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1章
15話
しおりを挟む「えっ……!?」
エリザベスの目が驚愕に見開かれる。
「これはどういうことですか? 何故私の派閥の人間が暴力を振るわれそうになっているのでしょう」
「ク、クレア様!? これは違うんです! 誤解です!」
エリザベスは必死に言い訳を始める。
しかしクレアは見え透いた言い訳を聞き入れる訳が無い。
「どうやらあなた達は私の派閥に入りたかったようですが……私の派閥の人間に暴力を振るうということは、私に喧嘩を売るということですよね?」
「っ!!」
「残念ながら、あなた方を派閥に入れることは出来ません」
「ま、待ってください! そこの男爵家如きが言ったことは全部妄想に過ぎませんわ! 私達は派閥を乗っ取ろうだなんて考えてません!」
エリザベスは私を指差して必死に弁明する。ついでに私も貶された。
「男爵家如き? あなたは今から入る派閥の人間を貶すんですね」
「うっ……!」
「そんな人間は私の派閥には要りません。早くどこかへ行ってください」
「し、失礼しますわ……!」
もうクレアの派閥に入ることは無理だと悟ったのか、エリザベスの派閥は足早に去っていった。
「待ちなさい」
しかしクレアはその後ろ姿を呼び止めた。
そしてエリザベスに近づくと、力強く睨んだ。
「彼女は私の大切な派閥の仲間です。二度と貶すことは許しません」
「わ、分かりましたわ……」
有無を言わさぬ迫力にエリザベスはコクコクと頷く。
去り際にエリザベスが睨んでくる。私のせいでは無いので逆恨みしないで欲しい。
「ありがとうございますクレアさん……」
私はクレアにお礼を言う。
「ああ、大丈夫だ。そもそも派閥に入れる気なんて無かったから、断る口実ができて助かったよ」
「お役に立ててこうえいです。それにしても、私をそんなに大切に思ってくれてたんですね……」
私は感慨深くポッと赤く頬を染めて手を当てる。
すると今になって思い返すと恥ずかしくなってきたのか、クレアは焦ったように弁明し始めた。
「ち、違うぞ! これはあいつを脅すためで……!」
「『彼女は私の大切な派閥の仲間です。二度と貶すことは許しません』キザすぎる台詞ですけど、格好良かったです……」
私はキリッとした表情でクレアの言葉を繰り返し、またわざとらしく頬を染めた。
「だから違うって! これからお前を馬鹿にされてたら俺まで舐められるから強めに釘を刺しただけで……」
「はいはい。分かってますよ。“大事な仲間”ですからね?」
大事な仲間、という言葉を強調する。
「なっ!? もういい! せっかくお前の為にやってやったのに恩知らずめ!」
クレアは怒って歩いていってしまった。
「あー……、やっちゃった」
しまった。流石にやり過ぎた。
私は照れ隠しのために少しからかい過ぎてしまったことを反省する。
「明日きちんと謝ろう」
商会のスイーツを奢ろう。
私はそう決意すると、帰宅のために振り返る。
そして、私はふと気づいて頬に手を当てる。
頬がまだ熱い。
「あ、あれ? もういいのに……」
手でパタパタと仰ぐが、熱は全く収まる気配がない。
その後しばらくの間、クレアをからかう為の演技だったのに何故か未だ熱くなったままの頬をなんとか治そうと奮闘した。
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