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1話
しおりを挟む「サラ・ゴーマン。お前との婚約は破棄する」
私の婚約者である第一王子のマイケル・フェネルは突然婚約破棄を突きつけてきた。
私は困惑していた。
婚約破棄をされる理由が思いつかなかったからだ。
「な、なぜですか」
「まだとぼけるつもりか?」
マイケルは軽蔑した視線を私へと向けてくる。
「お前はずっとこの数ヶ月、ララに対して嫌がらせを続けて来ただろう」
「わ、私、ずっとこの人に脅されて来たんです!怖くてっ……!」
ララと呼ばれた女子生徒は目に涙を浮かべながらマイケルへと抱きつく。
彼女には見覚えがあった。
確か数ヶ月前からマイケルにつきまとっている男爵家の女子生徒だ。
私の記憶では、ララがあまりにも婚約者持ちのマイケルに対してくっついているので、何回か注意をしたことがある。
マイケルにあまり近づかないように注意したことはあるが、脅したことなど一切ない。
完璧に冤罪だった。
「私、脅してなんかいません」
「この後に及んでまだ嘘をつくか!」
「それに最近、とうとう手を出されました!顔を叩かれたんです!」
そう言ってララはマイケルへと抱きつく。
しかしララの顔には傷ひとつついていなかった。
マイケルはララに抱きつかれたことで怒声をあげる。
「ララもこう言ってるぞ!」
「なんだ?」
「王子が公爵様へ婚約破棄をしてるぞ」
「どうしてだ?」
「なんでも男爵家を脅してらしい」
マイケルの怒声を聞きつけて生徒たちが集まってきた。
ここは学園の廊下なのだ。
本来なら、婚約破棄も罪の糾弾も、こんな話は廊下でするべきではない。
それなのにマイケルが廊下という人が大勢いる場所で私を糾弾する理由は一つ。
私を晒し者にするつもりだからだ。
「私、『王子に近づくなら男爵家を罪に問う』と言われました!」
ララは私のことを涙目で指差す。
「っ、それは!」
確かに私は似たようなこと言った。
しかし実際は「王子には婚約者がいますので、これ以上不用意に誤解されるような言動を繰り返せば、男爵家のほうが罰されることになりますよ」という内容だ。
つまり、私がしたのは親切心からのただの忠告だ。
だからララの言ったことは故意に言葉が切り取られ、改変されている。
しかしマイケルはそれを図星だと受け取ったのか、勢いを上げて糾弾し始めた。
「ハッ!ほら図星だろう。公爵家であることをたてに男爵家を脅すなど最低の行為だ」
周りの生徒たちはマイケルとララの言葉を信じきっており、頷いている。
しかしそれを責めることはできない。
王子という立場の人間が私を悪だと断じているのだ。まさか冤罪だとは思わないだろう。
「違います!私はやっていません!」
「黙れ!もう証拠は出ているんだ!」
証拠なんてララの私の切り取った証言だけだ。手を上げた証拠なんてどこにもない。
しかしマイケルは私を断罪する。
「俺はそんな人を脅し、手をあげるようなクズとはこれ以上婚約できない。よって、お前との婚約は破棄する!」
マイケルは高らかに宣言した。
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