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第四章
二人目の転生者
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――と、息苦しくさにもがいていたとき、不意にドアをノックする音がして、廊下から女性に声をかけられた。
「お客様、いらっしゃいますか?」
無言で動きを止めるお兄様の下から、助かったとばかりに声をあげる。
「はい、います!」
「女性用の大浴場の貸切のご案内に来ました。
残念ながら混浴は出来ませんが、貸切ですので他の方に気兼ねせずゆっくりとお入りいただけます。
部屋風呂もありますが、大浴場は広くゆったりして、薔薇の花弁が浮かべた大変優雅な浴槽になっております」
大浴場、しかも貸切!
ラウルの店のタライ風呂で身体を流しただけだった私は、説明を聞いたそばから舞い上がった。
「お兄様! 行ってもいい?」
胸にしがみついて必死な瞳で見上げると、エルファンス兄様は少し酔いが冷めたような表情で、深く長い溜息をついた。
「仕方がないな……なるべく早く戻ってこい」
「うん、分かった」
弾んだ声で返事してお兄様に抱き起して貰い、着替えとタオルを持ち、胸をわくわくさせながら廊下へと飛び出す。
案内されて広く豪華な脱衣所に到着すると、衣服を脱ぎ、貸切ということで眼鏡も外して浴室へ入る。
――それは湯気で曇った視界の中、タイルに足を滑らせないように気をつけて、白い円柱に囲まれた浴槽へと近づいく途中だった――
急に誰かが柱の陰から姿を現し、心臓が縮みあがる思いで「きゃっ!」と悲鳴をあげる。
驚いて見れば、目の前に立っているのは真っ白な裸体を惜しげもなく晒して仁王立ちした、金髪縦ロールのコーデリア姫だった。
「やっと、来たわね、フィーネ・マーリン・ジルドア!」
「コーデリア姫!?」
なぜ、彼女がここに?
それになぜ、私のフルネームを知っているの?
「恋プリ」のシナリオではコーデリア姫とフィーネは面識が無かった筈なのに……。
「あ、あ、あ」
動揺のあまり「あ」しか言えなくなった私をコーデリア姫が高笑いで眺める。
「あははははは、フィーネ、残忍な悪女の筈のあなたがなんてお間抜け面しているのかしら?」
お、おマヌケヅラ……。
「とりあえず、ほら、身体を流してお風呂に一緒に入りましょうよ。
冷えちゃうわよ?」
「……は、はい」
私は言われるままに、手桶でお湯をすくい、身体を洗い始めた。
「あなたと二人きりで話したくて、お付の女官を連れて無いから、久しぶりに自分で身体を洗っちゃったわ」
なぜそこまでして私と二人で? 謎に思いつつも髪を洗うのに手間取っていると、見かねたようにコーデリア姫が頭の上からお湯をかけて手伝ってくれた。
「あなたノロ過ぎる」
「ご、ごめんなさい」
全身を洗い終わると、次は薔薇の花弁を浮かべた優雅な浴槽に、なぜか女二人で浸かることになった。
「やっぱり大きなお風呂はいいわね」
コーデリア姫は肌をばら色の染め上げ、うっとりと息をつく。
「はぁ……いいお湯ですね」
思わず私も呑気にくつろぎかけた時。
「やっぱりあなたが一番綺麗ね」
「へ?」
「有りえない程に美しい顔の造作と抜群のスタイル。
折れそうな華奢な腰をしていながら胸はでかいとか反則じゃない?
シナリオを裏切ってエルファンスが垂らしこまれるのも無理もないわ。
やっぱり私達三人の転生者の中であなたが飛び抜けて美しいわね」
唐突に『シナリオ』『転生者』という衝撃的な語句が並び、思考がショートして、またしても口をポカンと開けて姫を見てしまう。
出会った時からコーデリア姫の言動には違和感をおぼえていたけど、よもや私と同じ前世の記憶と「恋プリ」の知識を持ちだったなんて!?
そこでハタと気がつく。
あれ――でも……なんか、今、数がおかしかったような?
