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12話
しおりを挟む屋敷の窓から抜け出して、ソフィアは街へ出かけた。
服は街の人間に溶け込めるように、出来るだけ質素な服を着ていった。
フード付きの外套を深く被り、ソフィアは街を歩く。
新鮮だった。
見たこともない食べ物。屋敷で着るようなドレスとは違う可愛らしい服。怪しげな老婆が売っているアクセサリー。
今まで見たこともない光景にソフィアは胸を躍らせた。
周りをくるくると見ながらソフィアは歩く。
そして、知らぬうちにソフィアは路地裏へと迷い込んでいた。
表通りとは違い、路地裏は暗い雰囲気が漂っていた。
しかしテンションの上がりきったソフィアはそれに気づくことはなく、興味深そうに積み上げられた木箱や樽を眺めている。
複数人の足音がソフィアの前で止まった。
「おい」
ソフィアは声の方向に顔を向ける。
そこにはいかにも街の不良、といった風貌の柄の悪い男たちがいた。
ソフィアは気圧される。
どう見ても目の前の男たちはソフィアに対して良くない感情を抱いていたからだ。
男たちは下卑た笑みを浮かべた。
「お前、金目のモン出せよ」
「わ、私お金なんて持っていません」
「嘘つくな。そんな高そうな服を着て金を持ってない訳ねぇだろうが」
それは貴族と平民の価値観の違いだった。
ずっと高級な服だけを着て過ごしてきたソフィアにとっては今着ている「質素な服」でも、平民にとっては十分に高そうに見える服だった。
ソフィアはここで自分の常識が世間からずれていることを自覚した。
「本当にお金は持っていなくて……」
お金は本当に持っていないので、そのことを伝えた。
ソフィアはお金目的ならこれで諦めてくれるのでは、と考えたが男たちは逆にニヤニヤと笑った。
「金がないなら体で支払ってもらおうか……!」
男たちが笑う。
そして一人がソフィアへ手を伸ばしたとき、その手を誰かが掴んだ。
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