冤罪で婚約破棄したくせに……今さらもう遅いです。

水垣するめ

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20話

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「……」

 マイケルはサラの気迫に押され、口を開くことが出来なかった。

「遊びたいのに自由も無くて、ひたすら厳しい教育で、将来は全部決まっていた!」

 サラは胸を抑え、悲痛に叫ぶ。
 先程までのマイケルの怒声が陳腐に聞こえるような、サラの魂の叫びだった。

「私は我慢してきたんだ!ずっと!それなのにお前は私に冤罪を着せて、全部無駄にした!人生を台無しにされたのは私の方だ!」

 サラの言葉には本心が宿っていた。

「今までの人生が無駄になった時の私の気持ちが分かるか!分からないでしょう!?そのくせに自分は台無しにされたなんて二度と言うな!」

「…………」

「返しなさいよ!私の人生を返して!努力を返して!自由を返して!」

 サラの目から涙が溢れる。
 それはサラ自身がずっと我慢していたものだった。

「……そんなの」

 マイケルは呟く。

 マイケルは知らなかった。
 サラがかけてきた時間も、努力も。
 ずっと表面しか見ていなかった。

 サラがどれだけ人生をかけていたのかを、マイケルは理解していなかった。

 マイケルは初めて正しく自分のしてきたことの愚かさを理解した。
 マイケルがしていたのは、サラの人生を壊すことだったのだ。

「………………そんなの、知らなかった」

 マイケルは言い訳のように呟いた。
 サラは軽蔑の目を向ける。

「だから、あなたは今そうなっているんです」

 マイケルは項垂れる。
 先程までどうにかして拘束を逃れようとしていが、もう暴れることはしなかった。
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