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1章
11話
しおりを挟むそして散歩も終わり、授業が始まった。
この時間の授業は歴史だ。前の世界で学校に通っていた頃は歴史の授業なんて眠くて聞いていなかったが、この世界ではきちんと授業を受けている。
いつも家では商会の仕事ばかりしているので、授業はしっかりと受けないと成績がとんでもないことになるからだ。
「そうして私たちは北の部族を取り込むことに成功しました」
髭が胸の辺りまで伸びているおじいちゃん先生がゆっくりとしたテンポで語る。
ついウトウトしてしまいがちだが、私は気合いを入れて起きる。
ふと隣を見ると、クレアがうっつらうっつらと舟を漕いでいた。どうやらクレアも先生の声に眠気を誘われたようだ。
(本当に喋らなければ可愛いのに……)
寝ているクレアの顔はまるで天使のように可愛かった。
でも、私は真面目に授業を受けているのにクレアが寝ているのが何だかむかついたので、私はクレアの脇腹をツンツンと突いて起こした。
するとクレアはビクッ!と体が跳ねて飛び起きる。
そして焦ったように周囲を見渡して、ニヤニヤと私が笑っているのを見つけると、クレアは拳を握りしめ小声で怒鳴ってくる。
「何すんだお前……っ!」
私も小声で答える。
「派閥のリーダーがちゃんと起きてないと部下に示しがつかないじゃないですか」
「大きなお世話だ! それにお前は俺のこと全く尊敬してないだろ!」
「もちろんです。起こしたのはただの嫌がらせです」
「お前、ふざけるなよ……!」
「あっ、暴力ですか? やめて下さい! パワハラですよ!」
「そこの二人、私語はしないようにね」
「「はい……」」
内容までは聞こえていなかったはずだが教壇からは私達が小声で騒いでいるのは目立っていたようで、おじいちゃん先生に優しく注意されてしまった。
私たちはしゅんとしてちゃんと授業を聞いた。
そしてそのまま授業が終わると今度は昼休み。昼食の時間だ。
私は何も考えずに椅子から立ち上がると、食堂へと向かう。
しかし食堂に入ろうとした瞬間、私はクレアとの約束を思い出した。
「あ、そうだ。今日からクレアさんと食べる約束だった……」
今日から派閥を作ったので、昼食は一緒に摂ることになっていたのだ。
基本的に、派閥のメンバーは一緒に行動する。それは派閥としての力を見せつけるのと同時に、身を守るためでもある。
派閥から離れて一人で行動すると、他の派閥のメンバーにどんなことをされるか分からないからだ。
そのため私はクレアに悪いことをしたな、と思いつつ急いで戻る。
クレアは教室で待っているはずだ。
そして教室に戻り、ドアを開けるとクレアはやっぱり教室に残っていた。
しかしクレアが椅子に座っている隣で、もう一人立っていた。
ルーク王子だ。
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