冤罪で婚約破棄したくせに……今さらもう遅いです。

6話

「それでは失礼します」

　ローレンスと生徒会の役員はそういうと生徒会室から出て行ってしまった。

「あっ、おい！」

　マイケルはローレンスの背中に声をかけるが無視される。

　生徒会室がマイケルとララだけになる。

　マイケルが完全に人望を無くした瞬間だった。

「だ、大丈夫よね？こんなことでどうにもならないわよね？」

　ララが静かになった部屋で不安げに呟く。

　それはマイケルの権力が無くなることを危惧した、ただ我が身可愛さから出た言葉だった。
　しかしマイケルは都合よく自分を心配した言葉だと変換する。

「だ、大丈夫だ。俺は王子なんだぞ。こんな人がいなくなったくらいで権力が無くなる訳がない」

「そ、そうよね！良かったわ！あなたが心配だったの！もしかしたら国王様に叱られるんじゃないかって！」

「ハハ、大丈夫だ。たかが人が減っただけだろう？これからまた増やせばいいさ」

　そうだ。自分は王子なのだから人材なんてすぐに集まるはずだ。

　大丈夫、大丈夫とマイケルは自分に言い聞かせる。

　そして安心すると、今度はローレンスたちに対して怒りが湧いてきた。

「クソっ！ローレンスのやつ、何勝手なことをしてくれたんだ！」

　生徒会室から出ていいた顔を思い出してマイケルは歯軋りをする。

「俺が国王になったらあいつの家を潰してやる！どんなに泣いて謝っても許してやらないぞ！」

「そうよ、その調子よ！」

　ララはマイケルを鼓舞する。
　しかし心の中では別のことを考えていた。

（でも、なんかヤバそうだし、他の有能そうな男の人でも探し始めようかな……）

　女の勘で不穏な空気を感じ取ったララはすでにマイケルからほかの男に乗り換える算段をしていた。

「もちろん、ララの家は公爵家だ。宰相の地位も用意してやるからな」

　だが、甘い餌を目の前に吊るされたララはとたんに機嫌を良くしてマイケルへと擦り寄った。

「それでこそマイケル王子ですわ。私、あなたに一生ついていきます！」

　ララは感激したふりをして涙を流す。

　ララは自分が口を滑らせたことに気づいて慌てて取り繕う。
　幸いなことに、鈍感なマイケル気づいていなかった。