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18話
しおりを挟む目を覚ますと、私はベットの上で寝かされていた。
少し顔を上げると、母と父が心配そうに私の顔をのぞき込んでいた。
「アメリア! 目を覚したのね!」
「大丈夫かアメリア!? 酷い暴力を振るわれたんだ。何か他に体に異常を感じることは無いか!?」
父と母は私を案じているようだ。
母が私を抱きしめる。
「本当に酷い…………婚約破棄を突きつけた上に暴力を振るうだなんて」
「ああ。サイモンとマークは絶対に許さない。どんな手を使ったとしても地獄に叩き落してやる」
父は怒りを煮えたぎらせ、固く拳を握っていた。
「私は、もう大丈夫です」
「本当に良かった……あなたは一日中眠っていたのよ」
どうやら私は一日中眠っていたらしい。
「サイモン王子はどうなりましたか?」
私はサイモンの処遇が気になり、父に尋ねる。
恐らく厳しい処罰が下っているはずだ。
父は経緯を説明してくれた。
私が気絶した後、その日の内に国王がサイモンとマークを罰したらしい。
「サイモンは王族ではなくなり、十八年間の懲役が課せられることになった。あいつは気を失ったお前に何度も暴力を振るったから、懲役が明けても地獄を見せてやるつもりだが」
私はさっきから痛む顔はそういうことだったのか、と納得した。
「それから他の者も処罰された。マークは平民降格。エリックは公爵家を追放された。そしてあの場にいた貴族は全員平民に落とされた。国王からは好きにしていいと言われたので、これから私達で追加の天罰を下すつもりだが、誰をどうして欲しいかなど、希望はないか?」
復讐に燃えている父に、私は首を振る。
「いえ、特に希望はありません。おまかせします。それにしても、なぜマークは平民降格で済んだのですか?」
公爵家に下級貴族が手をあげようとして平民降格で済むはずがないのだが。
父は悲しそうに目を伏せた。
「…………騎士団長が全ての罪を被ったのだ。アメリアに手を上げるように自分が指示したのだ、と言ってな」
「……そうですか」
どんなに馬鹿だったとしても、騎士団長は我が子を生かしたかったらしい。
父は「惜しい人物を亡くした」と呟いたあと、真剣な表情になり話し始めた。
「アメリア、大事な話がある。サイモンが王子で無くなった今、お前また婚約の話が来た。──アレク王子との婚約だ」
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