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10話
しおりを挟むリチャードはコンサルタントの元へと赴いていた。
スコット家の未来を明るいものにするためには、この一手で起死回生を狙わなければならない。
つまり、ここで失敗したらもう後がない。
ゆっくりとスコット家は破滅していくだろう。
なので今回のコンサルタントは巷で噂の凄腕に頼むことにした。
そのコンサルタントは仕事を依頼した誰もが賞賛する腕だという。
噂では「一人で十人分の働きをする」とか「個人のくせに大手の商会とコネを持っている」だとか俄には信じられないものばかりだ。
リチャードは期待していた。
これまで自分を失望させてきた息子や次女とは違い、役に立つ人物のはずだ、と。
間違ってもあのミアとは違う優秀な人間なのだろう。
そしてコンサルタントが経営している事務所へとやって来た。
扉を開けて中に入ると、リチャードは固まった。
机にはあのミアが座っていたからだ。
「な……」
ミアは来客に気づいたようだ。
書類から顔をあげてリチャードを見た。
そして同様にミアも固まった。
「な、なぜお前が……」
リチャードは呟く。
リチャードは信じたくなかった。
ミアが巷で有名なコンサルタントであると。
だから、傲慢な態度でミアを見下ろした。
「何だ、お前? 何故ここにいる?」
「……ここで働いているからですが?」
「は! お前みたいな出来損ないに働き口があるとはな! 凄腕コンサルタントのお方に感謝するんだな!」
ハハハ!とリチャードは笑う。
ミアもニコリと笑う。
「おい! 早くコンサルタントの方を出せ! お前みたいな無能と話していると虫唾が走る!」
リチャードはミアに対する侮辱の言葉を重ねる。
そしてミアはリチャードに自分の正体を告げた。
「私が、そのコンサルタントです」
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