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17話
しおりを挟むソフィアは涙をこらえ、振り返ろうとする。
「待ってくれ」
しかしヴァンがソフィアの手を握り、引き止めた。
ソフィアは泣きそうな顔になっていたのに、ヴァンは微笑みを浮かべてソフィアを見つめていた。
その表情が気になりソフィアは立ち止まった。
「送っていくよ」
どんな言葉をかけられるのか、と考えていたソフィアはヴァンから出たその言葉にすこし落胆したような気持ちになったが、すぐに頭を振って打ち消した。
「……はい」
これでヴァンに送ってもらうのも最後だ。
寂しさを胸に抱きながら屋敷までの道程を歩く。
二人の間には沈黙が流れていた。
微笑みを浮かべていたが、恐らくヴァンも困惑しているのだろう。
そうこうしているうちにもう屋敷についてしまった。
ソフィアは最後に何かを伝えなければ、と必死に思考を巡らせる。
しかし突然。
ヴァンはソフィアの手を繋ぐと、手を引いて一緒に屋敷の門をくぐった。
「──え?」
ソフィアは何をしているのか分からなかった。
平民が無断で貴族の屋敷に入っていいはずがない。
ソフィアはヴァンを引き留めようとする。
「ヴァン? 何を──」
「いいから、着いてきてくれ」
袖を引くが、笑みを浮かべたヴァンはぐんぐんと引いていく。
ヴァンはついにドアをガチャリと開け、屋敷の中に入った。
使用人達が驚いた表情でソフィアとヴァンの二人を見つめている。
もう言い逃れが出来ない。
ソフィアが冷や汗を流していると、タイミング悪く、ちょうどソフィアの父であるアランが通りかかった。
そしてヴァンを見て目を丸く見開く。
犯罪。牢獄。
そんな言葉がソフィアの頭によぎった。
しかし、アランが次に発した言葉は思いもよらないものだった。
「だ、第二王子!?」
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