80 / 117
第四章
空での誓い
しおりを挟む
「……もしかして、セイレム様に聞いたの?」
おずおずと尋ると、まるでおしおきのように、かぷりと耳をエルファンス兄様に甘噛みされた。
「ひやっ!」
「――ああ、そうだ! 色んな話を聞かされたとも。
神殿では毎日、片時も離れず二人一緒で、お前について分からないことなど一つも無いという自慢話もな……。
聞かされた時の俺の気持ちが、お前に分かるか?
どんなに嫉妬で狂ったことか……!」
「……ごめんなさい……」
エルファンス兄様の気持ちを思うと申し訳なさ過ぎて死にたくなる。
背後から痛いほどきつく身体を抱きしめられ、頬を重ねた状態でさらに訴えられた。
「今後は、お前のことを一番知っているのも、離れず傍にいるのもこの俺でありたい。
だからもう二度と、俺にしていないような心の深い話を他の男にはするな」
私だって同じ気持ち――他の人よりお兄様のことを知っていたいし、一番近くにいたい。
「うん、お兄様、約束する!」
迷わず答える私の耳元で、強い思い込めるようにお兄様が訴える。
「俺を誰よりも愛しているというなら、今ここで誓ってくれ、フィー。
身体だけではなく、心も、お前に最も近い位置にいさせてくれると……魂までも、生涯、共にあることを……」
「魂……?」
漠然とした表現に具体的にどうすればいいのか分からず、復唱して尋ねる。
「そうだ、フィー、この場で生涯俺と共にあると、結婚の誓いをして欲しい」
結婚っ……!?
いきなりのお兄様からのプロポーズに私は大きく息を飲む。
だけど返事なんて考えるまでもなかった。
感激に胸を詰まらせながら、力いっぱい同意する。
「……うん、お兄様……一生離れないと誓うわ……!」
想いの強さを伝えるために私は思い切って、飛行中にも関わらず後ろ向きに身を反転させる。
そしてエルファンス兄様の胴体に思い切りしがみついた。
するとすかさず強く抱き返され、私達はドラゴンの背で固く抱擁し合って誓いのキスをした。
「お前達、俺達の存在を忘れてないか?」
「しっ、カーク、空気を読めよ」
近くからカーク達の声がしたけれど、無視して長い口づけを交したあと――ふっとお兄様が口元に笑みを浮かべる。
「フィー、お前は神殿で修行をきちんとしていたんだな。先ほどは聖術を使いこなしていているのを見ていたく感心した。
お前を愛しみ育て、自分が弱体化することを承知でその杖を与えるほど、強い絆を結んできたあの大神官には大いに嫉妬するが、反面、感謝もしている。
今のお前があるのも、俺達がこうしていられるのも、全てあいつのおかげだからな」
信じられない!
エルファンス兄様がセイレム様への感謝の言葉を口にするなんて……!
「神殿を立ち去る際にも必ずやお前を見つけ、以降は一生涯、俺が傍で守るから安心するようにと断りを入れてきた。
これからは、かつて旅立ちの理由として口にした、死の運命からも何からも、お前を傷つけようとする全ての物から俺が命をかけて守ると誓う。だからもう二度と俺から離れようとするな。分かったな? フィー」
「……うん、分かったわ、お兄様!」
絶対にもう離れないという意志を伝え合うように再び固く抱きしめ合う。
感動で胸と目頭が熱くなって涙が溢れ出してきた。
そのまま温かい腕の中、幸せな気持ちで上空から景色を見下ろしていると――ふいにエルファンス兄様が後方へと視線を移した。
おずおずと尋ると、まるでおしおきのように、かぷりと耳をエルファンス兄様に甘噛みされた。
「ひやっ!」
「――ああ、そうだ! 色んな話を聞かされたとも。
神殿では毎日、片時も離れず二人一緒で、お前について分からないことなど一つも無いという自慢話もな……。
聞かされた時の俺の気持ちが、お前に分かるか?
どんなに嫉妬で狂ったことか……!」
「……ごめんなさい……」
エルファンス兄様の気持ちを思うと申し訳なさ過ぎて死にたくなる。
背後から痛いほどきつく身体を抱きしめられ、頬を重ねた状態でさらに訴えられた。
「今後は、お前のことを一番知っているのも、離れず傍にいるのもこの俺でありたい。
だからもう二度と、俺にしていないような心の深い話を他の男にはするな」
私だって同じ気持ち――他の人よりお兄様のことを知っていたいし、一番近くにいたい。
「うん、お兄様、約束する!」
迷わず答える私の耳元で、強い思い込めるようにお兄様が訴える。
「俺を誰よりも愛しているというなら、今ここで誓ってくれ、フィー。
身体だけではなく、心も、お前に最も近い位置にいさせてくれると……魂までも、生涯、共にあることを……」
「魂……?」
漠然とした表現に具体的にどうすればいいのか分からず、復唱して尋ねる。
「そうだ、フィー、この場で生涯俺と共にあると、結婚の誓いをして欲しい」
結婚っ……!?
