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「ん……」
目が覚めると、私はベットの上に寝かされていることが分かった。
いつもよりふかふかとしているので、自分の家の物ではないと分かった。
「アイリ、起きた?」
ベットの脇で座っていたルーチェが私の顔を覗き込む。
「あ、ルーチェ。ここは……?」
私は周りを見る。白い壁と白いベット。
どうやら病院かどこかの病室のようだ。
「ここはギルドの病室だよ」
そうか、私魔力を使い過ぎてここに運ばれたのか。
そして私がギルドで寝ているということは、街を無事に守り切ることが出来たようだ。
ガチャリと扉を開けて誰かが入ってきた。
扉の方を見ると、筋骨隆々で強面の中年男性と、いつも受付をしてくれている女性がいた。
二人は私に向けて自己紹介をした。
「私はギルド長のアルク・エルドレッドだ」
「ルニエ・リリアンです」
二人はベットの側までくると椅子に座った。
私も何となく上体を起こす。
「無理はしなくていい。魔力が切れて倒れたんだ」
「あ、いえ。大分楽になったので」
「そうか。なら、色々と聞きたいことはあるが、まずは今回のスタンピートについて話そう」
ギルド長はそう言うと、いきなり座ったままの状態で私に向かって頭を下げた。
「君がほとんどの魔物を倒してくれたおかげで、この街を護ることができた。ありがとう」
「いえ、大したことはしてないので! 頭を上げてください!」
正直な話、私は本当に何もしてないと思っている。
こうして強い魔法を放てるのもルーチェがいたおかげだ。
だから、こうして頭を下げられると不当な評価を貰っているように感じて落ち着かない。
私が必死でギルド長を説得すると、ギルド長は「分かった」と言って顔を上げた。
「なら次は報酬の話なんだが……」
報酬の話に移ったとたん、ギルド長が言い淀む。
(なんだろう。何か問題が……?)
「君が倒した魔物の正確な数が把握出来ていないんだ。およそ千三百匹ほどだと言うのは分かっているんだが……」
「私達は貴方に正確な数値の報酬を出すことが出来ないんです」
私は不安でドキドキしていた胸を撫で下ろす。
そんなことだったのか。
何かとんでもない事を言われるのかと思った。
「あ、ならおよそで大丈夫です」
元々、私の力で得れると思って無いし。
「重ねて感謝する。これが今回の討伐報酬だ」
ギルド長が隣のルニエさんに合図すると、ルニエさんは小さな紙を取り出した。どうやら金貨の入った袋では無いようだ。
私は紙に書いてある数字を数えていく。
しかし、詰まって何回やってもまた最初から数え直してしまう。
あ、あれ……?
ルニエさんら淡々と説明を続けている。
「素材はほとんど回収出来なかったので報酬の大部分は討伐報酬になります」
この数字、数え間違いかな……?
