少し高い君。

陽炎

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水無月 蒼

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それから私は毎日伊織さんの部屋に通うようになっていた。休みの日もそこに入り浸るようになっていた。そんな私を伊織さんは文句も言わず迎えてくれた。でも一つだけルールがあった。それは

‘’あやちゃん。一つだけルールを作るね。それは夜には家に帰ること。‘’

なんだ。そんな簡単なことでいいのか。

‘’わかりました。‘’

その事だけは守っていた。これを破ればこの関係は終わると思っていたから。


しばらくして分かったことがある。伊織さんは顔だけじゃなかった。すべてが綺麗ですぐに私の中の全てが伊織さんに魅了された。

そしてもう一つ。伊織さんは売れっ子の小説家だった。王道の恋愛小説家。恋愛小説に疎い私でも知っていた。ペンネームは

水無月 蒼

私は、この人の書く文章が好きだった。この人の恋愛小説だけは読んでいた。好きだったから。だから私は知っていた。

しかし今の私は正直それどころではなかった。この人の書く恋愛は大人なのだ。私はそんな大人な恋愛を書いちゃう人に愛を教えてくれとお願いしてしまったのだ。私なんかで受け止められるのだろうか、そんな大人な恋愛を。

でも私が愛されたかったのはこの人の小説家を読んだのも原因の一つでもあった。まぁこれは本人には絶対に言わないけど。

でもまぁ、都合が良いじゃないか。教えてもらおう。水無月 蒼の大人な愛を。
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