10 / 21
10話
しおりを挟む「好きにしてもいいと……?」
「ああ、ライアンの自由も何もかも、全てを公爵に渡そう」
アランにとっても、国王のした提案は意外だった。
ライアンの生殺与奪を握ってもいいということは、つまりウィリアムズ公爵家が王家の血を手に入れることと同義だ。
廃嫡になったとしてもライアンは元王子。
政治的な取引には使うことも出来るし、ウィリアムズ公爵家が謀反を企んでいるとしたら、ライアンを次期王に掲げて戦争をしかけることが出来る。
もちろん、謀反を企んでいる相手に渡してもいい。
他家に対しても王家に対しても政治的にかなり優位に立つことが出来るのは間違いない。
ライアンは強力はカードなのだ。
国王は自分の首に剣を当てさせたようなものだ。
国王はそれほど申し訳ないと思っているのだろう。
謝罪としては過剰なほどの対応からそれが読み取れる。
アランは王家に対する謝罪を受け取った。
「ならば、ライアン殿は私が自由にさせて頂きましょう。それで今回の件は解決、ということで」
「ああ、ありがとう」
「それでは、後処理をどうするか話し合いましょうか」
「そうだな」
そして国王とアランは今回の事件を対外的にどう発表するかを決めた。
そして結局、婚約破棄はアランからしたため、慰謝料は公爵家に支払われること、そしてソフィアの名誉を守るような経緯を王家の方から説明することが定められた。
国王とアランは立ち上がり握手を交わす。
これにて取引は終了した。
部屋から出て、王宮の廊下を歩きながらアランは呟いた。
(平民に落とされた程度で済むと思うな。覚悟していろ、ライアン)
◯
「それでは行ってまいります」
「ああ、気をつけてな」
ソフィアはアランに別れの挨拶をする。
ソフィアは王都を離れ、ウィリアムズ公爵領へと向かうことになった。
目的は傷ついたソフィアの心を癒やすため、そして一度政治の思惑から外させるためだ。
静かな屋敷で自然に触れながら休んでいたならすぐに心も癒やされるだろう。
そして三日後、ソフィアはウィリアムズ公爵領についた。
ソフィアはそこで運命的な出会いを果たすことになる。
496
お気に入りに追加
6,351
あなたにおすすめの小説
三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します
冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」
結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。
私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。
そうして毎回同じように言われてきた。
逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。
だから今回は。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
だが夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
嘘をありがとう
七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」
おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。
「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」
妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。
「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」
私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました
新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。
婚約破棄された令嬢のささやかな幸福
香木陽灯(旧:香木あかり)
恋愛
田舎の伯爵令嬢アリシア・ローデンには婚約者がいた。
しかし婚約者とアリシアの妹が不貞を働き、子を身ごもったのだという。
「結婚は家同士の繋がり。二人が結ばれるなら私は身を引きましょう。どうぞお幸せに」
婚約破棄されたアリシアは潔く身を引くことにした。
婚約破棄という烙印が押された以上、もう結婚は出来ない。
ならば一人で生きていくだけ。
アリシアは王都の外れにある小さな家を買い、そこで暮らし始める。
「あぁ、最高……ここなら一人で自由に暮らせるわ!」
初めての一人暮らしを満喫するアリシア。
趣味だった刺繍で生計が立てられるようになった頃……。
「アリシア、頼むから戻って来てくれ! 俺と結婚してくれ……!」
何故か元婚約者がやってきて頭を下げたのだ。
しかし丁重にお断りした翌日、
「お姉様、お願いだから戻ってきてください! あいつの相手はお姉様じゃなきゃ無理です……!」
妹までもがやってくる始末。
しかしアリシアは微笑んで首を横に振るばかり。
「私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに」
家族や婚約者は知らないことだったが、実はアリシアは幸せな生活を送っていたのだった。
断罪された公爵令嬢に手を差し伸べたのは、私の婚約者でした
カレイ
恋愛
子爵令嬢に陥れられ第二王子から婚約破棄を告げられたアンジェリカ公爵令嬢。第二王子が断罪しようとするも、証拠を突きつけて見事彼女の冤罪を晴らす男が現れた。男は公爵令嬢に跪き……
「この機会絶対に逃しません。ずっと前から貴方をお慕いしていましたんです。私と婚約して下さい!」
ええっ!あなた私の婚約者ですよね!?
わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。
朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」
テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。
「誰と誰の婚約ですって?」
「俺と!お前のだよ!!」
怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。
「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる