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6話
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「な、何なのよこれ!」
「ふざけないで! 私達は貴族よ!」
妻のパメラと次女のウェンディが使用人に怒鳴るが、使用人はさして気にする風もなく、淡々と説明する。
「当主であるアリス様の命令ですので」
アリス。
私はまた出てきたその言葉に頭が沸騰した。
「アリス! またアリスか! ふざけるな!」
私はその使用人に殴りかかろうとする。
しかし、さっきとは違い近くにいた衛兵に素早く阻止された。
「クソッ! またか! 何なんだ貴様らは! さっきから邪魔ばっかりしおって!」
「アリス様の命令ですので!」
「くっ! 分かった! もう暴れんからこの手を早く離せ!」
そうして私が言うと、衛兵はやっと私から手を離した。
しかし私の近くにいて、私の挙動を監視している。
私は乱れた息と襟を整えた。
(何故だどうなっている! 何故こんなにも私の部下が私に反抗するんだ! これではまるで──)
「まさか本当にお姉様が……」
私と同じことを考えていたのか、ポツリとウェンディがそう呟いた。
しかし私はウェンディを睨みつける。
するとさっきのマークの件を見ていたウェンディは慌てて口をつぐんだ。
しかし妻のパメラは止まらなかった。
「本当にアリスが当主になってるの!?」
「黙れ!」
「だってそうでしょ!? じゃないとこんなこと説明つかないじゃないの! そうじゃないなら今すぐ当主の力を使って、この屋敷の使用人を全員クビにしてみせなさいよ!」
「ぐっ……!」
確かにそうだ。
パメラの言っていることは正しい。
私は何も言い返せなかった。
「そうよ! お父様さっきから怒鳴ってるばかりでみっともないわよ!」
ここぞとばかりにウェンディも野次を飛ばしてくる。
立場が悪くなった私は次の一手を打つことにした。
「ぐっ……! よし! なら今からアリスのもとまで行って真偽を確かめに行くぞ!」
私はがそう言うと外に出るのを嫌がったパメラとウェンディが文句を言ったが、全て無視する。
そして屋敷の外まで出てくると、外にいた者に命令した。
「おい! 今すぐ馬車を用意しろ! アリスのところまで行く!」
そう命令すると、その使用人は何か言いづらそうな雰囲気で話し始めた。
「その……、馬車の使用は禁じられております。徒歩で来るように、と」
「なっ……!」
「アリス様の現在地はは隣の領地だそうです。歩いていけば一日もかからないかと……」
使用人はそう言うが、私達はそれどころではなかった。
「ふ、ふざけないで! そんなに歩けるわけないじゃない!」
「一日なんて体が保たないぞ!」
「もういい! これなら屋敷にいたほうがマシだわ!」
私達はアリスの理不尽な命令に使用人に次々に文句を言う。
「しかし、明日からは食事を提供するな、という命令が出ております。行かれたほうがよろしいのではないかと……」
「アリスっ! 貴様どこまで……!」
私は怒るが、どうすることも出来ない。
退路は断たれてしまった。
「クソッ! 行けばいいんだろう! そのくらいの距離、歩いてやる!」
そうして、私達はアリスの元へと徒歩で向かわなければならなくなった。
「ふざけないで! 私達は貴族よ!」
妻のパメラと次女のウェンディが使用人に怒鳴るが、使用人はさして気にする風もなく、淡々と説明する。
「当主であるアリス様の命令ですので」
アリス。
私はまた出てきたその言葉に頭が沸騰した。
「アリス! またアリスか! ふざけるな!」
私はその使用人に殴りかかろうとする。
しかし、さっきとは違い近くにいた衛兵に素早く阻止された。
「クソッ! またか! 何なんだ貴様らは! さっきから邪魔ばっかりしおって!」
「アリス様の命令ですので!」
「くっ! 分かった! もう暴れんからこの手を早く離せ!」
そうして私が言うと、衛兵はやっと私から手を離した。
しかし私の近くにいて、私の挙動を監視している。
私は乱れた息と襟を整えた。
(何故だどうなっている! 何故こんなにも私の部下が私に反抗するんだ! これではまるで──)
「まさか本当にお姉様が……」
私と同じことを考えていたのか、ポツリとウェンディがそう呟いた。
しかし私はウェンディを睨みつける。
するとさっきのマークの件を見ていたウェンディは慌てて口をつぐんだ。
しかし妻のパメラは止まらなかった。
「本当にアリスが当主になってるの!?」
「黙れ!」
「だってそうでしょ!? じゃないとこんなこと説明つかないじゃないの! そうじゃないなら今すぐ当主の力を使って、この屋敷の使用人を全員クビにしてみせなさいよ!」
「ぐっ……!」
確かにそうだ。
パメラの言っていることは正しい。
私は何も言い返せなかった。
「そうよ! お父様さっきから怒鳴ってるばかりでみっともないわよ!」
ここぞとばかりにウェンディも野次を飛ばしてくる。
立場が悪くなった私は次の一手を打つことにした。
「ぐっ……! よし! なら今からアリスのもとまで行って真偽を確かめに行くぞ!」
私はがそう言うと外に出るのを嫌がったパメラとウェンディが文句を言ったが、全て無視する。
そして屋敷の外まで出てくると、外にいた者に命令した。
「おい! 今すぐ馬車を用意しろ! アリスのところまで行く!」
そう命令すると、その使用人は何か言いづらそうな雰囲気で話し始めた。
「その……、馬車の使用は禁じられております。徒歩で来るように、と」
「なっ……!」
「アリス様の現在地はは隣の領地だそうです。歩いていけば一日もかからないかと……」
使用人はそう言うが、私達はそれどころではなかった。
「ふ、ふざけないで! そんなに歩けるわけないじゃない!」
「一日なんて体が保たないぞ!」
「もういい! これなら屋敷にいたほうがマシだわ!」
私達はアリスの理不尽な命令に使用人に次々に文句を言う。
「しかし、明日からは食事を提供するな、という命令が出ております。行かれたほうがよろしいのではないかと……」
「アリスっ! 貴様どこまで……!」
私は怒るが、どうすることも出来ない。
退路は断たれてしまった。
「クソッ! 行けばいいんだろう! そのくらいの距離、歩いてやる!」
そうして、私達はアリスの元へと徒歩で向かわなければならなくなった。
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