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3話

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 そうしてカイルはモーガン家から追い出された。
 借金千二百枚を背負って。
 彼がグラント家に帰ってどういう扱いを受けるのかは知らない。

 一ヶ月が経った現在、私が執務室で仕事をしていると、使用人が入って来た。

「アンヌ様、玄関にお客様です」

「ん?」

 メイドが私に耳打ちをした。
 私はメイドが言ったその名前を聞いて、笑みを作った。

「あら、あっちから来てくれたのね。カイル様」

 私は喜んでいた。
 私は機嫌よく、少し急ぎ足で玄関先へと向かう。
 玄関にちかづくにつれ、泣き叫ぶ男性の声が聞こえてきた。

「アンヌ! 許してくれ! もうあんな事はしないと誓う! 心を入れ替える! だから!」

 カイルは玄関先で膝をついて泣き叫んでいた。
 私はそんなカイルに優しい笑みを浮かべ声をかける。

「まぁ、カイル様」

「あ、アンヌ……」

「あらあら、そんな顔になって、どうされたんですか?」

 私はカイルに近寄るとハンカチで涙を拭ってあげた。
 カイルまた涙を目から溢れさせた。

「アンヌっ! 僕がバカだった! 許してくれ! もうこんな事はしないから!」

 カイルは今までの事を悔いるように頭を下げて謝る。
 私はカイルの頭を撫でてあげた。

「ええ、私もカイル様には戻って来て欲しいと思っていたのです」

 カイルは顔を上げた。
 そして、感極まったような表情になる。

「ああ、ありがとう──」

「だって、慰謝料の請求がまだでしたもの」

「え?」

 呆けた表情のカイル。

「あら、カイル様。演技はもう終わりですか?」

 私はカイルを見てくすくすと笑う。

「あなた達の企みに気づいていないとでも?」

 カイルが来たのは恐らくグラント家の命令だろう。
 人情に訴えて借金を無くそうとしたのだろうが、甘すぎる。

「無駄ですよ。モーガン家はグラント家を徹底的に追い詰めます」

 私は書類の束をカイルに渡した。
 そしてそこに書かれていることを親切に読み上げて上げる。

「浮気による離婚の慰謝料金貨、追加で八百枚です。ふふ、これでキリ良く借金二千枚ですね。頑張って下さい」

 私はカイルの頭をポンポンと撫でた。
 カイルが激高して立ち上がる。

「お前っ──!」

 しかし、使用人たちによってすぐに取り押さえられた。
 私はカイルを冷たい笑みで見下ろす。

「全て甘いんですよ。──では、今度こそさようなら。元旦那様?」


fin
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みんなの感想(2件)

セリ
2021.06.19 セリ
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エステル
2021.06.19 エステル
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