女の子は強くなりたい

私は君を許さない

あの日は雨だった気がする。

「別れたい。」

その声が耳の奥で深く響いた。
なんで？どうして？頭が真っ白になる。

「ごめん。」

ちがう。そうじゃない。その言葉じゃない。喉にコルクが詰まったみたいで声が出ない。
電話の終了を告げる音だけがそこに残っていた。

それからの一週間はまさに地獄だった。最初の２日は何もしなくても涙が流れた。食欲もなく、このまま消えてしまいたいとさえ思った。
３日目の朝お腹が空いたことを気づいた。人はこんな時でもお腹が空くのかと嫌になりながら、冷蔵庫から賞味期限が昨日切れたヨーグルト出して食べた。
酸味で喉がキュッとなった。そしたらまた涙が出てきた。自分がことごとくだめなやつになった気がした。
一生明日が来なければいい。君がいない明日なんて私はいらない。このまま死んでしまおうか。そしたらどんなに楽だろう。なんてことばかり考えていた。
その時スマホの通知音が鳴った。すかさずスマホを見た。公式ラインだ。何を期待していだんだろう。もう終わったんだ。このスマホによって。不意にスマホが憎らしくなり、ベットに投げつける。ボスって音がしてそれからスッーガコンって音がした。そのまま粉粉になってしまえばいい。私と一緒に。
私が死ねば君は悲しむだろうか。私を捨てたことを後悔してくれるだろうか。ていうかそもそも私の死なんて知るよしもないだろうな。
君は私が勝手に幸せになると思って私の知らないうちに私の知らない可愛い誰かと幸せになるのか。くやしい。くやしいくやしいくやしい。そんなの糞食らえだ。君が幸せになろうがそんなのは構わない。でも私の背を見ながら幸せになれ。私を背景に可愛い彼女を見ろ。忘れてなんてさせてやるものか。
絶対許してなんてやらないから。

あれから一年が経った。
毎晩見ていた君の夢が最近は三日に一度になった。このまま忘れて行くのだろうか。
夢の中の君はいつも笑ってた。懐かしい背景を背にまるで私なんて見えてないみたいに。
ついこの前の夢で君は珍しく私を見ていた。そして私のそばにきてゆっくり抱きしめて言うんだ。

「ごめん。」

目が覚めて一年前のあの日を思い出した。
あぁやっと会えた。一年ぶりにちゃんと私を見てくれた。好きだった。大好きだった。頬に暖かなものが滴るのがわかる。だから私は顔をあげて言うんだ。

「許さない。でもありがとう。そしてさよなら。」

そこに君はいないけど。