「約三十億カロ。これが今回の素材の買い取りを含めた討伐報酬となります」
「さ、さんじゅう……」
三十億。
一瞬、気を失いかけた。
いや、気を失ったかもしれない。
「そ、そんな金額本当に貰ってもいいんですか!?」
「ああ、当然の報酬だ。君はこの街を救ってくれたんだからな」
ギルド長は三十億という額にも動じる気配は無い。
恐らく、このぐらいの額でも珍しくないのだろう。
この額をサラッと出せる冒険者がいる『希望の王国』って本当に凄いんだな。
「報酬の話はこれで終わりだな。次に聞きたいのはあのデタラメな力についてだ」
「う……」
ついにこの時がきたか。
ルーチェの方を見る。
何も考えていないような目でどこかを見ていた。
これはきっと、精霊巫女の事を言ってもいいということだろう。
まぁ、黙っていてもどのみち隠し通せることじゃ無い。
「実は、私、精霊巫女っていうものらしくて……」
私はおずおずと言い出した。
「「精霊巫女?!」」
ギルド長とルニエさんの二人が同時に叫んだ。
目が覚めると、私はベットの上に寝かされていることが分かった。
いつもよりふかふかとしているので、自分の家の物ではないと分かった。
「アイリ、起きた?」
ベットの脇で座っていたルーチェが私の顔を覗き込む。
「あ、ルーチェ。ここは……?」
私は周りを見る。白い壁と白いベット。
どうやら病院かどこかの病室のようだ。
「ここはギルドの病室だよ」
そうか、私魔力を使い過ぎてここに運ばれたのか。
そして私がギルドで寝ているということは、街を無事に守り切ることが出来たようだ。
ガチャリと扉を開けて誰かが入ってきた。
扉の方を見ると、筋骨隆々で強面の中年男性と、いつも受付をしてくれている女性がいた。
二人は私に向けて自己紹介をした。
「私はギルド長のアルク・エルドレッドだ」
「ルニエ・リリアンです」
二人はベットの側までくると椅子に座った。
私も何となく上体を起こす。
「無理はしなくていい。魔力が切れて倒れたんだ」
「あ、いえ。大分楽になったので」
「そうか。なら、色々と聞きたいことはあるが、まずは今回のスタンピートについて話そう」
ギルド長はそう言うと、いきなり座ったままの状態で私に向かって頭を下げた。
「君がほとんどの魔物を倒してくれたおかげで、この街を護ることができた。ありがとう」
「いえ、大したことはしてないので! 頭を上げてください!」
正直な話、私は本当に何もしてないと思っている。
こうして強い魔法を放てるのもルーチェがいたおかげだ。
だから、こうして頭を下げられると不当な評価を貰っているように感じて落ち着かない。
私が必死でギルド長を説得すると、ギルド長は「分かった」と言って顔を上げた。
「なら次は報酬の話なんだが……」
報酬の話に移ったとたん、ギルド長が言い淀む。
(なんだろう。何か問題が……?)
「君が倒した魔物の正確な数が把握出来ていないんだ。およそ千三百匹ほどだと言うのは分かっているんだが……」
「私達は貴方に正確な数値の報酬を出すことが出来ないんです」
私は不安でドキドキしていた胸を撫で下ろす。
そんなことだったのか。
何かとんでもない事を言われるのかと思った。
「あ、ならおよそで大丈夫です」
元々、私の力で得れると思って無いし。
「重ねて感謝する。これが今回の討伐報酬だ」
ギルド長が隣のルニエさんに合図すると、ルニエさんは小さな紙を取り出した。どうやら金貨の入った袋では無いようだ。
私は紙に書いてある数字を数えていく。
しかし、詰まって何回やってもまた最初から数え直してしまう。
あ、あれ……?
ルニエさんら淡々と説明を続けている。
「素材はほとんど回収出来なかったので報酬の大部分は討伐報酬になります」
この数字、数え間違いかな……?
「約三十億カロ。これが今回の素材の買い取りを含めた討伐報酬となります」
「さ、さんじゅう……」
三十億。
一瞬、気を失いかけた。
いや、気を失ったかもしれない。
「そ、そんな金額本当に貰ってもいいんですか!?」
「ああ、当然の報酬だ。君はこの街を救ってくれたんだからな」
ギルド長は三十億という額にも動じる気配は無い。
恐らく、このぐらいの額でも珍しくないのだろう。
この額をサラッと出せる冒険者がいる『希望の王国』って本当に凄いんだな。
「報酬の話はこれで終わりだな。次に聞きたいのはあのデタラメな力についてだ」
「う……」
ついにこの時がきたか。
ルーチェの方を見る。
何も考えていないような目でどこかを見ていた。
これはきっと、精霊巫女の事を言ってもいいということだろう。
まぁ、黙っていてもどのみち隠し通せることじゃ無い。
「実は、私、精霊巫女っていうものらしくて……」
私はおずおずと言い出した。
「「精霊巫女?!」」
ギルド長とルニエさんの二人が同時に叫んだ。
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