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1章
19話
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ハインツの背中を見送ってクレアは舌打ちをする。
「チッ……すまなかった。父上とお前を会わせるつもりはなかったんだが」
クレアが珍しく謝って来たので調子を崩されながらも私は否定した。
「いえ、大丈夫ですよ。少し挨拶をしただけですし」
「いや、俺の落ち度だ。父上とお前を会わせてしまった。この接触を利用されるかもしれないのに」
「えっ? でも挨拶しただけですよ?」
「いつもは滅多に屋敷の中を歩かないくせに、今日だけ歩いているなんておかしい。きっと俺を出汁にして大商会の会長のお前とコネを作ろうとしてたんだ」
ハッとクレアは自嘲する。
「やっぱり俺は父上にとってただの道具でしか無いんだよ。権力者とコネを作るためのな」
「そうでしょうか」
「そうだ」
クレアは断言しているが、私はそうは思わなかった。
ハインツのクレアに接する態度は出来損ないの息子を差別していると言うよりも、もっと違う、どこか接し方を迷っているように見えたのだ。
その姿がどこかで見たことがある姿と重なっているように思えるのだが、それが思い出せない。
と、考えているとクレアがフッと笑う。
クレアなりに気持ちを切り替えたのだろう。いつもの調子に戻っていた。
「まあいいさ。こんな扱いには慣れてる。それで、ドレスはいつ頃できる?」
「特急でパーティーの三日前までには仕上げます」
「じゃあ割り増しで料金は払うことにしよう」
「ありがとうございます。これからもホワイトローズ商店をよろしくお願いします」
「ああ、また」
門の前まで来ると私は馬車に乗り込んだ。
馬車の窓から見るクレアは笑っていたが、どこか悲しそうな目をしていた。
「すみません。止めてもらっていいですか」
私は馬車を止めてもらうと馬車から降りてクレアの元へと小走りで駆け寄る。
「えっ、どうした?」
急に馬車から降りてきた私にクレアは疑問を持った顔になった。
「私は、クレアさんの協力関係です」
「ああ」
クレアは私が急に何故そんなことを言い出したのかが分からないのか、不思議そうな顔で首をひねっていた。
「でも、不本意ではありますが……それ以前に友人と言えなくも、無いです」
誰かに向かって面と向かってお前は友人だ、と言うのは少々気恥ずかしい。
私は目を逸らす。
「……ああ、ありがとう」
クレアは私の言いたいことが分かったのか少し間を開けてから微笑んだ。
「それじゃ、また学園で」
照れくさいので私は逃げるように別れを告げて馬車に乗り込む。
窓から見るクレアは、さっきよりは明るい顔になっていた。
「チッ……すまなかった。父上とお前を会わせるつもりはなかったんだが」
クレアが珍しく謝って来たので調子を崩されながらも私は否定した。
「いえ、大丈夫ですよ。少し挨拶をしただけですし」
「いや、俺の落ち度だ。父上とお前を会わせてしまった。この接触を利用されるかもしれないのに」
「えっ? でも挨拶しただけですよ?」
「いつもは滅多に屋敷の中を歩かないくせに、今日だけ歩いているなんておかしい。きっと俺を出汁にして大商会の会長のお前とコネを作ろうとしてたんだ」
ハッとクレアは自嘲する。
「やっぱり俺は父上にとってただの道具でしか無いんだよ。権力者とコネを作るためのな」
「そうでしょうか」
「そうだ」
クレアは断言しているが、私はそうは思わなかった。
ハインツのクレアに接する態度は出来損ないの息子を差別していると言うよりも、もっと違う、どこか接し方を迷っているように見えたのだ。
その姿がどこかで見たことがある姿と重なっているように思えるのだが、それが思い出せない。
と、考えているとクレアがフッと笑う。
クレアなりに気持ちを切り替えたのだろう。いつもの調子に戻っていた。
「まあいいさ。こんな扱いには慣れてる。それで、ドレスはいつ頃できる?」
「特急でパーティーの三日前までには仕上げます」
「じゃあ割り増しで料金は払うことにしよう」
「ありがとうございます。これからもホワイトローズ商店をよろしくお願いします」
「ああ、また」
門の前まで来ると私は馬車に乗り込んだ。
馬車の窓から見るクレアは笑っていたが、どこか悲しそうな目をしていた。
「すみません。止めてもらっていいですか」
私は馬車を止めてもらうと馬車から降りてクレアの元へと小走りで駆け寄る。
「えっ、どうした?」
急に馬車から降りてきた私にクレアは疑問を持った顔になった。
「私は、クレアさんの協力関係です」
「ああ」
クレアは私が急に何故そんなことを言い出したのかが分からないのか、不思議そうな顔で首をひねっていた。
「でも、不本意ではありますが……それ以前に友人と言えなくも、無いです」
誰かに向かって面と向かってお前は友人だ、と言うのは少々気恥ずかしい。
私は目を逸らす。
「……ああ、ありがとう」
クレアは私の言いたいことが分かったのか少し間を開けてから微笑んだ。
「それじゃ、また学園で」
照れくさいので私は逃げるように別れを告げて馬車に乗り込む。
窓から見るクレアは、さっきよりは明るい顔になっていた。
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