20 / 45
1章
20話
しおりを挟むそれは私たちが派閥を立ち上げたことが公になり、少し浸透してきた頃だった。
クレアの派閥に入りたい、という生徒が訪ねてくるようになった。
先日のエリザベスのように公爵家であるクレアの派閥に加わりたいという人間は少なくない。
しかし私たちはどれも断っていた。
理由はクレアが女装しているからだ。元々この派閥はお互いの秘密を守るために出来たようなもので、特にクレアの秘密は派閥内で隠し通すのは厳しい。
そのため誰が来たとしても全て断っているのだ。
ある日のこと。
「私、クレア様の派閥に入りたいんです」
「ごめんなさい。私たちは派閥をこれ以上広げるつもりはないんです」
クレアは申し訳無さそうに派閥入りの願いを断る。
この数日間で二桁は入りたいと来たので、すでにクレアは断り方のプロになっていた。
「そうですか……分かりました」
今回の女子生徒も私たちが一人も受け入れていないことを聞いていたためか、ダメもとで期待せずに来ていたよう、で特に食い下がることはせずに引き下がった。
しかしその代わりに質問をしてきた。
「あの……本当にお二人は派閥なんですか?」
「え? それはどういう……」
私は彼女に質問する。
「あっ、申し訳ありません! つい気になって……」
「大丈夫ですよ。それより、どうしてあなたはそう思ったのですか?」
彼女は不躾な質問をしたことに気づいたのか焦り始めたが、クレアは優しい笑みで気にする必要は無いと伝え安心させる。
「その……失礼ですが、お二人は学園では一緒に行動なさっていますが、学園の外では一切一緒に行動しているところを見ないので、もしかして派閥は見せかけなんじゃないか、という噂が……」
「「…………」」
私とクレアは揃って黙り込む。
図星だった。
「わ、私達はきちんとした派閥ですよ?」
「え、ええ、勿論ですクレア様」
私達は今更になって仲がいいフリをするが、他人から見ればとても嘘っぽく見えるだろう。
「もしかしてその噂、結構広まっていたりしますか……?」
「はい……」
クレアが質問すると彼女はこくりと頷いた。
(まずいな……)
クレアが小声で呟いた。
(まずいですね……)
私も頷いた。
23
お気に入りに追加
1,513
あなたにおすすめの小説

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。
公爵令嬢エイプリルは嘘がお嫌い〜断罪を告げてきた王太子様の嘘を暴いて差し上げましょう〜
星里有乃
恋愛
「公爵令嬢エイプリル・カコクセナイト、今日をもって婚約は破棄、魔女裁判の刑に処す!」
「ふっ……わたくし、嘘は嫌いですの。虚言症の馬鹿な異母妹と、婚約者のクズに振り回される毎日で気が狂いそうだったのは事実ですが。それも今日でおしまい、エイプリル・フールの嘘は午前中まで……」
公爵令嬢エイプリル・カコセクナイトは、新年度の初日に行われたパーティーで婚約者のフェナス王太子から断罪を言い渡される。迫り来る魔女裁判に恐怖で震えているのかと思われていたエイプリルだったが、フェナス王太子こそが嘘をついているとパーティー会場で告発し始めた。
* エイプリルフールを題材にした作品です。更新期間は2023年04月01日・02日の二日間を予定しております。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。

愛人がいる夫との政略結婚の行く末は?
しゃーりん
恋愛
子爵令嬢セピアは侯爵令息リースハルトと政略結婚した。
財政難に陥った侯爵家が資産家の子爵家を頼ったことによるもの。
初夜が終わった直後、『愛する人がいる』と告げたリースハルト。
まごうことなき政略結婚。教会で愛を誓ったけれども、もう無効なのね。
好きにしたらいいけど、愛人を囲うお金はあなたの交際費からだからね?
実家の爵位が下でも援助しているのはこちらだからお金を厳しく管理します。
侯爵家がどうなろうと構わないと思っていたけれど、将来の子供のために頑張るセピアのお話です。

婚約破棄された令嬢が呆然としてる間に、周囲の人達が王子を論破してくれました
マーサ
恋愛
国王在位15年を祝うパーティの場で、第1王子であるアルベールから婚約破棄を宣告された侯爵令嬢オルタンス。
真意を問いただそうとした瞬間、隣国の王太子や第2王子、学友たちまでアルベールに反論し始め、オルタンスが一言も話さないまま事態は収束に向かっていく…。

この国では魔力を譲渡できる
ととせ
恋愛
「シエラお姉様、わたしに魔力をくださいな」
無邪気な笑顔でそうおねだりするのは、腹違いの妹シャーリだ。
五歳で母を亡くしたシエラ・グラッド公爵令嬢は、義理の妹であるシャーリにねだられ魔力を譲渡してしまう。魔力を失ったシエラは周囲から「シエラの方が庶子では?」と疑いの目を向けられ、学園だけでなく社交会からも遠ざけられていた。婚約者のロルフ第二王子からも蔑まれる日々だが、公爵令嬢らしく堂々と生きていた。

見知らぬ子息に婚約破棄してくれと言われ、腹の立つ言葉を投げつけられましたが、どうやら必要ない我慢をしてしまうようです
珠宮さくら
恋愛
両親のいいとこ取りをした出来の良い兄を持ったジェンシーナ・ペデルセン。そんな兄に似ずとも、母親の家系に似ていれば、それだけでもだいぶ恵まれたことになったのだが、残念ながらジェンシーナは似ることができなかった。
だからといって家族は、それでジェンシーナを蔑ろにすることはなかったが、比べたがる人はどこにでもいるようだ。
それだけでなく、ジェンシーナは何気に厄介な人間に巻き込まれてしまうが、我慢する必要もないことに気づくのが、いつも遅いようで……。

見た目普通の侯爵令嬢のよくある婚約破棄のお話ですわ。
しゃち子
恋愛
侯爵令嬢コールディ・ノースティンはなんでも欲しがる妹にうんざりしていた。ドレスやリボンはわかるけど、今度は婚約者を欲しいって、何それ!
平凡な侯爵令嬢の努力はみのるのか?見た目普通な令嬢の婚約破棄から始まる物語。

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる