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 四大精霊?!
 あの聖書に出てくる精霊の頂点?!
 ルーチェって、そんなにすごかったの?!

「ルーチェ、本当なの?!」

「まぁ……」

 ルーチェは自分の事を知られたくなかったのか、不満そうに唇をとがらせる。
 その仕草で四大精霊だといっても、あくまでルーチェなんだ、と少し安心した。

 落ち着きをある程度取り戻したギルド長が興奮気味に息を吐く。

「四大精霊を使役出来るとは、君は精霊巫女の中でも規格外のようだ。君の対応について少し時間を貰ってもいいだろうか?」

「あ、はい」

 対応とか、何のことか分からなかったが、私は取り敢えず返事を返す。
 私自身、状況を整理する為に時間が欲しかった。

「では改めて後日連絡する。それではまた」

 ギルド長は別れの挨拶をするとさっさっと部屋から出ていった。
 ルニエさんもそれに続いて、お辞儀をすると扉から出ていく。

 そうして部屋には私とルーチェが残された。
 少し沈黙があって、ルーチェが私に質問をする。

「どうおもった?」

「どうって?」

「ボクのこと」

 私を見つめるルーチェの目は、いつもとは違いどこか不安そうだった。
 それが少し微笑ましくて、私はふっと笑う。

「別に何も変わらないよ。ルーチェは私を守ってくれるんでしょ?」

「……うん。ありがとう」

 ルーチェは私の言葉を噛みしめると、安心したようにわらった。

「さ、帰ろうか。ルーチェ」

「もう平気なの?」

「うん、よく寝て逆に元気になったくらい」

「それはよかった」

 私はベットから立ち上がった。

「さて、今日はどうする?」


★★★


 あれから一ヶ月経った。

 この一ヶ月、色々なことがあった。

 エルフのメイドを雇ったり、奴隷として売られていた獣人族を仲間として入れたり、もう一人の四大精霊に気に入られたり。

 そして私は今ギルドのトップ冒険者となり、とてつもない難易度の依頼をこなす毎日を送っている。
 まるでギルドの職員だった日々に戻ったみたいだ。

 しかし報酬は段違いだ。
 大きな家で食べ物の質も上がり、そこらの貴族よりは良い生活になった。

 毎日が楽しい。
 ふかふかのベットで寝れて、ご飯は美味しくて、笑い合える家族のような仲間がいる。

 両親が生きていた幸せな日々に戻ったみたいだった。

 そうして、私に辛い想いをさせたあのギルドやフィリップ部長の事を忘れていった。

 しかし、ある日のこと。

 私が朝冒険者ギルド『希望の王国』へと向かった時のことだ。

 ギルドの冒険者たちから挨拶されながら建物に入ると、なにやら騒がしい。
 どうやら受付で騒いでいる人がいるようだ。

 私は何故か気になって、騒ぎをみている野次馬たちを掻き分けると、そこにはあのフィリップがいた。
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