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9話
しおりを挟む「ウィリアムズ公爵」
「国王様」
部屋の中にはすでにアラン・ウィリアムズ公爵がいた。
国王が名前を呼ぶとアランは立ち上がり、国王へ挨拶をする。
どちらとも表面上はにこやかな笑みを浮かべているが、アランは内心腸が煮えくり返り、また国王は冷や汗が止まらなかった。
国王は自分から切り出すことにした。
「ライアンから全て聞いている」
「はい」
「本当に、申し訳なかった。これはライアンの独断専行で王家の意思ではないことを分かって欲しい」
国王は頭を下げる。
普通は身分が下の貴族に頭を下げることはないが、今回は内容が内容だけに頭を下げざるを得ない。
「ソフィア嬢に側妃にしようとしたうえ、婚約破棄を突きつけた、と聞いた」
「はい。その上ソフィアに手を上げた、とも聞いております」
国王は初めて聞く話に戸惑った。
「今何と……? 手を上げた……?」
「はい。ソフィアが側妃にすることを抗議したら、手をあげて怒鳴りつけた、とソフィアからはそう聞いています」
国王はライアンから聞いていた話とは全く違うことに激しく動揺した。
そして、もしかしたら……と、アランに質問する。
「公爵、私の知っているライアンから聞いていた話とはかなりかけ離れている。どうかソフィア嬢が話していたことを教えてほしい」
「了解しました」
そしてアランは話した。
側妃にする、とすでに決定事項のように言われていたこと。側妃にすることに抗議したら激しい非難と罵声を浴びせられたこと。そして暴力をふるわれたこと。
国王はその話を聞いて、怒りに身を震わせる。
「ライアン……! この私に嘘をついてたのか……!」
「如何されるおつもりですか?」
今度はアランが国王に尋ねる。
もちろんライアンをどうするのか、という質問だ。
国王はゴクリと唾を飲み込んだ。
ここで対応を間違えれば、国内で大きな力を持つ公爵家と争うかもしれないからだ。
「もちろん、廃嫡することは免れないだろう」
「そうですね。大事なのはそれからをどうするか、ですか」
「ああ。だが流石にライアンがここまで酷い嘘をついているとは思わなかった。──だから、全て公爵が決めてほしい。拷問するなり、好きにしてもらっても構わない」
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