメントして来なかった。
バルモア砦に到着したのは、日がすっかり落ちて暗くなった頃。
詰めていた騎士達に出迎えられ、内部へと通された私達は、遅い夕食後、それぞれの部屋へと案内される。
私とエルファンス兄様も案内役の兵士に先導され、長い階段を上った先の石造りの部屋へと通された。
子供の頃から高い所が大好きな私は、部屋に入るなり窓辺へと向かう。
木戸を押し開くと高い視界から、星空の下に鬱蒼とした森と草原が広がってる景色が見えた。
思わず見上げた降るような満天の星に、懐かしくも愛しい人の面影が映り、胸が切なく痛む――
「フィー」
ぼんやり眺めていると、いつの間にか隣に並んでいたエルファンス兄様に肩を抱き寄せられた。
「お兄様……」
「外を見ているのか?」
「うん、見て、星が綺麗」
「ああ……そうだな……綺麗だな」
思いを込めるようにそう呟いたお兄様は、しかし星空なんか見ていなかった。
あの日のセイレム様のように、やはり私の瞳を覗き込んでいたのだ。
愛情が滲むその瞳を見返したとたん、胸が熱くなって震え、目頭が熱くなる。
そんな私を見下ろし、エルファンス兄様が不思議そうに問う。
「なぜ泣いている?」
私は泣き笑いで答える。
「幸せ過ぎて……お兄様とこうしていられるのが……」
「そうか……そうだな……幸せだな」
さらに肩を抱く手に力を込めながらエルファンス兄様も深く頷く。
私は昼間のコーデリア姫の言葉を思い出しながら、この幸せな時間を守りたいと心から思った。
二人で身を寄せ、しばらく無言で夜空を眺めたあと、おもむろにエルファンス兄様が移動を促す。
「身体が冷えてきた……ベッドへ入ろう」
「うん」
ベッドに横になると、夜風に当たって冷えた身体を温めるようにエルファンス兄様の身体が重なってきた。
「フィー……愛している……」
「……うん……」
自然に唇を重ね合い、お互いの舌を絡め合いながら、今夜もお兄様に抱かれるんだ……と、思うと、胸がどきどきしてきて息苦しくなった。
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