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3話
しおりを挟む噂はすぐに学園へと広まった。
真実を知らない生徒はシエスタへ軽蔑の目を向ける。
もともと公爵家という上流貴族であるシエスタへの嫉妬もあり、シエスタは孤立した。
こんな状況で学園にいられるはずが無い。
シエスタは早退しようと席を立ち上がった。
しかし、それをイザベルとデイビットが阻止する。
「おい! どこへ行くつもりだ!」
「……早退させていただきます」
「ハッ! そんなことを言って後ろめたいことをしたから、逃げ出したいだけなのだろう?」
「……だから、私はやっていません」
何度も否定しているのに一向に信じてもらえないことに疲れきった、シエスタの声は掠れていた。
「じゃあ、家名に誓えますか。あなたが私を虐めていないと」
そう言ったのはイザベルだった。
シエスタはイザベルの意図を察した。
イザベルは、シエスタの誇りを弄ぶつもりだ。
この問いにはシエスタは当然「家名に誓う」と答えなければならない。
だが、そうしてしまうと、今度はシエスタが早退する理由は無くなるのだ。
つまり、イザベルは家名に誓わせることで「虐めていないのなら、こんな責苦など毅然として耐えることができるでしょう?」と言外に周囲に仄めかしている。
家名に誓うとは、最も重い言葉だ。
本人だけではなく、その家全ての誇りをかけているからだ。
イザベルはそれを、弄んでいる。
シエスタは頭が沸騰しそうだった。
しかしシエスタには選択肢は無かった。
「どうしましたか? やはり家名に誓うのは無理ですか? そうでしょうね。なぜなら、私を虐めたのは真実なのですから!」
これを言われてしまえば、選択肢は家名に誓うか、冤罪を受け入れるしかなくなってしまう。
そしてシエスタは、苦渋の決断をした。
「家名に、誓います……!」
シエスタが歯を食いしばりながらそう言うと、イザベルは満足そうに笑った。
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