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「ここがカセル山……」
カセル山は街を出てから三十分ほど歩いた場所にある。
魔物が出ると言うが、木々が生えているなんてことの無い山だ。
「さっさと拾っちゃおう」
私は受付の女性に渡されたフラム草の特徴や絵が書かれたメモを見ながら、そこら辺に生えている草をぶちぶちと抜いていく。
フラム草は薬草だ。
効果はそれ程強いわけでは無いがどこにでも生えているので入手しやすく、さらに病気などにも効くので重宝されている。
偶に判別がつきにくいものもあるが、ギルドに持っていったら鑑定していくのでどんどんとアイテムポーチに入れていく。
アイテムポーチは魔法がかかっていて見た目よりも多くの物が収納できる。
「ふぅ、これくらいあれば十分かな」
しばらく集めるとフラム草でアイテムポーチが一杯になったので、私は薬草集めを終えることにした。
ちなみに、しばらくと言っても三十分ほどだ。
これで二万カロ。コスパが良すぎる。
「うーん。これならずっと薬草集めでもしようかなぁ……ん?」
カセル山を下りながら唸っていると、目の前の茂みがガサガサと揺れた。
そこから三匹のゴブリンが出てきた。
手には棍棒や錆びた剣を持っていて、私を見て下卑た笑みを浮かべている。
「やっぱり、そう上手くはいかないってことね」
魔物は滅多に出ないと聞いていたが、どうやら低い確率を引いてしまったらしい。
やはりリスクがある以上こういう事は起こるのだろう。
私はゴブリンに詰め寄られる前に魔法を放つ事にした。
手に魔力を込めると、炎の玉が生成される。
「『ファイアボール』!」
ゴブリンの方に手を向ける。
飛んでいった炎の球はしっかりと当たり、ゴブリン一匹を焼いた。
それを見た他の二匹のゴブリンは驚いて、逃げてしまった。
「ふぅ……」
逃げていったゴブリンを見て、私は安堵の息を吐いた。
初めての戦闘だったが上手くこなすことが出来たようだ。
「確か、耳を切ればいいんだっけ?」
私はゴブリンに近寄り耳を切り取った。
この耳をギルドで見せると討伐報酬が貰える。
ゴブリンだと貰えて二千カロだろうが、貰っておくに超したことは無い。
そしてゴブリンが持っていた棍棒もアイテムポーチに仕舞う。棍棒は武器になるかもしれない。
気を取り直し、街へ帰ろうとしたその時。
ガサリ、と後ろから音がした。
(また魔物?)
さっきみたいに蹴散らしてやろうと思い振り返って、そこにいた魔物に私は声を失った。
十メートルを超える体長に、ギラリと光る獰猛な瞳。漆黒の毛並みは太陽の光さえ吸い込む程に黒い。
「な、なんで……」
キングウルフ。
『千魔の王』と言われる魔物。
こんな所にいるはずの無いAランクの魔物がそこにいた。
キングウルフはジロリと私を見ると一歩ずつ近づいて来た。
私は睨まれた瞬間体が固まって動くことが出来なくなった。
心臓がバクバクと鳴っている。
キングウルフが目の前まで来てゆっくりと口を開けた。
(ああ、死んだなこれ……)
私はぎゅっと目を瞑った。
キングウルフが私に牙をつきたてるのを待つ。
しかし、幾ら待ってもその時は訪れない。
私は薄目を開けて確認する。
「え?」
目を開けると、すぐそこにいたキングウルフが消え、白い空間が広がっていた。
カセル山は街を出てから三十分ほど歩いた場所にある。
魔物が出ると言うが、木々が生えているなんてことの無い山だ。
「さっさと拾っちゃおう」
私は受付の女性に渡されたフラム草の特徴や絵が書かれたメモを見ながら、そこら辺に生えている草をぶちぶちと抜いていく。
フラム草は薬草だ。
効果はそれ程強いわけでは無いがどこにでも生えているので入手しやすく、さらに病気などにも効くので重宝されている。
偶に判別がつきにくいものもあるが、ギルドに持っていったら鑑定していくのでどんどんとアイテムポーチに入れていく。
アイテムポーチは魔法がかかっていて見た目よりも多くの物が収納できる。
「ふぅ、これくらいあれば十分かな」
しばらく集めるとフラム草でアイテムポーチが一杯になったので、私は薬草集めを終えることにした。
ちなみに、しばらくと言っても三十分ほどだ。
これで二万カロ。コスパが良すぎる。
「うーん。これならずっと薬草集めでもしようかなぁ……ん?」
カセル山を下りながら唸っていると、目の前の茂みがガサガサと揺れた。
そこから三匹のゴブリンが出てきた。
手には棍棒や錆びた剣を持っていて、私を見て下卑た笑みを浮かべている。
「やっぱり、そう上手くはいかないってことね」
魔物は滅多に出ないと聞いていたが、どうやら低い確率を引いてしまったらしい。
やはりリスクがある以上こういう事は起こるのだろう。
私はゴブリンに詰め寄られる前に魔法を放つ事にした。
手に魔力を込めると、炎の玉が生成される。
「『ファイアボール』!」
ゴブリンの方に手を向ける。
飛んでいった炎の球はしっかりと当たり、ゴブリン一匹を焼いた。
それを見た他の二匹のゴブリンは驚いて、逃げてしまった。
「ふぅ……」
逃げていったゴブリンを見て、私は安堵の息を吐いた。
初めての戦闘だったが上手くこなすことが出来たようだ。
「確か、耳を切ればいいんだっけ?」
私はゴブリンに近寄り耳を切り取った。
この耳をギルドで見せると討伐報酬が貰える。
ゴブリンだと貰えて二千カロだろうが、貰っておくに超したことは無い。
そしてゴブリンが持っていた棍棒もアイテムポーチに仕舞う。棍棒は武器になるかもしれない。
気を取り直し、街へ帰ろうとしたその時。
ガサリ、と後ろから音がした。
(また魔物?)
さっきみたいに蹴散らしてやろうと思い振り返って、そこにいた魔物に私は声を失った。
十メートルを超える体長に、ギラリと光る獰猛な瞳。漆黒の毛並みは太陽の光さえ吸い込む程に黒い。
「な、なんで……」
キングウルフ。
『千魔の王』と言われる魔物。
こんな所にいるはずの無いAランクの魔物がそこにいた。
キングウルフはジロリと私を見ると一歩ずつ近づいて来た。
私は睨まれた瞬間体が固まって動くことが出来なくなった。
心臓がバクバクと鳴っている。
キングウルフが目の前まで来てゆっくりと口を開けた。
(ああ、死んだなこれ……)
私はぎゅっと目を瞑った。
キングウルフが私に牙をつきたてるのを待つ。
しかし、幾ら待ってもその時は訪れない。
私は薄目を開けて確認する。
「え?」
目を開けると、すぐそこにいたキングウルフが消え、白い空間が広がっていた。
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