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1話
しおりを挟む「お父様! またお姉様が虐めてきたの!」
妹のソーニャの高い鳴き声が屋敷中に響いた。
私はまたか、とため息を漏らす。
わざとらしく泣くフリをしているソーニャは父の部屋へと入っていく。
私はそれを何もせずに見送った。
そして少しソーニャと父が話す声が聞こえて、その後すぐに怒り心頭の父が部屋から出てきて私に怒鳴った。
「ウェンディ! またソーニャを虐めただろう!」
「いえ、私は何もしていません」
「嘘をつくな! ソーニャが虐められたと言っているんだぞ!」
「ソーニャが嘘をつくわけないでしょう!」
私はまたため息をついた。
いつもこれだ。
父も母も妹だからという理由で可愛がり、ソーニャの話だけ信じて、私の話はいっこうに信じてくれない。
私とソーニャは一つしか歳が離れていないのに。
そしてそれを悪用しているソーニャは、嫌なことがあるとこうして私に冤罪をかけてきた。
「だから、私は何もしていません」
「まだ嘘をつくのか! もういい! お前は今日飯抜きだ! ちょっとは反省しろ!」
父はいっこうに話を聞かずに私に罰を与えた。
それを見たソーニャが父の背中から私を見てけらけらと笑っている。
これは私が十歳の頃の話。
◯
そして、私が十六歳になった頃。
ソーニャへの両親の贔屓はまだ続いていた。
それだけではなく、酷くなっていた。
ソーニャが欲しいと言われれば全て与えられ、私は姉だからと我慢させられる。
ソーニャは学園に通えたが、私は通わせて貰えなかったので、自分で勉強するしかなかった。
そしてソーニャは何かと理由をつけて私から物を奪っていった。
それを父や母に訴えても「姉だから我慢しろ」と言われて、泣き寝入りするしかなかった。
驚いたことに、ソーニャの私にしていることを虐めだとは認識していないようだった。
それどころか、「姉だから」という理由で全部無視された。
全部、ぜんぶ姉だから。
次第に私の部屋からはベットと机とソーニャが読むのを嫌った本以外には何も無くなった。
ソーニャの私に対しての虐めは次第に加速していき、ついにある日。
「ウェンディ! お前をこの家から追放する!」
父からの突然の追放宣言。
私は呆然としてそれを聞いた。
「なぜ、ですか……」
「お前の度重なるソーニャへの虐めはもう我慢ならん! こんな子供は勘当する!」
「悪魔みたいな子供ね! こんなに純真なソーニャを何年も虐めるなんて!」
ソーニャへの虐め? 私が?
私の何も無くなったあの部屋を見て、まだそんなことを言うのか。
私は絶望した。
この家にいても、何も与えられず、ソーニャからは虐められつづけられる。
それを理解したのだ。
「……わかりました」
そうして、自然と私は追放を受け入れた。
ソーニャが父の後ろで必死に笑いをこらえている。
ついに家から追放される何も抵抗出来ない私がおかしくてたまらないのだろう。
その表情は愉悦と嘲笑に染まっていた。
(ソーニャ、お父様。あなた達だけは絶対に許さないわ……)
私は自分の生まれた家を出た。
この家にいつか復讐することも誓って。
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