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1章
20話
しおりを挟むそれは私たちが派閥を立ち上げたことが公になり、少し浸透してきた頃だった。
クレアの派閥に入りたい、という生徒が訪ねてくるようになった。
先日のエリザベスのように公爵家であるクレアの派閥に加わりたいという人間は少なくない。
しかし私たちはどれも断っていた。
理由はクレアが女装しているからだ。元々この派閥はお互いの秘密を守るために出来たようなもので、特にクレアの秘密は派閥内で隠し通すのは厳しい。
そのため誰が来たとしても全て断っているのだ。
ある日のこと。
「私、クレア様の派閥に入りたいんです」
「ごめんなさい。私たちは派閥をこれ以上広げるつもりはないんです」
クレアは申し訳無さそうに派閥入りの願いを断る。
この数日間で二桁は入りたいと来たので、すでにクレアは断り方のプロになっていた。
「そうですか……分かりました」
今回の女子生徒も私たちが一人も受け入れていないことを聞いていたためか、ダメもとで期待せずに来ていたよう、で特に食い下がることはせずに引き下がった。
しかしその代わりに質問をしてきた。
「あの……本当にお二人は派閥なんですか?」
「え? それはどういう……」
私は彼女に質問する。
「あっ、申し訳ありません! つい気になって……」
「大丈夫ですよ。それより、どうしてあなたはそう思ったのですか?」
彼女は不躾な質問をしたことに気づいたのか焦り始めたが、クレアは優しい笑みで気にする必要は無いと伝え安心させる。
「その……失礼ですが、お二人は学園では一緒に行動なさっていますが、学園の外では一切一緒に行動しているところを見ないので、もしかして派閥は見せかけなんじゃないか、という噂が……」
「「…………」」
私とクレアは揃って黙り込む。
図星だった。
「わ、私達はきちんとした派閥ですよ?」
「え、ええ、勿論ですクレア様」
私達は今更になって仲がいいフリをするが、他人から見ればとても嘘っぽく見えるだろう。
「もしかしてその噂、結構広まっていたりしますか……?」
「はい……」
クレアが質問すると彼女はこくりと頷いた。
(まずいな……)
クレアが小声で呟いた。
(まずいですね……)
私も頷いた。
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