お前は家から追放する？構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ？

4話

「それにしても、あの父も馬鹿よねぇ」

　豪華な飾りが施された馬車に揺られながら私はため息をついた。

「まだ自分がアトキンソン家の当主だと思っているなんて。今まで暮らしてきて分からなかったのかしら」

　そう、もう既に父アランは当主ではない。
　私が当主の座を奪ったからだ。
　と言っても法に触れるような汚いやり方ではない。至って合法的なやり方だ。
　それは何かというと簡単だ。

　父に当主の座を渡す文言が書かれている紙にサインさせたのだ。

　しかし普通に考えて常人ならそんな紙においそれとサインすることは無い。
　ではどうやったのか。
　私が家の経営を始めて少し経った頃、どうしても当主でないと面倒くさいことが増えた。
　だから「家の経営に必要だ」と言って紙にサインさせたのだ。
　父は紙の内容に全く気づくことなくサインしたので、当主は私のものとなった。

　つまり全て父の身から出た錆で、父が通常の人間よりもかなり馬鹿だったのだ。
　当主という名前だけ名乗って権力を振りかざし満足していた結果だ。

　私が差し出した紙に何も考えずによそ見しながらサインした時、私は呆れて物も言えなかった。

「あ、そうだ」

　私はあることを思いついた。
　手紙をすらすらと書いていく。
　それは私の家の者にあてた手紙だった。
　手紙を書き終わると出すように頼む。

　手紙には家にいる私の家族にたいしてどうするかが書かれている。
　その内容はまだ秘密だ。

　私は窓の外の景色を見てふふっ、と笑った。

　これから私は景色が綺麗で有名な観光地で長めの休暇を取るつもりだ。
　その間に当主がいない屋敷で暮らせるかどうか、その結果大変楽しみだ。

「それでは家族の皆様自分のしたことを後悔しながら暮らして下さいね？」