「三人?」
首を傾げて尋ねると、コーデリアは姫は力を込めて頷いた。
「そうよ、私、コーデリア・バルザとリナリー・コット、そしてあなたフィーネ・マーリン・ジルドアの、三人よ!」
「お客様、いらっしゃいますか?」
無言で動きを止めるお兄様の下から、助かったとばかりに声をあげる。
「はい、います!」
「女性用の大浴場の貸切のご案内に来ました。
残念ながら混浴は出来ませんが、貸切ですので他の方に気兼ねせずゆっくりとお入りいただけます。
部屋風呂もありますが、大浴場は広くゆったりして、薔薇の花弁が浮かべた大変優雅な浴槽になっております」
大浴場、しかも貸切!
ラウルの店のタライ風呂で身体を流しただけだった私は、説明を聞いたそばから舞い上がった。
「お兄様! 行ってもいい?」
胸にしがみついて必死な瞳で見上げると、エルファンス兄様は少し酔いが冷めたような表情で、深く長い溜息をついた。
「仕方がないな……なるべく早く戻ってこい」
「うん、分かった」
弾んだ声で返事してお兄様に抱き起して貰い、着替えとタオルを持ち、胸をわくわくさせながら廊下へと飛び出す。
案内されて広く豪華な脱衣所に到着すると、衣服を脱ぎ、貸切ということで眼鏡も外して浴室へ入る。
――それは湯気で曇った視界の中、タイルに足を滑らせないように気をつけて、白い円柱に囲まれた浴槽へと近づいく途中だった――
急に誰かが柱の陰から姿を現し、心臓が縮みあがる思いで「きゃっ!」と悲鳴をあげる。
驚いて見れば、目の前に立っているのは真っ白な裸体を惜しげもなく晒して仁王立ちした、金髪縦ロールのコーデリア姫だった。
「やっと、来たわね、フィーネ・マーリン・ジルドア!」
「コーデリア姫!?」
なぜ、彼女がここに?
それになぜ、私のフルネームを知っているの?
「恋プリ」のシナリオではコーデリア姫とフィーネは面識が無かった筈なのに……。
「あ、あ、あ」
動揺のあまり「あ」しか言えなくなった私をコーデリア姫が高笑いで眺める。
「あははははは、フィーネ、残忍な悪女の筈のあなたがなんてお間抜け面しているのかしら?」
お、おマヌケヅラ……。
「とりあえず、ほら、身体を流してお風呂に一緒に入りましょうよ。
冷えちゃうわよ?」
「……は、はい」
私は言われるままに、手桶でお湯をすくい、身体を洗い始めた。
「あなたと二人きりで話したくて、お付の女官を連れて無いから、久しぶりに自分で身体を洗っちゃったわ」
なぜそこまでして私と二人で? 謎に思いつつも髪を洗うのに手間取っていると、見かねたようにコーデリア姫が頭の上からお湯をかけて手伝ってくれた。
「あなたノロ過ぎる」
「ご、ごめんなさい」
全身を洗い終わると、次は薔薇の花弁を浮かべた優雅な浴槽に、なぜか女二人で浸かることになった。
「やっぱり大きなお風呂はいいわね」
コーデリア姫は肌をばら色の染め上げ、うっとりと息をつく。
「はぁ……いいお湯ですね」
思わず私も呑気にくつろぎかけた時。
「やっぱりあなたが一番綺麗ね」
「へ?」
「有りえない程に美しい顔の造作と抜群のスタイル。
折れそうな華奢な腰をしていながら胸はでかいとか反則じゃない?
シナリオを裏切ってエルファンスが垂らしこまれるのも無理もないわ。
やっぱり私達三人の転生者の中であなたが飛び抜けて美しいわね」
唐突に『シナリオ』『転生者』という衝撃的な語句が並び、思考がショートして、またしても口をポカンと開けて姫を見てしまう。
出会った時からコーデリア姫の言動には違和感をおぼえていたけど、よもや私と同じ前世の記憶と「恋プリ」の知識を持ちだったなんて!?
そこでハタと気がつく。
あれ――でも……なんか、今、数がおかしかったような?
「三人?」
首を傾げて尋ねると、コーデリアは姫は力を込めて頷いた。
「そうよ、私、コーデリア・バルザとリナリー・コット、そしてあなたフィーネ・マーリン・ジルドアの、三人よ!」
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