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26話
しおりを挟む私とルイスは急ぎ足で学園の廊下を歩く。
目指すのは医師が在中している医務室だ。
「早く手当を……!」
「メアリー、落ち着いて。ただ手の甲を切っただけだ。大した怪我じゃない」
「でも……」
私のせいでルイスは怪我をしたのだ。
しかも血が出ている。
こんなハンカチじゃなくて今すぐにしっかりと手当をしないと……。
「メアリー」
気づけば、すぐ近くにルイスの顔があった。
「大丈夫だから」
ルイスは安心させるように、優しく声をかける。
その時、初めて自分が取り乱していたことに気づいた。
「申し訳ありません……」
「しょうがないさ。命を狙われていたんだ。誰だって焦るさ」
それから私たちは歩くスピードを落とした。
そして医務室へ到着すると医師にルイスの切り傷を手当してもらう。
幸い傷は浅く、すぐに治るだろうと言われた。
私は安心してほっと息を吐く。
「よかった……」
「心配してくれてありがとう。少しあるこうか」
ルイスが微笑む。
「え、でも……」
ルイスは怪我をしている。
「怪我はもう大丈夫。血も止まったから歩くぐらいなら問題ないよ」
「わかりました……」
私は了承する。
そして私たちは学園の庭園にやってきた。
「それにしても、ロビンはどこに隠れていたんでしょうか」
「恐らく下水道やスラム街に隠れていたんだろう。ロビンからは下水の匂いがしていた。下水道やスラムはさすがに兵士たちも探すことは出来ないからね」
確かにあの時は緊急事態で気にしていなかったが、思い返せばロビンからは異臭が漂っていた。
ロビンはそこで一週間隠れながらゴミなどを食べて飢えを凌いでいたのだろう。
元貴族だったはずなのにそこまでするなんて、相当な執念だ。
「でも本当に良かったです。もし私を守ってルイス王子に何かあったら、私どうしようかと……」
「はは……気にしなくても」
ルイスは言いかけた途中で言葉を遮り、少し考えた後、ニヤリと笑った。
「いや。やっぱり許さないことにしよう」
「えっ!?」
ルイスから発せられた予想外の言葉に私は驚きの声をあげる。
「この傷は後が残るかもしれないから、責任を取ってもらうことにするよ」
「え?え?」
さっきまでとはまるで真逆のことを言うルイスに、私は困惑した。
「だから、責任をとって僕と婚約してくれ。メアリー」
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