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19話

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 時間は少々巻き戻る。



 交渉が終わった後、ライアンの身柄はアランへと引き渡された。もちろんダイアナの身柄も一緒に。

 拘束されていたライアンは馬車へと乗せられ、ウィリアムズ公爵領へと連れて行かれた。
 そして馬車から下ろされると、新しい住居が与えられた。

 あれだけのことを仕出かしておいて、まだ命があること自体が幸運だったが、ライアンは生活のグレードが下がったことに不満をいだいていた。
 その結果、あろうことか馬車の御者に対して不満を述べたが、相手にされることはなかった。

 否応なくライアンはその新住居での生活を余儀なくされた。

 次の日からダイアナの勧めでライアンは職を探すことになった。

 ライアンは渋々職を探し始めたが、何故か職は一つしか見つからなかった。

 ドブさらいだ。
 この国では罪人のみにさせられる職だ。

 実は、アランが手を回しドブさらいの職にしかつけないように手を回していた。

 ライアンは当然王族たる自分の仕事ではない、と嫌がった。
 しかし日銭を稼ぐにはやるしかなかった。

 ドブをさらう毎日。
 下水の掃除もさせられるので、体には悪臭が染み込んでいく。

 ドブさらいを毎日させられる屈辱に、ライアンの王族としてのプライドはズタズタになったが、ダイアナという愛している人物がいたから耐えることができた。

 もともとライアンの資産目当てだったダイアナは、一ヶ月でライアンの元を去った。

 ダイアナと心の底から愛し合っていたと思っていたライアンは絶望し泣き叫んだ。

 結局のところ、ライアンが信じていた真実の愛はまやかしでしかなかった。

 とても働けるような心理状態ではなかったが、生きるためにはドブさらいを続ければならない。
 失意の中、プライドがじりじりと削られていくライアンにとって地獄の毎日が続く。

 そして次第に生きる目的も、希望も無くなりかけた頃。

 ウィリアムズ公爵領にとある噂が流れ始めた。

 ソフィアとライトが婚約した、という噂である。
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