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11話
しおりを挟む「……」
「聞こえませんでしたか? 私がその『凄腕コンサルタント』ですよ」
リチャードは思考が一瞬停止した。
ミアの言葉を理解出来なかったのだ。
あれだけ無能だと言ってきたミアが世間から『有能』の評価をされているなど、認めたくなかった。
「は……バカな! あり得ん冗談はよせ! 早くコンサルタントを出すんだ!」
「この事務所には私しかコンサルタントはいませんよ。どうぞご確認してくださいな?」
ミアは辺りを手で示す。
シンプルな作りのここには備え付けられたバスルームしかなく、他のコンサルタントが働いていそうな部屋はない。
「う、嘘だ……」
「嘘ではありません。現実ですよ」
リチャードは首を振る。
追撃に私はニコリと笑顔で首を傾げた。
「そう言えば、私は『無能』なのでしたよね?」
リチャードは慌てて否定する。
しかしリチャードは事実として言ったので、何の意味もない否定だった。
「い、いや……」
「でしたら私はお力にはなれないと思います」
「待て!」
「それに私はもうスコット家を追放された身ですから、関わらないほうがよろしいでしょう? すみません。お力になれなくて」
私は机から立ち上がるとリチャードの背中を押して、店から追い出す。
「やめろ! 貴様後悔するぞ!」
リチャードの話には聞く耳を持たずにぐいぐいと押す。
そしてやっと扉からリチャードを外へと出した。
「私たちは家族だろう! ここは持ちつ持たれつ──!」
そんな言葉を言っていたが、扉を閉めてその言葉を遮った。
どれだけ面の皮が厚いのだろう。
リチャードを追い出した後、私はふぅと息を吐いた。
毎日、無能無能と罵ってきた父は私にとってトラウマに近かった。
しかし今日やっとその父に復讐することが出来た。
私は少し胸がスッキリした。
あの頃の自分とは違い成長したのだと分かったからだ。
私は机と戻り、仕事を再開した。
──
次回最終回です。
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