さようなら、元旦那様。早く家から出ていってくださいな?

水垣するめ

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2話

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「え?」

 カイルが呆けた表情になった。

「気づいていないと思っていましたか?」

 私は手を叩く。
 するとドアを開けて二人の人物が入って来た。
 カイルはその入って来た人物に驚愕する。
 一人はよく見慣れた私の家の使用人。
 そしてもう一人はカイルの浮気相手だった。

「なっ……!」

「カイル様助けて! 私、急にこんなところに連れてこられたんです!」

 浮気相手の女がカイルに向かって泣き叫ぶ。

「私、怖いです! 助けてカイル様! 君のことは僕が守るって言ってくれましたよね!」

「だ、誰のことだか──」

「言い逃れは無駄ですよ。証言も多数とっていますので。宿屋の店主に酒場の従業員、果ては町人まで……。沢山見られていますね?」

「バカな……! 変装していたのに……!」

 カイルはバレることのないはずの浮気相手がバレていることに歯ぎしりをする。
 実際、カイルは上手く浮気の証拠を隠していた。
 なら、何故バレたのか。

 実は、彼女は私が雇ったスパイだった。
 カイルが私の家のお金を使い潰そうとしているという計画を知った私が雇った、色仕掛けのスパイなのだ。
 いくら証拠を隠そうが無駄というわけだ。

「ご存じの通り、浮気による不義理の離婚ならば、過去に遡って財産は共有では無くなるので。後は分かりますよね?」

 つまり、カイルが使った家のお金は全てカイルの借金となった。
 金貨千二百枚。
 貴族でさえも返済するのには十年はかかる。

 カイルが机を怒りに任せて叩きつけた。

「いつから気づいていた!」

「さぁ、いつからでしょう?」

 私は頬に手を当てて首を傾げる。

「ああ、カイル様は離婚したいのですよね? いいですよ、離婚しましょう」

「っ! ま、待っ──」

「愛が尽きた、ですか。確かにそのようですね、浮気相手を作っているなんて」

 私は離婚状に署名をした。
 今この瞬間、離婚が完了した。
 カイルは膝から崩れ落ちる。
 私はそんなカイルにニッコリと笑いかける。

「借金については後ほど正式な書類を送りいたしますね。返済、頑張ってください」

 そして私は跪くカイルを冷たい表情で見下した。

「──では、さようなら元旦那様。早く家から出ていって下さいな?」
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