上 下
14 / 14

14話

しおりを挟む

「ち、父上!」
「マーク、全て話は聞いている」

 マーク王子は国王の姿を見て分かりやすく慌てて始めた。

「公爵令嬢へ婚約破棄を叩きつけておいてつけまわし、他国の王子に手を上げたうえ、挙げ句の果てには決闘を挑むなど……本当になんてことをしてくれたのだこの馬鹿者が!」

「も、申し訳ございません父上! しかし──」

「言い訳無用! ここまで恥をさらした者を王族としては扱わん! 貴様の王位継承権を剥奪した後、平民へと落とす! これは決定事項だ!」

「そ、そんな……!」

 マーク王子はがっくりと膝をついた。
 次に国王が私とレノへと向き直った。
 そして、手を地面につけ土下座の体勢になった。

「シャーロット嬢、本当に申し訳ない。マークがしでかしたことをついさっき知ったのだ。今更許されるとは思えないが謝罪する」
「そ、そんな……! 国王様顔を上げてください!」

 いつまでも国王に土下座させることは出来ない。
 私は慌てて顔を上げるように頼んだ。
 しかし国王は体勢を変えず、レノ王子へと向き直った。

「そしてレノ王子。怪我を負わせて本当に申し訳ない。お詫びとして私にできる事ならなんでも言ってほしい」

 レノ王子は少し考え込む。

「……それなら、頼みがあります」
「聞こう」
「私とシャーロットを婚約することを許可して頂きたいのです。この国では他国の貴族と婚約するには国王の許可がいると聞きましたので」
「分かった。許可しよう」
「ありがとうございます。これでもう遺恨はありません。国際問題にすることもございません」

 レノ王子がそう言うと国王はやっと立ち上がった。

「それでは、私は失礼しよう。マークを追放しなければならないのでな」
「なっ、父上! やめてください!」

 国王はマーク王子の言葉を全て無視し、連れてきた兵士にマーク王子を連れて行かせた。

「誠意のある素晴らしい国王様だった」

 レノ王子がそう呟いた。

「はい。……その、婚約のことなのですが」
「嫌だったかな?」
「いっ、いえ! そんなことは!」

 レノ王子が笑う。
 私の頬に手が添えられた。

 レノ王子が近づいてくる。
 私は目を瞑った。



 こうして、私たちの生活は平穏に戻った。
 学園に通っている間は婚約のままだが、卒業すればすぐに結婚式をあげる予定だ。

 マーク王子の方は平民へと落とされて、毎日を生きるのが大変だそうだ。

 ああ、マーク王子。
 婚約破棄をしてくれてありがとう。
 だってこんなに素敵な運命の人と出会えたのだから。







──


長らくお待たせして申し訳ありません。これで完結です。
新しい作品も書いてるので、そちらもどうぞよろしくお願いします。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(59件)

東堂明美
2022.06.21 東堂明美
ネタバレ含む
解除
太真
2022.01.11 太真
ネタバレ含む
解除
千夜歌
2022.01.02 千夜歌
ネタバレ含む
解除

あなたにおすすめの小説

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

溺愛されている妹がお父様の子ではないと密告したら立場が逆転しました。ただお父様の溺愛なんて私には必要ありません。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるレフティアの日常は、父親の再婚によって大きく変わることになった。 妾だった継母やその娘である妹は、レフティアのことを疎んでおり、父親はそんな二人を贔屓していた。故にレフティアは、苦しい生活を送ることになったのである。 しかし彼女は、ある時とある事実を知ることになった。 父親が溺愛している妹が、彼と血が繋がっていなかったのである。 レフティアは、その事実を父親に密告した。すると調査が行われて、それが事実であることが判明したのである。 その結果、父親は継母と妹を排斥して、レフティアに愛情を注ぐようになった。 だが、レフティアにとってそんなものは必要なかった。継母や妹ともに自分を虐げていた父親も、彼女にとっては排除するべき対象だったのである。

婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます

もふきゅな
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。 エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。 悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。

天才少女は旅に出る~婚約破棄されて、色々と面倒そうなので逃げることにします~

キョウキョウ
恋愛
ユリアンカは第一王子アーベルトに婚約破棄を告げられた。理由はイジメを行ったから。 事実を確認するためにユリアンカは質問を繰り返すが、イジメられたと証言するニアミーナの言葉だけ信じるアーベルト。 イジメは事実だとして、ユリアンカは捕まりそうになる どうやら、問答無用で処刑するつもりのようだ。 当然、ユリアンカは逃げ出す。そして彼女は、急いで創造主のもとへ向かった。 どうやら私は、婚約破棄を告げられたらしい。しかも、婚約相手の愛人をイジメていたそうだ。 そんな嘘で貶めようとしてくる彼ら。 報告を聞いた私は、王国から出ていくことに決めた。 こんな時のために用意しておいた天空の楽園を動かして、好き勝手に生きる。

虐げられていた姉はひと月後には幸せになります~全てを奪ってきた妹やそんな妹を溺愛する両親や元婚約者には負けませんが何か?~

***あかしえ
恋愛
「どうしてお姉様はそんなひどいことを仰るの?!」 妹ベディは今日も、大きなまるい瞳に涙をためて私に喧嘩を売ってきます。 「そうだぞ、リュドミラ!君は、なぜそんな冷たいことをこんなかわいいベディに言えるんだ!」 元婚約者や家族がそうやって妹を甘やかしてきたからです。 両親は反省してくれたようですが、妹の更生には至っていません! あとひと月でこの地をはなれ結婚する私には時間がありません。 他人に迷惑をかける前に、この妹をなんとかしなくては! 「結婚!?どういうことだ!」って・・・元婚約者がうるさいのですがなにが「どういうこと」なのですか? あなたにはもう関係のない話ですが? 妹は公爵令嬢の婚約者にまで手を出している様子!ああもうっ本当に面倒ばかり!! ですが公爵令嬢様、あなたの所業もちょぉっと問題ありそうですね? 私、いろいろ調べさせていただいたんですよ? あと、人の婚約者に色目を使うのやめてもらっていいですか? ・・・××しますよ?

身勝手な我儘を尽くす妹が、今度は辺境伯である私の夫を奪おうとした結果――。

銀灰
恋愛
誰も止められない傲慢な我儘を尽くす妹のマゼンタが次に欲したものは、姉ヘリオトの夫、辺境伯であるロイだった。 ヘリオトはロイに纏わり付くマゼンタに何も出来ぬまま、鬱々とした日々を送る。 これまでのように、心優しい夫の心さえも妹に奪われるのではないかと、ヘリオトは心を擦り減らし続けたが……騒動の結末は、予想もしていなかったハッピーエンドへと向かうことになる――! その結末とは――?

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

今までお姉様だから我慢していましたが、もうそろそろ限界ですよ?

榎夜
恋愛
次期王妃のはずなのにふらふらと遊び歩くお姉様。 これ以上尻拭いするつもりはありませんよ?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。