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11話
しおりを挟む「お前たち! 女性一人を複数人で囲んで何をしている!」
その場にいた全員がルイス王子へと振り向く。
その隙に、私は掴んでいる腕を振り払って、ルイスの元へと逃げ出した。
ルイスの胸へ私は飛び込む。
本来なら婚約してもいない男性の胸へ飛び込むなんてはしたないのでしないが、この時は襲われるかもしれないという恐怖心で動揺していたのか、無意識にルイスの元へと走っていた。
「王子っ……!」
私のはしたない行動にもルイスは応えてくれて、抱きとめるように私を受け止めた。
「なっ……! 手が震えているじゃないか!」
ルイスは握っている私の手が恐怖で震えていることに気づいた。
ルイスはロビンと取り巻きたちを強く睨みつける。
「まさかお前たち、メアリーへ乱暴しようとしていたんじゃないだろうな!」
ロビンと取り巻きはルイスの言葉に図星をつかれたようにビクリと肩を震わせる。
しかしロビンはすぐに言い訳を始めた。
「ち、違います。私たちはただ話をしていただけで……なぁ、そうだよな?」
「ええ、そうです。少し質問をしていただけで」
「乱暴だなんてそんな……」
「では、何故メアリーはこれほどまでに怯えているんだ」
「存じません」
「私たちは何もしていません」
ロビンと取り巻きは互いに顔を見合ってはぐらかす。
「私、あの人たちに襲われそうになりました」
私はルイスへと真実を伝える。
「そうか……よく教えてくれた」
ルイスの声に一層怒りが篭った。
しかしロビンは私を罵倒し始めた。
「冤罪だ!」
「この売女め! まだ嘘を重ねるのか!」
「醜い言いがかりをするな! 今すぐに真実を話せ!」
「そうか、なら……そこの君、今何があったか教えてくれ。これは王族命令だ。偽証は許されないものと考えてくれ」
ルイスは野次馬の生徒に質問した。
口調は優しいが、凛と威厳の篭った声。
嘘をつくなら容赦しない、と言外に伝えていた。
「なっ!? や、やめ──」
「黙れ! 君には今聞いていない!」
ロビンは反射的にまずいと思ったのか、静止しようとしたが、ルイスは大声でロビンの言葉を遮った。
そして王族に命令されて逆らうわけにはいかない。質問された生徒は包み隠さず真実を話した。
「え、えーと……ロビン様を含む彼らが彼女を囲んで恐喝、罵倒した後彼女の服へと掴みかかり、罰を下す、と言っていました」
「だ、そうだが」
ルイスはロビンへと向き直る。
ロビンは冷汗をかき始めた。
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