お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?

水垣するめ

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7話

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「クソッ! クソッ! なんでこんな目に!」

 私達は日差しが照る中、真っ直ぐ続く道を歩き続けていた。

「おいマーク! もっと早く歩け! このままでは野宿することになってしまうぞ!」

 私は長男のマークに向かって叫んだ。
 顔に包帯が巻かれたマークはフラフラしながら歩いている。
 ふん、あの程度の傷でここまで弱るとは。
 男として情けない限りだ。

「お父様! もうムリ! 一旦休みましょ! 私もう疲れたわ!」
「そうよあなた。もう二十分は歩いているのよ! 一時間ぐらい休憩しないと疲れが取れないわ!」

 次女のウェンディと妻のパメラが弱音を吐く。

「黙れ!なんとしても今日までにアリスの元へ行くのだ!」

 幸い、護衛だけはアリスが許したのでつけることが出来ているので、夜でも歩くことは出来るだろう。
 しかし野宿するのだけは嫌だ。
 高貴な身分である私がそんなことをするなんて耐えられない。

「ほら、歩け! あと少しだ!」



「はぁっ……! はぁっ……! やっと着いたぞ!」

 もう日はとっくに沈み、辺りは真っ暗になっている。
 私達はようやく伝えられたアリスがいる宿へとやって来た。
 私達はその場に座り込んでしまう。

 ウェンディやマークたちも満身創痍といった様子で倒れ込んでいる。

 私は屈辱に震えた。
 親であり、貴族である私がこんなに歩かされ、それが親の道具である子供にやらされたことだとは。

(ただでは済まさんぞアリス……!)

 私はアリスに復讐を誓う。
 この理不尽な仕打ちの報いを受けさせてやる。

 そして宿から護衛を引き連れて、誰かが出てきた。
 アリスだ。
 アリスは倒れ込んでいる私たちを見てくすくすと笑う。

「あらあら、私を“追放”した皆さん。一体どうされたんですか? そんなやつれた表情で」
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