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10話

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「好きにしてもいいと……?」
「ああ、ライアンの自由も何もかも、全てを公爵に渡そう」

 アランにとっても、国王のした提案は意外だった。
 ライアンの生殺与奪を握ってもいいということは、つまりウィリアムズ公爵家が王家の血を手に入れることと同義だ。

 廃嫡になったとしてもライアンは元王子。
 政治的な取引には使うことも出来るし、ウィリアムズ公爵家が謀反を企んでいるとしたら、ライアンを次期王に掲げて戦争をしかけることが出来る。
 もちろん、謀反を企んでいる相手に渡してもいい。

 他家に対しても王家に対しても政治的にかなり優位に立つことが出来るのは間違いない。
 ライアンは強力はカードなのだ。

 国王は自分の首に剣を当てさせたようなものだ。

 国王はそれほど申し訳ないと思っているのだろう。
 謝罪としては過剰なほどの対応からそれが読み取れる。

 アランは王家に対する謝罪を受け取った。

「ならば、ライアン殿は私が自由にさせて頂きましょう。それで今回の件は解決、ということで」
「ああ、ありがとう」
「それでは、後処理をどうするか話し合いましょうか」
「そうだな」

 そして国王とアランは今回の事件を対外的にどう発表するかを決めた。

 そして結局、婚約破棄はアランからしたため、慰謝料は公爵家に支払われること、そしてソフィアの名誉を守るような経緯を王家の方から説明することが定められた。

 国王とアランは立ち上がり握手を交わす。
 これにて取引は終了した。
 部屋から出て、王宮の廊下を歩きながらアランは呟いた。

(平民に落とされた程度で済むと思うな。覚悟していろ、ライアン)




「それでは行ってまいります」
「ああ、気をつけてな」

 ソフィアはアランに別れの挨拶をする。
 ソフィアは王都を離れ、ウィリアムズ公爵領へと向かうことになった。

 目的は傷ついたソフィアの心を癒やすため、そして一度政治の思惑から外させるためだ。
 静かな屋敷で自然に触れながら休んでいたならすぐに心も癒やされるだろう。

 そして三日後、ソフィアはウィリアムズ公爵領についた。
 ソフィアはそこで運命的な出会いを果たすことになる。
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