いきなりのお兄様からのプロポーズに私は大きく息を飲む。
だけど返事なんて考えるまでもなかった。
感激に胸を詰まらせながら、力いっぱい同意する。
「……うん、お兄様……一生離れないと誓うわ……!」
想いの強さを伝えるために私は思い切って、飛行中にも関わらず後ろ向きに身を反転させる。
そしてエルファンス兄様の胴体に思い切りしがみついた。
するとすかさず強く抱き返され、私達はドラゴンの背で固く抱擁し合って誓いのキスをした。
「お前達、俺達の存在を忘れてないか?」
「しっ、カーク、空気を読めよ」
近くからカーク達の声がしたけれど、無視して長い口づけを交したあと――ふっとお兄様が口元に笑みを浮かべる。
「フィー、お前は神殿で修行をきちんとしていたんだな。先ほどは聖術を使いこなしていているのを見ていたく感心した。
お前を愛しみ育て、自分が弱体化することを承知でその杖を与えるほど、強い絆を結んできたあの大神官には大いに嫉妬するが、反面、感謝もしている。
今のお前があるのも、俺達がこうしていられるのも、全てあいつのおかげだからな」
信じられない!
エルファンス兄様がセイレム様への感謝の言葉を口にするなんて……!
「神殿を立ち去る際にも必ずやお前を見つけ、以降は一生涯、俺が傍で守るから安心するようにと断りを入れてきた。
これからは、かつて旅立ちの理由として口にした、死の運命からも何からも、お前を傷つけようとする全ての物から俺が命をかけて守ると誓う。だからもう二度と俺から離れようとするな。分かったな? フィー」
「……うん、分かったわ、お兄様!」
絶対にもう離れないという意志を伝え合うように再び固く抱きしめ合う。
感動で胸と目頭が熱くなって涙が溢れ出してきた。
そのまま温かい腕の中、幸せな気持ちで上空から景色を見下ろしていると――ふいにエルファンス兄様が後方へと視線を移した。
3
お気に入りに追加
2,622
あなたにおすすめの小説
[R18] 18禁ゲームの世界に御招待! 王子とヤらなきゃゲームが進まない。そんなのお断りします。
ピエール
恋愛
R18 がっつりエロです。ご注意下さい
えーー!!
転生したら、いきなり推しと リアルセッ○スの真っ最中!!!
ここって、もしかしたら???
18禁PCゲーム ラブキャッスル[愛と欲望の宮廷]の世界
私って悪役令嬢のカトリーヌに転生しちゃってるの???
カトリーヌって•••、あの、淫乱の•••
マズイ、非常にマズイ、貞操の危機だ!!!
私、確か、彼氏とドライブ中に事故に遭い••••
異世界転生って事は、絶対彼氏も転生しているはず!
だって[ラノベ]ではそれがお約束!
彼を探して、一緒に こんな世界から逃げ出してやる!
カトリーヌの身体に、男達のイヤラシイ魔の手が伸びる。
果たして、主人公は、数々のエロイベントを乗り切る事が出来るのか?
ゲームはエンディングを迎える事が出来るのか?
そして、彼氏の行方は•••
攻略対象別 オムニバスエロです。
完結しておりますので最後までお楽しみいただけます。
(攻略対象に変態もいます。ご注意下さい)
【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜
茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。
☆他サイトにも投稿しています
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
18禁乙女ゲーム…ハードだ(色んな意味で)
ヴィオ
恋愛
高校3年、見た目よし、パッと見大人しめ、中身はテンション高めの主人公。でも、周りからは妬まれ、虐められていた。
ある日、実の父親に母親と一緒に殺されてしまう。
変な女神から哀れまれ転生させられたのは前世でやっていた乙女ゲームの悪役令嬢で…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※作者は心が弱いです
※ご都合主義です
※内容はほぼ無いです
※頭を空っぽにして読んでください
※カメさんです
感想聞くのやめます。
迷い込んだ先で獣人公爵の愛玩動物になりました(R18)
るーろ
恋愛
気がついたら知らない場所にた早川なつほ。異世界人として捕えられ愛玩動物として売られるところを公爵家のエレナ・メルストに買われた。
エレナは兄であるノアへのプレゼンとして_
発情/甘々?/若干無理矢理/
悪役令嬢なのに王子の慰み者になってしまい、断罪が行われません
青の雀
恋愛
公爵令嬢エリーゼは、王立学園の3年生、あるとき不注意からか階段から転落してしまい、前世やりこんでいた乙女ゲームの中に転生してしまったことに気づく
でも、実際はヒロインから突き落とされてしまったのだ。その現場をたまたま見ていた婚約者の王子から溺愛されるようになり、ついにはカラダの関係にまで発展してしまう
この乙女ゲームは、悪役令嬢はバッドエンドの道しかなく、最後は必ずギロチンで絶命するのだが、王子様の慰み者になってから、どんどんストーリーが変わっていくのは、いいことなはずなのに、エリーゼは、いつか処刑される運命だと諦めて……、その表情が王子の心を煽り、王子はますますエリーゼに執着して、溺愛していく
そしてなぜかヒロインも姿を消していく
ほとんどエッチシーンばかりになるかも?
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる